ワルフの絶望感!
「ワルフ…… お前マジか…… 」
ファッションに目覚めたワルフはドワーフの種族的に器用な指でチクチクと自分の服を縫い上げた。
スキルの[スタイリング(服)]を応用したんだろう。
作った服はワルフの体形ににとてもピッタリになっている。
しかし、女性服である。
ギラギラした女性服を着たワルフと王女と一緒に宿屋で朝飯を食べる。
朝食のメニューはもちろん肉である。
「オッチャン…… ちょい派手なんちゃうか? 」
王女がここで食べていいのか?
とも思ったんだけど獣人はどうやら仲間意識が強く自由闊達。大丈夫だとさ!
王女が宿屋で朝食を摂る事に本人や周りの国民も全く抵抗がないんだろう。あー王女だー!とか言う子供に笑顔で答えている。
「…… フン…… ワシは天才じゃ…… 天才が作る服を天才が着る…… 嫉妬はダメですぞシノ…… 」
あぁ…… こじらせてるなぁ……
いつかこの夢が覚めた時にワルフがどんな顔をするか…… 楽しみでしょうがない!
「そっか…… 頑張ってな」
俺は、素っ気なくワルフを応援する言葉を吐いた。
その後は王女が「ああ、このオッチャンはこういう人なんや…… 」と小声で独り言をポツリ。
黙々と朝食を食べ終えて変な雰囲気のまま王女と2人で宿を出た。
ワルフは街を練り歩くんだそうだ。
出来れば面白そうなのでそちらに行きたいが王女が訓練をどうしてもと願うのでワルフと別れる。
マイムマイム訓練は…… ちょっと破廉恥な感じになっちゃうから人目が少ない所と考え、俺と王女は孤児院の木材を調達した森の入り口にまで来ていた。
ピコピコと尻尾を左右に振る王女にほっこりする。
地球ではどちらかと言うと猫派と犬派で言えばイヌだいすき派だったので正直可愛い。
「さぁ! シノ! マイムマイムや! 」
本当に犬みたいにぴょんぴょん走り回りながらマイムマイムマイムマイムと言われるので、なんか面白い。
王女の手を取り魔力を循環させる
「…… 王女様、昨日より明らかに魔力の制御ができていますね…… 」
「…… うんん…… ぃぃ…… ぇぇわぁシノ…… 気持ちがぇぇわぁ…… 」
はぁはぁと息を荒くして王女は頷く。
「くぅぅん…… 昨日マイムマイムをしてもろうて…… あぁぁ…… ウチ夜に練習したんやで? …… 偉いやろ? 褒めて? ♡ 」
王女が頬を染めてニッコリ笑う。
確かに練習していたんだろうかなりスムーズに魔力が伝わる……
…… じゃあ段々と体を回速さと循環させる魔力量を上げて、アヘミクレヘンのスパイクをもっと使えるようにしてあげよう!
クルクル回り魔力量を上げていく。
「あぁ! アカンて! こんなん気持ちいいだけやん! あはあははは…… くぅぅん…… 」
ビクッビクッと王女が乱れた衣服を直す事もできずに震えだす。
「あ…… ごめん…… なさい?」
こりゃヤバイな…… やり過ぎたかも……
俺は手を離してマイムマイム訓練を緊急中止する。
「待って待って!まだやん? まだまだ! 」
「いやもう足腰が立たないじゃないですかー!? 」
王女はカックンカックンと膝を笑わせて体に力が入らないようだ。
「シノ…… 責任とってや…… 」
「え? 幾らお金を払えばいいでしょう? 」
「違うわ! 」
違う…… 違うと声を小さくする王女に俺は思った……
流石に意味は分かるけど、王族と深い関係なんてまっぴらでございますよ!!
若く獣人特有のタフさで、ほんの数分で歩けるまで王女が回復したので街にもどる。
犬がスリスリするように王女が俺の腕にスリスリしてくる。
犬は親愛の証に相手の匂いを自分につけて楽しむというが…… あれ? 俺って臭い?
「ちょちょっと離れて下さい…… 街に入ると良からぬ噂をされますよ? 」
「えーっ…… ウチそんなん知らんやん…… 」
くっつこうとする王女!VS離れようとする俺!でバスケットのディフェンス、オフェンスの競り合いみたいになるが俺が押し通し、離れて歩きながら宿屋にまで帰ってきた。
「えっと…… お帰りください?」
「え〜っ!ウチ帰るんイヤやー!」
普通に入って来ようとする王女を扉から押し出して中に入る。
「シーノーくーん! あーそーぼっ! 」
あぁ王女がまた外で叫んでる……
犬は好意を持つと一直線だもんな……
しまいにグルグル回り出すんじゃねえか?あ、王女がグルグル回り出したわ。尻尾も振ってるわ。
「犬だなぁ…… 本当にキミは狼の獣人なのかい?」
苦笑しながら部屋に入ると、カーテンが締め切られて薄暗い。テンション下がるわー…… と思いながら、暗い中をよく見るとワルフが肩を震わせていた……
「ちょ…… ワルフ泣いてるの? 」
「シノ様…… 獣人が…… 子供達がワシをバケモノと追い立てるんじやぁ! 」
クルリと振り返ったワルフを見て息を飲む。
頑張って綺麗になろうと化粧もしたんだろうが余計におかしな事になっているワルフがいた。というかまず髭を剃れ。
筋肉ズングリムックリの体形にギラギラした女性服。胸元は深く開き顔は白く綺麗に化粧している筋肉ムキムキのドワーフオッさん……
これは…… マトリョーシカだ! 色塗りを失敗したマトリョーシカだ!
ついに俺は大爆笑してしまう。
シクシク泣く女装したオッさん。
大爆笑する俺。
外から「シーノーくーん 」と聞こえる大声。
カーテンの隙間から肌に射す日の光の温もりに、もうすぐ来る春を感じながら俺は転げながら笑い続けた。
次の日からワルフは元に戻った。
人の町ならきっと自分が認められると信じて……




