第102話 ドラゴンの回想
ドラゴンの回想です。
OSの入れ替えと、それにともなうマシンの入れ替え・整理も、終わりました。
せっかくなので、いまは、HDのファイルを整理しています。
面倒ですが、いらないものを削除するだけでも、なんかすっきりして楽しいです。
【ドラゴンの回想シーンになります】
「ダンジョン・マスター…ですか…!」
わたくしは、驚いて聞き返しました。
ああ…、だが…
「『仮の』のマスターでいいんだ」
『真のダンジョン・マスター』が見つかるまでの間、
「連中の面倒をみてやってくれねえか」
『連中』とは、魔物さんたちのことです。彼らは、この『開発主任』さん率いる研究チームによって、生み出されました。
もちろん、この世界に生息する魔物を、モデルとしたそうです。しかし、似ているのは見かけだけで、スペック的には全くの別物だと自慢されておりました。
勇者ケンイチが、このダンジョンを見つけたときに、『魔物の発生源』かと期待したそうです。でも、それは、間違いです。
我々は、外に出られないように、隔離されていたのです。
もし、我々が、外に出てしまえば、ニンゲンも含めたすべての生き物の上に君臨することは、明らかだったからです。
研究チームの『漢の浪漫』の前には、自然界のバランスなど、ちり芥に等しかったのです。
だからこそ、わたくしは、不安でなりませんでした。
「『真のダンジョン・マスター』にふさわしい人物など、ほんとうに、いるのでしょうか?」
研究主任さんは、しばらく、考えていました。
………
そして、こう言いました。
「……いねえだろうなぁ」
「そんなぁー!」
わたくし、ちょっと、キレそうになりました。
すると、主任さんは、
………
「…しょうがねえだろう」
…開き直りました。
要するに、
「おめえたちを、ちっと、強くしすぎたからな…」
ドヤ顔で、そんなことを言っています。
『漢の浪漫』、計画性なさすぎです。
超一流の科学者ゆえの、悪癖とでも、いうのでしょうか…
「まあ、そんときゃ、そんときだ…」
おめえが、永久に『仮のマスター』やればいい…
勝手なことを、ほざきはじめました。
わたくしは、不安で不安で、たまりませんでした。
『仮』とはいえ、わたくしに、マスターなど務まるのかどうか。
『真のマスター』が、現れなかったら、どうすればいいのか。
ただ思いあがっただけで、実力のない冒険者が来たときは、皆殺しにするしかないのか。
だとすると、いったい、どれだけの冒険者を、殺すことになってしまうのか。
あるいは、本当に、強い冒険者が、現れたとして、その方が横暴な性格だったら、どうすればいいのか。
次々に、不安要素が浮かびあがってきます。
わたくしは、目からオイルが、あふれそうになりました。
………
主任さんは、そんなわたくしを、醒めた目で、じっと見ていました。
そして、
「裏ドラ公、出てこい…」
たしか、そんなことを、言ったような……
………
………
ここで、わたくしは、機動停止しました。
………
ふたたび、起動したとき、わたくしから、不安は、消えていました。
さきほどまでの、不安は、メモリーに残されています。
でも、なんで、あんなに不安に思ったのか、それが不思議でなりませんでした。
「これでいいだろう…」
主任さんが、なにやら、つぶやいていました。
「では、確認しておくぞ」
主任さんは、そう言って、『真のダンジョン・マスター』の条件について、話し始めました。
それは、まず、
①『わたくし』を圧倒するほど、強いこと。
②『魔物さん』たちを、大事にしてくれること。
…でした。
ここで、わたくしは、疑問を投げかけました。
「『大事にする』とは、具体的に、どのようにすることを意味しているのですか?」
たとえば、『猫可愛がり』することなどは、むしろ、『大事にする』ことと対極にあります。厳しく、しつけてでも、自立を促さないと、あとあと本人が困るのです。
無責任な甘やかしは、相手のことを、実際には『大事にして』いないことと同じです。
かといって、ただただ『厳しくしつけようとする』ようでは、単なる『手抜き』です。『厳しく管理する』ことほど、楽なことはないからです。
『大事にする』ということは、それほど簡単なことではないのです。
…………
「そうだな…」
それが三番目の条件になるのさ。
つまり、
③『魔物たちと、話をしたいと願うこと』だ。
「もし、『家畜』がしゃべったら、もう『家畜』ではなくなる」
話しができる相手を、殺して食ったりは、できねえだろう。
だから、
『話をしたい』と願うのは、もう、相手を対等にみている証拠なのさ。
なるほど、それは、明確な条件です。
「わかりました」
わたくしも、納得できました。
そして、最後の条件だが、
それは、
④『ダンジョンマスターになるのを、断ること』だ。
「はいいいいーーー?」
わたくしは、開いた口がふさがりませんでした。
この人ってば、ドヤ顔で、何言っちゃってんだろう。