第11話 その頃、王城の一室で…
読むのも楽しいけど、たとえ、へたくそでも、自分で書くのは、楽しいです。
「例の件は、すべて手はずどおりじゃろうな」
「…はい。これで、第八王女は、護衛の騎士はおろか。馬車の一台も用意することはできなくなっております」
「そうか…」
老人は、満足そうな笑みを浮かべた。
「…で、冒険者ギルドの方はどうなった?」
「はい、やや無理をいたしましたが、ギルドマスターからも、護衛依頼を受けないとの承諾をとりましたが、ほんとうによろしいのですか?」
報告をしていた中年の役人のまなざしには、老人をとがめるような色が浮かんだ。
それが可能なだけの地位と実績が、彼にはあるらしい。
「ふん、かまわぬ。ようやく、こちらも孫娘の力で『勇者』を得たのだ。冒険者ごときに、大きな顔をさせるつもりはない」
「…いえ、わたくしが申し上げたいのは」
今回の第八皇女の処分は、あきらかに『やりすぎ』ている。とうぜん前例すらない。
そもそも、勇者召還に失敗したからと言って、それを罪に問うようなまねをすれば、優れた魔道士たちほど召還を忌避するようになるだろう。
その上さらに、権力にものをいわせて、第八皇女を追い詰めるようなまねをすれば、民ばかりか。貴族にさえ反感を買うのは目に見えている。
「ふん…。お前の言いたことくらいはわかっておる」
しかし…と、老人は、得意げに言った。
「ここで手を緩めずに、とどめを刺しておくことこそ肝要。あの小生意気な先代の勇者も帰還することだしな」
役人は思った。
その勇者に、都合よく二度までも頼ってきたのは、どこの国の宰相だったのか。
気に食わぬ相手であろうと、恩を忘れることは、矜持にかかわることであろうに。
もとより彼は、今のこの老人に、諫言に耳を傾けるだけの器量を期待してはいなかった。
それでも役人は、宰相が言った『とどめ』ということばの意味を察して、つくづく『愚かなことをするものだ』と思った。
この老人は、権力の絶頂にあって忘れてしまったらしい。
この世界には、『神』という絶対無比な存在がいることを。
そして、第八皇女が、まごうことなき『聖女』であることを。