文明をグンと進める感じ?
ぐっ、なぜ勝てぬ……
俺は何度も小娘の魔法に転がされる。
この王国の兵団を束ね強者として名高い大公である、このオスカーが!だ!
足を掬われ、風の壁に押され、剣を細切れにされ……
なんとか肉弾戦の距離に持ち込んだとおもったら有り得ない精度の身体強化魔法で素速く躱され足をかけられ転がされる。
勝てぬ……
シノめ…… 笑いを堪えているな……
クソめ! シノお前からだ! 死ね!…… あっ!
クッソ転がされた!
チクショー! 俺をダンゴムシやボールみたいに転がしやがってー!
─────プスーッ
クソッ! 今明らかにシノ吹き出したな!
不敬罪だぞ!
なんだよ!? お前ら兄妹は!
ギルドと教会から提出された資料の通り、本当にこの娘は聖女というのか?
ってか俺を転がす女がいてたまるか!
聖女聖女! あー聖女だわ! 聖女しかありえないわー!
パンッと肩の土をはたき立ち上がる
「なるほど、たしかに情報通り聖女なのかもしれないな。シノより腕試しを言われた時は疑ったが天晴れだな」
くそ────シノ! 笑うんじゃねえよ!
…… というわけで、新しい発明をしている時に大公様が絡んで来たのでとりあえずキュレネと戦わせてみたが…… オスカー大公閣下ったら、滅茶苦茶まっ赤に悔しがってるのにカッコつけてるのが面白かった。
さて、仕事だ!今回も[記憶]にある発明を使おう!
地球の技術で何か革新的なものはあるか?と思ったらやっぱり電気だろう。
この世界には魔法があるが、安定して雷・光魔法を使える人間は俺以外にはいないだろう。少なくともこの国には。
俺はあと一年もしたら旅に出る。なんとか置いていくみんなの生活を豊かにしてから行きたい。
町での安定した生活運用に欠かせないのはやはり発電・電力だ。
火の魔石があるこの星でも火力発電が出来るだろう。
アネゴの持ち込み鉱石もあるから蒸気タービンや銅コイルも作れる……ファンタジーとアネゴ万歳だ。
チタン……は無理だがバナジウムやベリリウム、クロムが何とかあるから出来るか?
この町だけの発電だからいけるか?いけるだろ?
俺はなんとかなる!と気軽にドワーフを工場の会議室に呼び出した。
「えーっと皆様…… 今回は発電施設を作ります」
「ハツデン? なんじゃそら? 電…… 雷の武器か?」
惜しい! いや惜しくない電気から雷に行くのがなんか惜しい。
「これは人の生き方を豊かにしるシステムです」
俺の言葉にドワーフの雑談が始まる。
「なんじゃ曖昧模糊のぅ」
「ワシらに関係あるのか?」
ちょっと自由過ぎるなコイツら。
「みんな、何で仕事を夜に終える?」
「そりゃあ…… 暗くなるからのぅ……」
「徹夜もするが…… 火の明かりのコストや場合によっては精度が下がるからな」
うんなんかテレビのお兄さんみたいになってきたな。
「暗くなくなる方法があれば? 」
「仕事…… が…… 寝ずにできる…… ? 」
うん?なんかおかしいな?
「いや寝ようよ! 」
仕事となると話は早くドワーフは散り散りに割り振られた仕事を始める。
発明や製造に関して魔法がエグいのは科学が必要とせず色々な物を作れてしまう所だろう。
「シノ様…… 実験をしたいんじゃが硫酸をくれんか? 」
「え? 俺に頼めば硫酸のシッコでもすると思うの? 」
ドワーフが言うには黒魔法の"全てを溶かす水"が硫酸だという。
え? 攻撃魔法で硫酸ってかなり怖くない?
そう思ったんだけど、出るもんですねー。俺、望めば硫酸が出せちゃうんですよ魔法エグいよ。
硫黄が欲しいとなれば町外れで少し地面を噴火させて採取したりもうねメチャクチャ。
乾燥や錆も思いのまま。黒魔法の『武器を朽ちさせる風』を使うと鉄が錆びるの。魔法エグいよ…… 電解とかも雷魔法で出来る。
地球なら大手科学会社に就職できるよ……
安定して給料もらえるよ……
あれ? でも超能力使えてもそんな稼げなかったなぁ…… やっぱりダラけた人間には無理かなぁ。
町に科学工場を作ると危ないので土魔法で町の外に大穴を掘りそこに急場の工場を設えた。
水蒸気の為に水を引くのも川から土魔法でズルリといける。なんでこの星の文化水準は上がらないんだ?
あぁ魔物がいるからか…… 忘れてた。
・火事を起こさない事
・とにかくタービンが回る事
・とにかく事故がない事
この基本を抑えつつ、設計と実験の概要は俺が立てて、実験の実施をドワーフがこなす…… というルーチンでガンガン開発を進めると春には蒸気小型タービンとモーターや電球が出来上がった。早すぎる。
魔法とドワーフがいるにしても驚異的に早いペースである。それは回答がある物の設計図があるからだろうけど…… ドワーフの職人としての勘と手先の器用さには驚かされる。
発電機が完成した夜、唸りを上げるタービンから送電して送られてきた文明の光…… 電気が町を照らす。
「シノ…… これは何だ? 」
「これが明かりの文明ですよオスカー大公閣下」
夜を照らす眩い魔法を介在しない光とモーターを取り付けた小型グラインダーで鉄を削る音…… 素晴らしい…… ここだけ見るとほとんど地球と同じだな。
「シノ…… 王都にこんなものは無いぞ? 」
「はいここが初めてなので…… 」
事の重大性を忘れているシノだが、とんでもない事をした!と気づくのは王都からさらにオスカー大公閣下を迎えるついでに、色々な噂が溢れてくるこの町を王族が視察に来た時だった。
「あれ? 仕事してたら春だわ…… 」
「うん…… お兄ちゃんって子供らしい子供時代をあまり送ってないよね…… 」
────俺は11歳になっていた。




