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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
110/631

第110話 軍事演習(2)

タイトルのわりに、戦闘シーンがないので、次のお話も、投稿します。



 「見たかっ!われらのちからを!」


 今度は、赤い髪の学院生が、甲高かんだかい声で、きゃんきゃん、吠えだした。ちょっと、うるさい。

 いつも思うが、性格の悪い奴の声って、なんでこんなに、耳(ざわ)りが悪いのだろう。


 「あの数百の戦士は、お前ひとりを始末するために、わざわざ集めたんだ。ありがたく思え!」

 そう言うと、げらげら笑いだした。

 

 「お前が、いい気になっていられるのも、あと二日だ」

 「そうだ、そうだっ!」

 「二日後には、踏みつぶしてやる!」

 赤髪の後ろに群がっていた学院生も、いい調子で、わめきはじめた。


 みんな、盛り上がってるなあ…

 すこし、ヒステリー気味だが、大丈夫なのだろうか。


 「お前は…」

 オレは、赤髪を、きっとにらみつけた。


 ………


 オレに睨まれて、赤髪も、まわりの雑魚も静まり返った。

 基本的に、ヘタレなのだろう。


 ………


 「誰だっけ…?」

 たしかに、見覚えはあった。 


 「き、ききき、きさまぁーーーーっ!」

 赤髪が、顔まで真っ赤になった。

 ちょっと、ニホンザルぽく見える。きーきー言ってるし…。

 ああ…、なんか懐かしいかもしれない。

 

 「ま、まさか、このぼくを、忘れたとでもいうのかっ!」

 いっそう、興奮しだした。


 『忘れた』とも言えない。

 なるべく真面目なふりをして、黙ってることにした。


 「ク、クロードだ。きさまは、ぼくと決闘するんだろうがっ!」


 「なんてやつだ!」

 「二日も待つ必要はない!」

 「こんなやつ、今すぐ殺してしまえ!」

 また、いちだんと騒がしくなった。

 コレって、オレのせいだろうか…


 その時だった。


 「静粛にっ!」

 「陛下のご入場である!」

 ローラン騎士団長の声が、演習場全体に響き渡った。

 「音魔法」の「魔道具」を使っているだろう。


 いつもの優しい声ではなく、騎士団長にふさわしい威厳に満ちた声だった。スターチ侯爵一派も、たちまち、黙り込んだ。




 観客席のひとびとは、いっせいに、立ち上がった。

 賢帝一家を迎えるためだろう。

 忠誠の証なのか、ぜんいん、胸に手を当てている。

 国旗掲揚のときのアメリカ人みたいだと思った。

 

 オレたちは、そそくさと、『ロイヤルファミリー用テント』に潜りこんだ。こういうときは、目立たないに限るのだ。


 賢帝たちの姿が見え始めると、

 「おおおおーーーーーーーっ」

 演習場内から、いっせいに、どよめきの声が上がった。


 

 お后さまも、シャルも、落ち着いた色合いではあるが、ドレスを着ていた。

 しかし、賢帝は違っていた。

 まるで、冒険者のような、ラフな出で立ちで、しかも、皮製のフル装備だった。オレは、いやな予感がした。


 演習場を埋めた観客たちは、大歓声を上げていた。


 「今年の陛下は、一味ちがうぞ!」

 「ああ、なんかやってくれそうなかんじだぜ」

 「シャルル皇帝、バンザーイ!」

 「陛下ってば、かっこいい…」

 「いい年して、あいかわらずやんちゃだねえ…」


 統一感ゼロの、歓声だった。



 賢帝は、テント前に到着すると、軽く手で合図をした。

 すると、観客は、いっせいに、座り始めた。

 

 いよいよ賢帝の挨拶がはじまる。


 そう思って、テントの中で、ひっそりとしていると、近衛兵が呼びにきた。

 無言だが、ついて来いということだろう。

 みなで、テントから出ると、お后さまの隣に案内された。


 「シャルを見ていてあげてね…」

 顔は、正面を向けたまま、お后さまが、小声でオレにささやいた。


 見ると、シャルが、マイクとおぼしき杖を片手に、とことこと、前に出た。なにやら、腕まくりまでして、気合がはいっている。


 すっくと立ったシャルは、大きく息を吸い込んだ。


 そして、


 「みんなぁーーーーー、元気じゃったかぁーーーーー!」

 ちからいっぱい叫んだ。


 おおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!

 

 広大な演習場が、どよめいた。

 誰もが、拳をふりあげて、叫んでいる。

 どこのコンサート会場だろうか。


 「魔法は、やっとるかぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!」

 ふたたび、シャルが、シャウトした。


 おおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!


 さらに、力強く、広大な演習場が、どよめく。

 観客たちは、テンションマックスだ。

 暴動でも起きるんじゃないだろうか…

 

 「それじゃあ…」

 「今年も、始めるぞぉぉぉぉぉぉーーーー!」

 

 おおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!


 ……………


 単なる『開会のあいさつ』だった。

 

 「シャルはね、三歳のときから、これをやってるのよ」

 楽しそうに、お后様が、ささやいた。


 なるほど、魔物から救ったときも、シャルは、みんなの人気者だったが、その秘密がここにあったのか。

 シャルは、正真正銘のアイドル姫さまだった。





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