キュレネへの話!
───────5歳になった!
あの空から降りた所をキュレネに見られた後、キュレネ「ねーねー!お願ーい!ナイショにするからぁ!」とせがまれ空の散歩をした。
そんな可愛い妹の頼みは聞くしかないだろう?
孫が小さい時も同じような『おねだり』で朝の魔法少女のアニメ玩具をたくさん買った事を、ふと思い出した。
地球の孫に「おじいちゃん異星で魔法少年になったよ!」と言ったらどんな顔をするだろう?
失笑…… いや冷笑されるんだろうな。じいちゃん辛い…… でもまた孫に会いたい!じいちゃんがんばる!
…… その後の空での訓練には当然のようにキュレネが付いてくるようになってしまった。
大分キュレネも知性がついてきたので
「お兄ちゃんの魔法とかみんなにナイショだよ?ナイショにしないなら空に連れて行かないよ」
「うん!わかった!」
バッと両手で自分の口を塞ぐキュレネ…… 今口を塞ぐの?可愛い!
これである…… これである…… はぁ、可愛いなぁ…孫に会いたいなぁ……
空での行動は遊びなんだ!と思っていたキュレネだけど、俺がキチンと魔法の訓練を始めたら目を輝かせて自分も訓練を始めだした。
コツコツと努力をする姿に顔が綻ぶ
間違えた体に合わない自然属性魔法を使うと命が縮むのでキュレネには魔力循環の訓練だけさせている。これ大事。何回も念をおしておいた。
最近はキュレネの体を覆う魔力に力強さを感じ出した。上を目指すのは良い事だろう武力があれば死に遠くなる世界なんだから…… またマイムマイム訓練でもするかな?
俺は属性魔法の訓練を満遍なく続けている…… キュレネは羨ましそうに見るが許しておくれ。お兄ちゃん神様の加護があるから……だから…… ねぇ?そんな顔をしないで?ごめんね?
☆★
今日は1つの区切りの日だった!
キュレネに本当の両親がいると教える日。
初めは聞いた時、え?早くない?と俺は父さんの言葉に唖然としたよ。
でも父さんの話で理解を深めたら分かった。この世界はプライバシーは無いのだ。
本当に人権ごウ○コだよ!今朝喋った内容が村の端に到着するまで光の如しだよ!怖いよね!
キュレネも年齢的に物心がつく頃合いなので、他人から色々と吹き込まれたり、虐められるよりかは父さんと母さんがキュレネに伝える方が良いだろうと判断したようだ。
村から離れた丘の上に家族4人で佇む……
魔物やアンデットがいる世界なので墓場も人間の住居近くに作れない。墓下からゾンビが出る可能性がある世界ってマジ怖いんですけど……
目の前には2つの木組みの十字架が立っている。
「キュレネ…おまえの父さんと母さんだよ」
父さんが気まずそうに小声でキュレネに話す。
「え?え?お父さんお母さん幽霊だったの?」
焦りながらキュレネは父さん母さんをキョロキョロと見る。
そんなキュレネを落ち着けるように肩に手を置いた母さんが涙を浮かべながら首を横に振りキュレネの本当の両親の事を語り出す。
キュレネの両親は治療院で働く光の回復魔法使いだったらしい。回復魔法は光か。
ある日、村の外の街道で農業馬車と商業馬車の衝突事故があり怪我人も多数いるという事で、ウチの母さんにキュレネの両親は娘を預けて急いで救護に向かったそうだ。
商業馬車は奴隷運搬の馬車で横転により商品の奴隷が骨折などの怪我をしていた。勢いよく投げ出されて頭が割れて死んだ者もいたらしい。
1人でも多く助けようとしたキュレネの両親は怪我や悲鳴や血の匂いに誘われて迫って来ていた魔物に気づかなかった。
そして…… うん、そうか酷い話だね。
キュレネは涙を流し良い行いをした両親の事を聞いていた。
「キュレネ…あなたの両親は本当にいい人間だった。死んでしまい本当に辛いし…… 寂しくて悲しいわ」
母さんもキュレネと涙を流している。
父さんは背を向け魔物に警戒しているつもりだろうが、肩が震え手で目元をしきりに拭っている。
「……お兄ちゃんは……?」
キュレネの絞り出した言葉に母さんは息を飲む。
娘に天涯孤独と言わなければならない覚悟をして母さんはしゃがんでキュレネに目線を合わせる。
「シノは私から産まれたの…今まで騙していたみたいでごめんなさい……」
母さんはもう言葉が続かず泣いてしまった。
「そう……なの?」
そう呟きながらキュレネが俺を見る。
「…… うん」
そう答えるしか俺にはできなかった。
★☆
次の日はさすがにキュレネも魔法訓練しないだろうなと思っていたら俺の服の端を引っ張ってついてきた
なんだ?と思いながらも2人で無言で上空へ
キュレネは自分の両親の墓がある方を見つめた後に俺に目を移し頬を赤らめてから。
「えへへ」
と笑った。その笑顔がなんだったのかその時は分からなかった。
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シノーンのイメージです───
シャーペンですみません