超能力と俺
俺の名前は蝶野洋力
親は限りなく強い子になって欲しいと洋力と名付けたんだけど思いっきり超能力に捩った名前になってしまった!
子供の時はそれが嫌で仕方なかったんだんだけど、小学生の時にばあちゃんが揚げ物をしていたアツアツ油が入ったフライパンを間違えて自分の肘で落とす瞬間を見てしまった。
────ばあちゃん!!!
そう心に強く思うと、なんと台所に流れ落ちる油がほんの10センチほど曲がってこぼれ落ちた。
ばあちゃんは床に飛び散った飛沫でだけ火傷をしたけどその日の内に病院から帰ってこれた。軽症ってやつかな?
こぼれた油が全て太ももにかかっていたら歩行困難になったかもしれない。もっと下手をしたらショック死をしていたと聞いた時には本当によかったと、ばあちゃんに抱きついた。
─────その夜
自室の布団の中であの空中で不自然に曲がった油を思い出していた。
気のせいではないとは分かっていた
ばあちゃんが危ないと思って手を伸ばした手の先に透明なタオルのようなものが飛び出して油を叩いた。
「まさかな……」
そう思って油を曲げた感覚を思い出しながら座っている場所から1メートルほど離れた机に置いている、父さんがお土産でくれた憎たらしい顔のカエルの人形に手を向ける。
「このカエルならいいか」
父さんが聞いたら泣いてしまうような独り言を呟いて動けと念じてみた
…… 動け
………… 動け
……………… むしろ机から落ちて割れろ!
憎たらしい顔のカエルに向けて段々と強い意志をぶつける。
その時に肩から腕にかけて血管の中に何かが通る感覚がありビリビリと軽く皮膚が震える
「うわっほん」
いきなり体に走る感覚に驚き変な声が出る。と、同時にタオルのような透明の力が腕から伸びてカエルの人形を机からはたき落とした。
「マジか……」
これが俺と超能力との出会いだった!
蝶野洋力と超能力とか……マンガじゃないんだから
そう少し悲しみながら自分の手をジッと見てその夜は過ごした。
それから毎日学校の図書室や休みの日は図書館に行き超能力の本や文献、小説を読み漁った。
親は残念な頭の俺が図書室や図書館に通うのを見て勉強に目覚めたと喜んだ。
すまない名前に蝶がつくから夏休みの自由研究で蝶の観察をしていると思ったら蛾だったぐらい残念だったんだ。
数珠とかジュジュと書いて変換されないとPCに怒っていた残念さだったんだ。
だが実際は超能力の研究。
いつまでもテストの点数が上向かないのを見て親は優しく励まされたりして軽く夜に布団で泣いたりもした。
ただ練習と勉強により超能力はちょっとずつ進化をして
・念動力
・瞬間移動
・透視
・飛行
・突然発火
それらの超能力を中学生になる頃には使えるようになっていた。
────といっても世界を変える事はしない。
たまーに、ホントにたまに事故をしそうな車を念動力で助けたり、橋から落ちた子供を瞬間移動で助けたり……
ちょっとずつ良い事と、生活に楽が出来る事を超能力の練習を交ながらながらしていた。
--超能力の研究をしていたので小説なんかにある
--超能力をもった為に人体実験
--1人対国家
--肉体的精神的ぼっち
などなどに恐怖し超能力を乱用しないように気をつけて生きて行こうと心に誓った為だ。
やがて成人となり仕事をして結婚をし、子供が出来て……
仕事は倉庫管理と運搬なので超能力おいしいです楽々です
子供に超能力が無いと分かりちょーっとガッカリしたりして…………
可愛い可愛い女の子の孫が出来て……
癌になって、手遅れで…… 愛する妻に看取られ72歳で死んでしまった。
ちなみに最後に超能力を使ったのは孫がお見舞いに持ってきてくれた ういろうを取ろうと念動力で手元に寄せた時が最後だった。
───────…… ういろう
もちもちしているし甘さ控え目だし大好きだ。
かるかんの次に大好きだ!
ゆっくり目を瞑って心臓が止まる……
……
…………?
「あれ?死なないな?」
ふと、目を開けたらそこは知らない白い空間だった。
「あれ??あれぇ?」
癌の痛みを感じないし体がやたらと軽い。
キョロキョロと困惑しながら周りを見ると前から誰かが歩いてくる。
「おーようこそ」
それは血色の良い自分と同年代の飄々(ひょうひょう)とした白髪のじい様だった。