ちょいと金を稼ぐよ!
───────5歳の冬
今年はねぇ、とっても寒くて雪の積もりも凄い。
まだこの世界で5年しか生きていないけどね!
「お兄ちゃん今日も、空には行かないの?」
子供の部屋にキュレネが入ってきて聞いてくる。
「あー地表でこの寒気だからなぁ…空はもっと寒いぞ?俺らの体力じゃあ命がもたないよ。」
風邪ひいちゃうし、死んじゃう!
「そっか!にへへお兄ちゃんとゆっくりできるね」
「う……うん」
キュレネは自分の両親の事を聞いた辺りからやたらとベタベタと引っ付いてくるようになった。
これがお兄ちゃんっ子ってヤツなんだろうか?
パニック障害にならなくて良かったが、家族の関係性に不安があるのだろう…… 家族の死とは重いものだからな。
母さんと父さんも相変わらずの溺愛している感じでキュレネをみているんだが、やっぱり難しいなぁ。
あーキュレネに抱きつかれて動きにくい。体温が子供だから暖かい…… 寒いからそこは助かるからまぁ我慢できるけど。
そう思いながら作業を再開する。
「お兄ちゃん何を作っているの?」
ナイフと物差しで板を切断していき均等な2センチの四角の木片をいくつも作る。
「キュレネこの切った四角の木片の表側だけ黒く溶いだ墨を塗ってくれないか?」
「?いいよー!」
キュレネは木片をいくつか握って、にぱーっと笑う。いい子だなキュレネは。
さてキュレネが手伝ってくれるし俺も作業しよう。
墨を溶いだ墨壺に糸を浸す。大工道具の墨壺があるのは助かった直線が綺麗にひけるしね。
墨で黒く染まった糸を摘み跳ねさせ碁盤の目のように四角で区切った線を引いていく。なんて事はない地球のオモチャであるリバーシを作っているのだ。
「冬の寒い時期に家に閉じこもるにはやはり何か娯楽がないとな」
「お兄ちゃんできたよ!」
「ありがとう!キュレネ!」
キュレネが塗ってくれたのはリバーシの駒だ。
塗り込みが甘いけど、一生懸命に黒く塗ってくれた可愛い妹に感謝して手が墨で汚れてるから、おでことおでこでグリグリしながら感謝を伝える。
「うぇ?お兄ちゃん…… うふふ」
あーキュレネテレテレしてるな。性格のいい妹はいいよね!うん!
午前中に塗り作業を終えて昼ごはん。
食べ終わる頃には墨は乾いてくれたようで午後にはリバーシで遊ぶ事ができた。
子供の力で作れるオモチャってあと何かあるかな?
キュレネはキャッキャと楽しそうにリバーシで遊んでいて良かったよ。
一度、キュレネがリバーシで俺に勝ったらギュッと前から抱きついて良いかと言ってくる一幕もあった。
やはり家族関係に不安があるんだろうか?母さんに相談してみるのも良いかもしれない。
もちろん遊び始めたばかりだから戦略も戦法もないキュレネには勝てない、負けて寂しそうにするキュレネにキュ───ンと来たよ。
仕方ないので俺からギュッと抱きしめたら真っ赤になり「えへへ」と照れていた。
俺はキュレネに対して、いいお兄ちゃんになれているんだろうか?
その後は母さんが俺たちが遊んでいるのに気づき席を取り上げるようにリバーシを始め、帰ってきた父さんもハマってしまい夕飯は雪降る中、外に出ての食事になった。
村の中心に定食屋があると知らなかったので得をした気分だ。普通の一軒家が飯屋とか旅人とかどうするんだ?
リバーシはその定食屋にも持ち込まれウチの両親が食事そっちのけで打ち合うと、人だかりが出来て一気に村のメイン娯楽になってしまった。
俺が考案者と知るや大人がもっと遊べる物はないかと家に押し寄せ冬の間は休む暇も無かったよ。
ホンマ五歳児に何させとんねん!!!
シノの知識の再現をしようと村大工が加工を引き受けてくれるのでリバーシの駒の角は丸くなり、双六、チェスなどが生まれていく。
娯楽に飢えたこの世界にポッと現れたそれらのオモチャは雪解けと共に産業として輸出されて村が潤う事になるのだった。
────────────────────
キュレネイメージ────────────
間違えていたらすみません
シャーペンですみません
冷え性なので冬場はフードをかぶって過ごす