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お嫁さん&魔物さんといっしょに、ムテキな異世界生活  作者: 法蓮奏
帝国魔法学院(スフレ帝国)編
106/631

第106話 こいつが犯人

すこし長くなりました。



 オレは、帝城に来ていた。


 帝城とはいっても、城の外だ。軍事演習場とよばれる場所。いわば、広大なグランドである。


 騎士団長からの『二つ目の依頼』を果たすためだった。

 

 「なんだか、毎日すまないね」

 騎士団長が、申し訳なさそうに、声をかけてきた。

 

 「いえ、お気になさらず…」

 この人に気を遣われては、こう答えるしかなくなる。

 昨日の、帝都の巡回にしても、彼は、一兵卒いっぺいそつのように、働いていた。トップでありながら、まっさきに働くような人に、文句など言えたものではない。



 「あいかわらず、ローランは、人を使うのがうまいわね」

 黒いローブを来た赤髪の美人が、あきれたように言った。


 騎士団長さんは、『ローランさん』というらしい。侯爵家の次期当主だそうだ。よくわからないが、とても、偉いのだろう。


 この燃えるような真っ赤な髪をなびかせている人は、『テレーズさん』といって、『宮廷の魔導士長』を務める美人さんだ。



 ローランさんも、テレーズさんも、なかなか若い。ケンイチさんくらいじゃないだろうか。シャルパパは、賢帝などと呼ばれているが、この若いリーダーを見ていると、なんとなく納得できる気がする。


 ベテランを上に立たせるのが、一番楽なはずだ。


 それをせずに、若いリーダーに責任を持たせるやり方は、賢帝にふさわしいのかもしれない。



 「この少年が、陛下のおっしゃっていた魔道士なの?」


 テレーズさんは、オレに、値踏みするような目を向けてきた。

 しかし、オレは、不愉快ではなかった。

 美少女と美人には、とことん寛容であるのが、オレの一貫した哲学なのだ。


 「たしかに、魔力は、わたしと変わらないくらいあるようだけど…」

 そういって、テレーズさんが、美しく首をかしげていると、


 「なにを言ってる…」

 「そいつ、魔力隠蔽かけてる」

 そんな声が聞こえてきた。


 見ると、少女としか見えないような小柄な女性だった。

 銀髪クール系の美少女だ。

  

 「それも、多重…」

 なにやら、きっぱりと言われてしまった。


 「そういう魔法があるのは、わかるけど…」

 「そもそも、魔力を隠蔽する意味なんて、あるのかしら…」

 今度は、すらりと背の高い女性だった。みどりの髪をショートカットにした、これまた、とんでもない美人だった。


 もしかして、宮廷魔導士って、ぜんいん美人なのだろうか。オレは、もしかして桃源郷に来てしまったのかもれしれない。



 「あの、すさまじい魔力の波動を忘れたの?」

 「こいつが、アレの犯人」

 この波長は、まちがいない。

 そういって、クール美少女に、にらまれてしまった。


 それに、


 「炎の柱も、土の柱も、こいつの仕業」

 なかなか鋭いクール娘だった。

 

 「あの時、怖くて、ちょっと漏らした…」

 「あの恨みは、ぜったいに忘れない」


 さっきから、怒ってるのは、漏らした恨みだったのか…

 それって、オレのせいなんだろうか…?

 まあ、オレのせいか…

 替わりのパ〇ツでも、さりげなく渡せばいいのだろうか。


 「ううううっ!」

 「……いま、こいつから邪悪なが!」

 ホントに鋭いな… 

 


 「やれやれ、相変わらず、礼儀を知らない子だね…」

 騎士団長のローランさんの、緊張感のない声が聞こえてきた。


 きょう、ジュンくんに来てもらったのは、

 「彼女たちと模擬戦をしてもらうためだったんだよ」

 君の話をしても、なかなか信じてくれないものだからね。


 「どうだろう、少し相手をしてやってくれないかい?」

 イケメンスマイルで、そんなことを言う。

 


 いっぽうでは、魔導士長のテレーズさんが、銀髪クールに念を押していた。

 この少年が、あの大魔力の犯人だって言ったけど…

 「ララ…、ほんとうに、間違いないのね」


 「間違いないっ!」

 「あんな目に遭ったのに、わからないほうがおかしい!」

 なんか、もう敵意むきだしなんだけど…

 そんなに大事なパ〇ツだったのだろうか。


 「ううううっ!」

 「また、邪悪ながっ!ララのみさおがピンチっ!」


 「ちょっと、信じられないけど…」

 「ララがそこまで言うなら、間違いないわね…」

 今度は、碧のショートカット美女にも、にらまれてしまった。

 何が、間違いないっていうんだろう…


 

 「そうね、じゃあ、やりましょう」

 わたしからでいいかしら…

 テレーズさんが、そう言って、杖を構えた。


 「ぜったいだめ!」

 銀髪ララが、とつぜん叫んだ。


 「ひとりなんてダメ。テレーズの(みさお)の危機!」

 「十人ぜんいんで戦うべき!」

 ララが、そう言い張ると、


 「わたしもそう思う」

 ショートカット美人も、賛同した。

 「あの魔力なのよ。十人でもヤバいわ」


 「うーん、そうはいってもね」

 テレーズさんも困っているようだ。

 『宮廷魔導士』が、少年相手に『10対1』というのも外聞が悪いのだろう。


 ………


 オレは、もう一度、魔導士たちを見回した。

 やはり、粒ぞろいの美女だった。


 …ふむ、しかたがない、


 「いいですよ…」

 「十人いっぺんでやりましょう」

 正直、ひとりひとりは、面倒だ。


 「いいのね」

 テレーズさんがオレに確認をとった。


 が、その時間も待ちきれないように、


 「結界っ!」


 銀髪クールっこが、無詠唱で結界を張った。

 見ると、例のウェディング風ウロボロスを持っている。シャルと同じ杖だ。


 「効果範囲設定、可視化、青」


 オレの周りを囲んでいる魔導士と、オレの間の空間が、ドーナツ状に青く染まった。


 「空間魔法」

 「結界、強制解除」


 ぱりーんっ!


 何枚ものガラスが割れるような音が響いた。


 「うそっ!もう破られたっ!」

 「…お、襲われる!」


 いいかげん、その発想やめてほしい…

 でも、一度くらい破られても、あきらめないようだ。


 「結界っ!」

 再び、張りなおした。


 今度は、すぐには、解除しなかった。

 このクールっ子には、結界を張らせておいたほうが、うるさくなくていい。


 それに、この程度の結界では、オレの魔法は、防げないのだ。


 すると、今度は、三人の魔導士から、炎系の魔法が発動された。炎の渦が、オレに襲い掛かってくる。それも、三方からだ。

 オレを、ムラなくこんがり焼くつもりらしい。


 ひとりは、テレーズさんだった。

 やはり、赤い髪の人は、炎系のようだ。

 ふふふ…、ベッドでも燃えるタイプなのかな…

 ちょっと、口先だけで言ってみた。もちろん、声には出さない。


 「あああっ!今度は、テレーズに魔の手がっ!」


 なんだろう、こいつ、ほんとに鋭い…


 オレの目は、すでに蒼く光っていた。


 「対抗魔法」


 炎は、いっしゅんで消えた。


 「「「消された!?」」」

 宮廷魔導士が、唖然あぜんとしている。

 ドラゴンの炎ブレスのような、物理効果付与の心配はないようだ。


 しかし、炎が消えたときには、オレの頭上に、氷の槍が、九本ほど、結晶し始めていた。

 やはり、三人同時に、三方から、オレをクシ刺しにしたいらしい。


 また、「対抗魔法」で消去してもいいのだが……それよりは、

 

 「効果範囲、設定」


 時間がないので、可視化せずに、オレの頭上の空間を指定した。


 「火魔法、火球」

 「魔力調整、フェザータッチ」


 頭上の効果範囲に、炎があふれる。

 氷の槍は、いっしゅんで溶けた。


 しかし、炎は、それでは収まらない。

 効果範囲を超えて、飛び散っていく。


 効果範囲は、魔法の発動範囲であって、結界ではない。

 炎などは、どうしても、あふれてしまうのだ。


 もちろん、オレは、自分の結界で守られている。


 ぱりーんっ!


 クール美少女の結界が、再び破壊された。

 あの程度の結界では、オレの炎は、防げない。


 ただし、魔力を調整した炎は、そこで、消滅した。

 うまくいったようだ。

 美少女&美女に、マジで、火傷を負わせるわけにはいかないからな。

 

 すかさず、残った三人が、魔法を発動していた。


 それなりに大きな竜巻が発生し、オレを囲んだ。

 同時に発動すれば、干渉しあうようなものだろうに、 

 うまく、重ね合わせて攻撃力を増しているようだ。


 竜巻が、どんどん狭まって、オレに迫ってくる。

 オレを、スライスハムにしたいようだ。


 「土魔法、障壁」


 ドーナツ状の青い効果範囲が、そのまま、土で埋まっていく。


 「押し込まれるっ!」

 「魔力を込めてっ!」

 美女たちが、叫んだ。


 ぎんぎんぎんっ!


 竜巻は、一瞬膨ふくれ上がり、この土の壁を蹴散らすかに見えた。


 …が、たちまち、土壁の中に押し込められてしまった。


 「「「「「「「!」」」」」」」」

 

 「どうなってるのっ!」

 「かたっぱしから、破られていくわ!」

 「まだっ!まだよ!」

 「次、いくわよ!」


 まだ、頑張るらしい。

 ちょっと、面倒くさい。

 いちいち、邪悪だの襲われるだのと、言われるし…


 「効果範囲、拡張」


 青いドーナツ空間が、にゅっと広がった。

 瞬く間に、魔導士たちは、その空間に包まれた。


 「水魔法、水球」

 「魔力調整、フェザータッチ」


 効果範囲に、ドドっと、大量の水が渦巻く。

 すぐに、流れてしまうから、窒息はしないだろう。

 ただ、水というのは、重いのだ。

 立ってはいられないだろう。

 

 ドドドドドドドドっ……


 まもなく、水が、引いたころには、魔導士十人が、びしょびしょになって、地面にいつくばっていた。


 ざんねんなことに、全員、黒の厚いローブをきている。


 恒例の透過イベントは、発生しなかった。





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