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最後の書類に目を通す。空いた左手でグラスを持ち、少なくなった中身を飲み干すと、再びグラスにワインを注ぐために瓶を傾ける。しかしそこから注がれた量はグラスの半分にも満たない量だった。どうやらもうほとんど飲んでいたらしい。
気付けば部屋に入ってくる陽の光も穏やかだ。腹もいい感じに空いてきている。まあこの書類が最後だからと諦めようとしていた時、男がそれに気付いたのか口を開いた。
「新しいのをお持ちしますよ」
「ああ、ありがとう」
トレイに瓶を乗せると、男はそれを持ちそのまま部屋から出て行く。
——あいつらは何を買ったかな
そんなことを考えながら淡々と書類に目を通していく。
——いつも通りならシチューとパンだから食材はあの店だけで揃うが、何か捻りを加えているに違いない。肉を買ってきているのなら諸々の野菜と一緒にスープを作ってもいいな。できれば鶏肉がいい。だがアラーシュはあまり無駄遣いしないからな。無難に豚の塩漬け肉になるか
この後の三人での夕食のことを考えるだけで心が躍る。
別にこの集まりは低頻度なものではない。むしろシェルフィールドに帰って来てから一年、毎週のように三人で集まっては夕食を共にした。しかしジランにとっては、何回三人で集まろうとその一回一回が特別で、その度に心の中はウッキウキのパーティータイムなのだ。
胸が高鳴るのを抑えつつ資料を最後まで確認し終えたジランは、サインをしようと羽ペンを手に取ったその時だった。
ドォォォォォン!!!
「っ⁉」
突如、頭の芯に直接届く様な巨大な爆発音と共に屋敷がガタガタと揺れ、その衝撃で壁に飾られていた絵画は傾き棚の上の花瓶は落下した。中身と破片が床に散らばる。その後二回再度爆発音が鳴り、やがて悲鳴と木が軋む音が聞こえ始めた。
——何だ今のは⁉
羽ペンを机に置き立ち上がると、扉へと向かいドアノブに手を掛けた。不安と共に胸の鼓動が速くなる。手にじんわりと汗が滲むのを感じながら、ゆっくりと明けた扉の先に見えた光景、それは火の海だった。




