第101話 今後の問題
すこし短いです。
次回、ドラゴンの回想に入るので、はんぱにならないように切りました。
お話の最初だが、さっそく、時間はさかのぼる。
騎士団長さんから『帝都巡回要員の派遣』を依頼された夜、オレは、メカドラゴンのもとを訪れていた。
オレの脳内では、ケルベロスさんが『内定』していた。しかし、いちおう、ドラゴンにも相談したほうが確実だ。それに、ほかにも、確かめておきたいことがあった。
メカドラゴンは、第三城壁を出で、すぐのあたりで寝ていた。昼間は、けっこう暑いが、夜は夜で、それなりに冷える。
「こんなところで寝て、冷えないか?」
メカでも、冷えるときは冷えるかもしれない。念のため聞いてみた。
「ええ、たしかに冷えますね」
やはり、冷えるようだ。なにごとも、聞くだけ聞いてみるものだと思った。
…………
「でも…」
ドラゴンは、やや短めの両腕で、自分の体を抱きしめて、頭をふるふる振りながら、つぶやいた。
「ほてったこの体を冷ますには、ちょうどよいのです」
…………
なるほど、炎天下で、巨大な翼を広げて、だらだらと昼寝をしていれば、そうなるかもしれない。
オレは、なっとくした。
ところで、
「ジュンさまは、こんなお話をするために、わざわざ来られたのですか?」
ドラゴンが首をかしげていている。
ああ、そうだった。
つい、忘れるところだった。
「たしかに、ケルベロスさんが適任ですね」
ドラゴンも、賛成してくれた。いまは、腕組みして胡坐をかいている。体全体との比率を考えると、腕も脚もすこし短すぎる気もするが、ドラゴン体形とは、そういうものなのだろう。
「まるで、『警察犬』のようで、ぴったりじゃないですか」
考えていることは、同じだった。
『派遣要員』は、ケルベロスさんと決まった。
しかし、問題がある。
もちろん、ケルベロスさんに限った問題ではない。誰を選んでも、また、これからもずっとつきまとう問題だった。
それは、『コミュニケーションの問題』だ。
ケルベロスさんを、何十匹も派遣することになる。
しかし、通訳ができるのは、ライムだけだ。
いかに、帝都の騎士や兵士といえど、言葉の通じないSランクの魔物といっしょに仕事をするのは、無理があろう。
オレは、ドラゴンに尋ねてみた。
なんで、お前だけ、
「ニンゲンの言葉が話せるんだ…?」
………
いま、思い出しても、その時のドラゴンの反応は、アブノーマルだった。もちろん、変態という意味ではない。
………
「どどどどどど…どおして、そ、そのようなことを、お尋ねににゃるので?」
一部、ライム化している?
自慢のAIが故障したのだろうか。
「…大丈夫か?」
つい尋ねた。
「わわわわわわ…、わたくしは、も、もちろん…、だ、大丈夫です!」
大丈夫ではないようだ。メカだから、故障だろうか。
「わたくしには、『超高性能Ai』が搭載されております」
ですから、想定される言語は、すべて、インプットされております。もちろん、学習機能付きです。
胸を張って、説明していた。
…故障から回復したらしい。
「そそそ…、そんなことより、ど、どうして、このようなことを、お尋ねになったのです!」
また、故障だろうか。
しかし、ドラゴンは、『動機』を、オレに尋ねているのだろう。
オレは、答えた。
魔物さんたちも、お前のように、
「オレたちと会話できるようにならないかな…と思ってな」
話ができたほうが、お互い都合がいいだろう。
『第三城壁建設のお手伝い』の次は、『帝都の巡回のお手伝い』を頼まれた。これからも、いろいろと、ニンゲンとのかかわりは、増えてゆくに違いないしな…
「おおおおおおおおおおおおお……やっと、やっと、…こ、この日が!」
ドラゴンが、号泣しはじめた。
オイル漏れだろうか。