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転生への手続き

 「それでですね、俺に超能力をくれたのがあなただったと?」

 「いかにもそうじゃ」


 何もない白い空間に、じい様が手を(かざ)すと夏の日を思わせる縁台と将棋盤が現れた。

 「まあ一局」


 …… とその白髪のじい様に誘われパチリパチリと将棋を打ち合いながら話が始まった。


 話を聞くに、どうやらこのじい様は神様であるらしく、俺に超能力をくれた張本人だそうだ。


 青い目に白髪の足元まで伸びる長髪、白いローブを着ている。まんまイメージの神様。


 ……でもその長髪でウ○コできるの?

 え?何か悪い事考えてないかって?滅相(めっそう)もございません!


 超能力を俺にくれた理由、それは大層な話だった。地球の文化が停滞期に入り、なかなか進まないから仏陀のような転換点として、超自然能力をもった者を誕生させ科学との融合を果たすように観察して人間を一段階進化させようとしたらしい。


 だが超能力をもたされた俺は欲張るではなく、悪い事をせずユルユルとそこそこ(・・・・)良い事をして自然にまかせて病気になり天寿を全うしてしまった。


 「なんかスミマセン…」

 「いやいやいいんじゃよ、これはこれで立派な自制心じゃてな。」


 神様は穏やかな笑みを浮かべ謝罪を止める。

 「人間はの普通は強い力があると善悪か己の利に振り回されるもんじゃ。お主はそれをせんかった」


 (うなず)きながら穏やかに優しい声で人生を褒められたような気持ちになる。

 さすが神様。ちょっと目頭が熱くなる。


 パチリ……あ王手とってもうた。


 ジトっとした目を神様に向けられる。


 「あ…… !あー、あの?これから俺はどうすれば?出来れば父と母に会いたいんですが?天国にいてます?」


 王手を取った俺の成金を指でピッと弾き飛ばして神様が少し()ねた顔を上げこちらを見る。


 「おまえの父と母は天国におるよ。それは大丈夫じゃ。しかしの神であるワシがワザワザこうして出向いたのはちょっと頼み事があったからなんじゃよ」


 「頼み事?」

 神様は頷くと指で30インチテレビ程の四角を空中に描く。レターボックスかよ。


 そこの四角に映像が映る。


 ヨーロッパだろうか?石畳の街や深い森、映画でよく見るような怪物がランダムに映し出されていく。


 「これは地球よりちょーっと光の速さで、ちょーっと…ちょーっと離れた所にある星じゃよ」

 「へー凄いな……」


 神様の言葉なんだ嘘ではないだろう地球以外に人が暮らす星があるんだな。


 「ここに転生してくれんか?」

 「転生?俺がですか?」


 なんでも神様は信仰という力を得る為に、宇宙にいくつかの地球のような星を創造・整備し人を誕生させた。


 だがこの映像の星だけは、神様も分からない何か(・・)の手違いで魔力という物が空気中に充満し生物の進化の過程でミトコンドリアと魔素が合成されて生物に取り込まれてしまった。


 呼吸できる生物の一部は変異に耐えれなかったのか魔素がミトコンドリアを攻撃し魔物や魔族に

 適応できた人間は細胞にある魔素により魔法を使えるようになってしまった。


 魔法は便利で産業革命のようなものをおこさず、魔物が人間を襲うので人間同士の戦争も起こることはあるが、なかなか大規模に起こらないので科学の発達も遅い。


 やはり戦争は科学の発展に寄与するんだな…… やだねぇ。

 そこにきて魔物が力を増し出して人間を駆逐しようとし始めているという。


 「はあ、魔法……ですか?その…… ゲームのような?」

 神様がゆっくり(うなず)く。


 「まぁ地球に住む人間には魔法はおとぎ話のように感じるじゃろうな……とにかくじゃ」

 神様は縁台から立ち上がって虚空を見上げる。



 「ワシとしてはその星の人間も子供のようなもんじゃ。みすみすと全滅して欲しくは無い。」


 俺もつられて縁台から立ち上がると縁台はスウッと霧散し消える。


 「地球にて大きな力を持たせて産まれて一生を生きたのに、それを使い悪虐(あくぎゃく)をせんかった……なかなか出来ん事じゃ。そんなオマエにこの星では唯一で強固な神の加護を与えるのでこの星の人間の為に手を貸して欲しいんじゃよ」


 神様が俺にその青い目を向けて頼む。


 「あの?返答がかなり難しいんですが……」

 いきなり他の星で生まれ変わって生きろと言われても早く天国の父さん母さんに会いたいし……



 「ふむぅ…… チートより天国の安寧を望むか…… ならば、神としては言ってはならんかもしれんが、この神の望みを聞いてくれるならばオマエの妻と娘は必ず天国に行けるようにしよう。一生の時間より天国の時間の方が長いが、どうか?」


 これは嬉しい……が

 「もう一声!」


 神様がやれやれと笑う

 「わかった女児の孫までは死後に天国に迎えよう」


 孫までと聞いて俺は大きく(うなず)く。

 神様が交渉は成立した!という風に微笑むと自分の足で床を二回、踏み鳴らしガラスが割れ散らばるように光の波紋が神様から(あふ)れ出て俺を包んだ。



 「よしよし、よいよい…… それでじゃな次の生で与える神の加護はこうなりたい(・・・・・・)と願い訓練すれば叶うというものじゃ」

 「頭打ちがない成長の約束…という事ですか?」


 神様がうなずき左手をスッと上げて頭上で人差し指を立てる。天上天下唯我独尊のポーズである。


 その指先に1メートル程の火、水、土の塊、風、光、黒い影、雷が順々に何度も現れる。

 「オマエが使えるように魔法を見せおくからのぅ」


 見た事は訓練で使えるって事?これで訓練をすれば魔法も使えるという事かいな?


 神様は魔法を解除したのか、さっきまで宙に浮いていた魔法のランダムフラッシュが消える。


 「体や魔力も鍛えたら鍛えただけ強くなるからのぅ」

 「ありがとうございます」


 考えもつかないギフトについおじぎをしてしまった。



 あー本当に神様ったらニコニコしてるなぁ……同じぐらいの見た目年齢なのに癒されるなぁ……と気持ち悪い事を考えていながらボーっとしていたら


 !パンッ!と神様が手を叩く。


 だんだんと視界が白くなるり、え?白内障?と自分のめを(さす)りながら焦る。


 「神様?」

 「心配せずとも良い出発の時間なだけじゃ、あまり長くここにおると魂が天国に結びついてしまうからのぅ。忙しくてすまんがええの?」


 なるほど白内障ではなく転生を今からするんだ。と考えると意識がフワフワとしだす。


 「いえ、死後のご配慮を色々ありがとうございます。なんとか頑張ってあの星の人間に寄り添い頑張ってみます」


 だんだんと意識が途切れていく


 あ?聞くの忘れていた……あー……まぁいっか……そして俺は意識を失った。



 ふむふむと笑う神様だったが、次の瞬間、額にツーっと汗をたらす。


「超能力……回収し忘れたわい……」

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