ゴムゴムのゴム!
ウチの工場のドワーフ達が俺の設計を元にいくつかの蒸気自動車の試作品が完成した。
いや、アレだよ頑張ったところで車なんて完成できねぇよと思うのは分かる。でも完成してしまうんだよ。ドワーフすげぇ……
村の外に木組みだけど作業用のガレージを作りガタガタと昼夜に亘り作業をしているので村の住人からの苦情が父さんに来る。
それも、毎日…… どれほどまでにドワーフが熱中していたか分かるだろう。
執務中、苦情の書類の多さにキレた父さんが来室中の村の顔役の老人に頼んだ。
「シノに苦情を言ってくれないか? 私から話すと親子だからあやふやになりそうだし…… 」
父さんの言葉に顔役は苦笑する。
「いや、子供に苦情言うのは大人気ないじゃろ?しかも村の収益のほとんどが今はシノーン頼みじゃ。苦情はオーディオ、父親であり村長であるお主が受け止めるが吉じゃよ。」
と返され父さんの顔が土気色になっていたという…… すんません。
そのぐらい根を詰めてドワーフが作業した蒸気機関で動く自動車はアツい!激アツ!かっこいい。
運搬や、人々の足がアップグレードされたおかげでウチの村から色々な町や都市への輸送が早く出来るように…… はならないんだよなこれが……
まだ車として不完全なんだよ。なんせ素材が足りない。
この世界の多くの道が酷道なのだ。
ゴムを履いていないタイヤなので走行自体が危ない。
蒸気で動く車でガタゴトとか…… 振動でエンジンが燃えるし、車の骨組みが折れてしまう。
…… いっその事、高温の蒸気を武器にして魔物と戦うって道具もアリかな?…… いや道筋が車から離れ過ぎるな。これは次回にしよう。
とりあえず…… これからどうするか、愉快なオッさん共に聞いてみるとすっか!
車を作る為に集まっているドワーフに聞くのはズバリ!ゴムです。
「皆さん、探している素材があります。これはこれからの物作りに実に重要なものです。」
ざわざわ…… ドワーフ達は新しい物を想像して落ち着きがなくなる。
うん、つかみはオッケーだな。
「探している素材は、柔らかく粘りがあり、固まると強度が出る樹液が出る木は無いですか?乾燥する前の接触した感覚としてはネットネトな樹液です」
地球でもコロンブスが天然ゴムをハイチで発見したと[記憶ファイル]にある。子供がゴムの木の樹液を固めてボールにして遊んでいたそうだ。
「それは鉄に関係あるのか? 」
「樹液とか造園の仕事だろ?」
「それはアレかのぅ…… 」
「酒を飲みながら話そうぞ!」
「はい!!あなた!!!」
ビシッと1人のドワーフを指を指す。
「酒ぇー? 」
「違う! その隣! 酒は仕事の後!うぇーっとした顔しない! 」
「それはアレかのぅ…… 」と思わせぶりな事を言ったドワーフの肩を掴んで引きずり出して皆の前で尋問を始める。
「うん、聞いた感じではそうじゃな…… ワシの知る所の名前で言うとヨダレの木じゃろか? 」
「ヨ…… ヨダレ……? 」
他のドワーフから『マジかよ』『アレかよ』『うっわ嫌じゃあれは』と声が漏れる。
え?結構な有名な木なの?
皆の雑談をまとめると、どうも樹の表面に傷を付けたら粘り気のある汁が出る樹があるそうだ。
「ヨダレの木か、夜営で木にもたれ掛かって寝る時に、その木がヨダレの木と知らずに寝ると…… なぁ」
「ああ、例えば鎧や武器で木に傷を付けたら朝にはベトベトになり、そのまま冒険をすると固まってしまい戦うのに不自由する」
「そうじゃ!ヨダレの木は鉄を愛するドワーフの忌み木じゃ!」
なぜか盛り上がるドワーフ。あ、村鍛治さんもヨダレの木を知ってるんですね?ホントに有名みたいだな……
名前の由来は『まるで冒険者を食べようとヨダレを垂らしているからヨダレの木』と言われるようになったという。嫌いすぎじゃない?
「あれはのぅホント、鍛冶屋泣かせなんじゃ…… ベトベトに固まると研ぎを断る鍛冶屋もある。砥石が傷むからのぅ」
ドワーフが全員うんうんと静まり返って頷く
──────めちゃくちゃゴムじゃん!
神様は地球やこの星を同時に管理しているみたいだし、今までも名前は違うが地球と同じ植物がたくさんあったのでもしかしたらと思ったが……
神様…… 創造力の引き出しガバガバじゃないっすか!オリジナリティある魔法は理解出来てないみたいですし!
「鍛治屋の諸君! それがゴム! 取ってきなさい!」
俺の指令に対して、猫が臭い物をにおった時の顔を全員がする。
あ、村鍛治さんは行ってくれたわ。人族は融通が効くなぁ……
『鉄には要らないのぅ』『採取する道具が可哀想じゃ』ドワーフは円陣を組んでボソボソと愚痴を言う。
なんだこの感じは…… 小学生かよ
それから暫く俺はゴムの有用性を例を出しながら説いたら態度は一変した。
「接合部に使うと密閉生が増す」→ザワッ
「耐久部分に補助で使うと鉄の寿命がのびる」→ザワワッ!
「乗り物やクッションに使うと、振動を抑え故障率が下がり、車としての完成度が遥かに上がる」→ザワワワワ!!
ドワーフの髪が興奮で逆立つ瞬間を…… 俺は見た。
「シノ様…… ゴムの加工方法は分かるので?」
「う…… うん」
「採取方法は? 」
「分かる…… ?」
「どっちなんですか? 」
興奮し過ぎて体温熱いよドワーフさんちょっと近づき過ぎてあなたの瞳に私が映ってるぅ……
ドワーフはその巨体から考えられないスピードで方々に散り、次の日には樽いっぱいにゴムを溜めて戻ってきた。
広範囲の採取をカバーする為に冒険者も雇ったみたいだ。情熱が凄い。怖い。
蒸気自動車のタイヤは空気タイヤにはまだ出来ないがゴムを充填した重機などに使われるソリッドタイヤには加工が出来る。
鉄の接合部にゴムを使うなどドワーフが嬉々として頑張り、蒸気自動車は一応の完成を果たした。
───────その夜……
「蝶野く─────ん…… 」
うーん
「蝶野くーんワシの創造力の引き出しガバガバって酷いのぅ…… 」
うーん寝苦しい……いや、普通に苦しい。
「蝶野くーんそちらの星には石油より使える物があるぞい」
…… 神様?
「蝶野くーん、王都の近くに呪われた川があるから調べなさーいガバガバじゃないぞーい」
俺は驚いてガバッと夢から目覚める。
「俺の部屋だよな?…… 神様、ガソリンも作れってのか……?化石燃料だからアリっちゃアリなんだろうけども。」
一階、俺の部屋の窓から神様に問いかけるように夜空に呟いた。ん?と思いながらふと目線を空から下ろす。
家の裏庭にゴムを集めた樽を運ぶ奴等と目が合う…… なにしとんのコイツら。
そのドワーフの口がゆっくりと動く……
「ガ…… ソ…… リ…… ン……?」
「ひぃぃっ! 」
俺は急いで布団を被りギュッと目を瞑り早く睡魔が来る事を願った。
窓の外の近距離から強烈に感じる視線に怯えて、再び眠りについたのは空が明るくなり始めた頃だった。




