乙女になーれ!
ワルフの酒リバースのせいであまり夕食を食べれなかったので宿屋の食堂で肉を食べる。
ほんとに肉、肉、肉だな……
給仕さんに飲み物として、ワインか野獣国名物の芋焼酎を勧められる。
「まだ11歳です」
そう断ると、疑問顔で野獣国では10歳になると冬の寒さに耐える為に冬は酒を飲んでもいいと教わる。
「人族は違うんですか? 」
「人族は12歳からだけど…… でも郷に入っては郷に従えか…… 芋焼酎を貰えますか? 」
今日の肉は山盛りの鳥肉にハーブを擦り付け、ワイン・ハチミツ・バターを混ぜたタレをかけながらじっくりと焼いたもので、口に入れたら肉汁と甘いめのタレが広がる。
皮はしっかり焼いているのでパリパリと音をならし鳥の皮の甘さがタレの甘さと合わさりとても乙。
ケバブみたいに付け合わせのピタパンに鶏肉の皮を挟んで食べるとなおうまし!
モゴモゴと咀嚼して、芋焼酎をクッと入れる。
まだ体は子供なので酒精で頭がフワフワとなるが、どうやらこの体は酒に対してアレルギーが無いみたいなので嬉しい。
「これで人生の楽しみが一つ増えたな」
「そうです、酒を飲めないなど最悪ですから」
皿の回収にきたウェイターと一言二言と話をして、何か甘い物も頼む。
「おお、ナチュラルクリームチーズか!」
甘めのチーズをピタパンに挟み、芋焼酎と交互に…… これは参った。とてもいいわ。
ペソペソ…… ゴクリともう飯食ってるというか飲み屋でウダウダしといるようになってきた。
酒のおかげで、かなり気分が良くなりながらポケーっとスキル取得の画面を見る。
胡座をもう椅子の上で組んじゃえ。体がまだ小さいから足がプラプラと面倒くさい。
「ほー…… スキル取得する為の+と-があるな…… ちょいとポイント入れてみよ…… うん?……うん!? ちょっと!!」
驚き立ち上がりそうになり、驚いてカチャンと芋焼酎のコップを倒してしまう。
大声で叫んでしまい周りの目が集まる。
「す…… すみません…… こぼしちゃいました。もう一杯下さいませんか?」
「国王がよろしくと言っていたから良いけど…… 暴れないでくれよ?人族の少年」
「ぐぅ…… 」
国王の息がかかってる…… そうか…… 忘れていたけど、俺は人族。嫌がられる存在だった……
もう一度、芋焼酎を運んでくれたウェイターに謝り、椅子に座り直す。静かにしないとな。
俺が驚いた理由は、ステータスからスキルを取得する為のポイントをどうすれば得られるか分かったからだ。
スキル取得のポイントはレベルだった。
ポイントが増える毎に、レベルが下がったのだ。
ゲームなんかではレベルに合わせてボーナスポイントを貰えたりするが……
そうか人が生きて何かを取得するには、それに合わせた年月が必要になる。
それを苦労して上げたレベルで補完するというわけか?
[薬草の調合]
取得スキルポイント消費数 25ポイント
例えば…… この[薬草の調合]のスキルを取得するには25ポイントが必要で、25スキルポイントを得るにはレベル25の消費が必要…… 同等の等価交換なのか?
一般の人間…… 例えば人族の村人、村人がレベル25まであげるのに必要な年月や、死ぬかもしれない可能性、潜在能力が低く魔物を殺せないかもしれない事を考えたら…… [薬草の調合]と同程度の苦労…… いや、艱難なのかもしれない。
レベルは生き方や寿命の結晶だ……
寿命を削ってスキルを取得すると考えたら納得がいく…… ?俺にはチートがあるから正しい事があやふやになる。
母さんが死んだ時に母さんの肉体から光が溢れ、俺の中に入ったモノ。
あの光が宇宙人である思念体の魂でありレベルアップの正体なら……
魔法のような摩訶不思議で神変不思議なものが使えるエネルギーの源、宇宙人の魂…… それを体内で変換してスキルという物に変える。
スキルは魔法のように放出できない……
一度得た経験は消えない……
こな異世界のスキルって、もしかしたら宇宙人の魂が俺たちこの惑星に生きる生物の魂に結びついて変換される怪現象なのかもしれない。
「う…… 演繹法で纏めようと思っても纏まらない…… これは酒のせい、酒のせい。」
しかしレベルの消費か。
これは…… 簡単にはポンポン使えないな……
レベルは今1450か……
教会の水晶の壁で計測した時のレベルは1500だったから、[ステータス表示]のスキル獲得に使ったレベルは50…… キュレネがトロスの町で2回目にレベル計った時で25だったから……
「[ステータス表示]は7歳の時のキュレネの倍の労苦で得られるスキルなのか…… あの時でもキュレネはチート美少女だったから、[ステータス表示]のスキルはレア中のレアなのかも…… 」
芋焼酎をクピクピと飲みながら、取得できるスキルの一覧を見ていく。
「あぁこれは欲しいわ…… 」
*ステータス鑑定 必要レベル70
他人のステータスを見る事が出来る。
レベル消費70かぁー…… 他人のステータスを見れるって事は対人戦がある場合はかなり有利だ……
俺はステータス鑑定を取得した。
スルスルーっと体から力が抜けるのを感じる。
例えるなら風邪の時に思いっきり鼻をティッシュでかんで、鼻水が予想以上に大量に出た時のフゥーって感じ…… え? 分かりにくい?
手をグーパーして力の入りを確認していると
「お"〜ぼぇぼぇーシノ様ここにい"ましたかぁー…… 」
昨夜、酒を飲んでリバースし、今まで寝ていたワルフが、ガラガラ声起きてきた。
「…… 起きたかワルフ 」
「いや"ー何か知ら"ねぇんですが布団がなくて寒ぐて起きま"じた …… グビグビっぷはぁ…… 」
こら勝手に人の酒を飲むな。
ワルフは俺が飲んでいた焼酎を勝手に飲み切りゲップをして、こちらにワルフの臭い息がボフッと来る。臭い。顔を顰めながら睨む。
本当に好き勝手やりやがるな……
じゃあこちらも好き勝手にやらせてもらうわ。
────[ステータス鑑定]
ワルフリン
レベル:350
種族:ドワーフ
年齢:180
性別:男性
職業:神の使徒の下部
体力
1000/1200
魔力量
1200/1200
魔力
450
筋力
1000
敏捷
350
○適性魔法
土魔法
火魔法
○称号
道化
○スキル
鍛冶
細工
状態異常耐性(中)
○固有能力
▼
うん…… まあ…… こんな感じか。ワルフは一般の人族より強いけど…… うん、まぁ普通だ。
しかし本名はワルフリンなんだ…… ちょっとカッコいいじゃんちくしょう…… 俺なんてシノーンだぜ?
職業が…… 凄いがこれは言い逃れ出来る……
じっくり見るとやっぱり▼があるな……
俺はワルフのステータスの▼に全属性魔法を目に溜めて見る。
「シノ様…… そんな睨まんでくれませんか? ほら…… 酒はまた頼めばええじゃろし…… ホラホラもっと酒で喉を潤したら声がガラガラではなくなりすので」
コイツ…… 一緒に旅に出てから一回も金を払ってないくせに偉そうに…… 子供に貰った酒が美味いと思えるのか?
今、新しいちょい良い値段のワインを頼んでいるけどシャツにステテコの丸腰じゃないかよ…… 金を払う記憶だけを綺麗に忘れたのか?
俺はもう一度、ウェイターに芋焼酎を頼みため息をつく……
決めた実験としてワルフに要らないスキルを取得させてやる。
─────[ステータス鑑定]
俺はワルフの取得可能スキルを見ていく…… 要らないスキルは、これと…… この辺りだな……
[女装 ] 必要レベル20
[社交ダンス] 必要レベル25
[基礎化粧] 必要レベル10
[スタイリング(髪) ] 必要レベル10
[スタイリング(被服)] 必要レベル10
わはははは!これで75レベルの消費だ!
…… ごめんなさいやり過ぎました。
ワルフがブルッと体を震わせて首を傾げる。
レベル消費はちゃんとワルフに行われたみたいだ。
他人のステータスを弄る時も俺のレベルを使うのかな?
そう心配したが杞憂だった…… この実験と実証にもなってよかった。
しかし…… ワルフのレベル減ったなぁ……
「ゴメンねワルフリン…… 」
「なんじゃシノ様…… 気持ち悪いのぅ………… !?何でワシの本名を知っとるんじゃ? 」
うふふふと愛想笑いをして酒を追加注文する。
かなりの罪悪感があるのでワルフには良く食べて良く飲んでまったりとしてもらおう。
「さ、ワルフ何でも頼みなさい」
「な…… なんじゃ…… ワシを惚れさせる気か!? 」
「違うわ馬鹿! しばき倒すぞ!?」
☆★
翌早朝……
「シーノーくん! あーそびーましょー! 」
…… なんだなんだ?
…… 関西弁のイントネーションで宿屋の外から俺を呼ぶ大声が聞こえる…… ?
「シーノーくん!あーそびーましょー! 」矢印はイントネーションだ。
何度も遊びに誘われるとか…… 何十年ぶりだ?
チラリと体を隠しながら泊まっている二階の窓から下を見ると王女がいた。
通りを行く獣人が普通に、にこやかに王女に頭を下げていくのを見ると、王女はこういう感じの性格で、王都の住人もそれに慣れているんだなと分かる。
俺は直感した! キュレネと同じだわ!これはめんどくさい事になる!
寝てるワルフを起こさないように部屋から瞬間移動で上空に逃げた。
「ふぅ…… 俺には女難の相か何かあるのかな? 」
そう言えば称号に[女泣かせ]とあったのを思い出して身震いする。まったく冗談じゃない……
さて、どこかで時間を潰して逐電してしまおうと超能力でフヨフヨと飛んでその場を離れる。
「ん? なんだ? 」
地上に砂埃をあげながら俺を追い駆けて来るような何かが…… 魔力で目を強化して視力をあげ見てみると
「お…… 王女…… !? 」
あ! 目が合ったわ! 本当にキュレネと同じだわ!
俺は飛行スピードを上げる…… が、振り切れない! 早すぎる!
王女はぐっと屈伸したかと思うとジャンプして俺の目線にまで到達した
「なんでここまで跳べるの!? 」
キラキラと炎のように光る王女の足には俺が作ったアヘミクレヘンのスパイクが……
俺はスパイクを献上した事を後悔した。
「シーノ! あーそーびーましょ! マイムマイムしてー! 」
キュレネから逃げてまたキュレネみたいな女の子……
「何でこうなるんでしょうか…… ?」
「ん?ホラホラ!マイムマイム!」
ギュッと王女に腕を握られて、俺は地上に連行されるのだった。




