エピローグ
夕方の冷たい風に揺られ土手の一本道を歩いていた。
もちろん僕一人の散歩ではない。隣には花火がいて僕の手には花火の手もある。
僕らはこうして、時々思いでのつまっている土手にデートをしにくる。
この散歩がデートだと思うと少しだけわ笑けてしまう。
「何笑ってんのさ。気持ち悪」と、本当に気持ち悪がるもんだから少しおちょくってやりたくなった。
「風で花火のパンツが見えたんだよ」
すると頭に強い衝撃がはしった。
「何色?」とたずねる花火に「なにが?」と返すと少し顔を赤らめている花火が「パンツが…」と照れながら言い返してきた。
実際は見えていないのだからわからないが、「白」と答えた。
すると花火が急に笑顔になった。
「ブー、見えてないじゃーん。嘘つきー」そういってあははと笑う花火は僕にとっての栄養素の一つなのかもしれないと最近はよく思う。
「僕らってさ、一緒にいること多いのに喧嘩しないよね」
「確かにないよね。案外浅い関係?」冗談ぽく、そういいながら花火は笑っていた。
「浅いのかも知れないね」と何気なく発した僕の一言に花火がだまり込んでしまった。
何も言わず歩きつづける花火の後ろについて僕も歩いた。
今思えば僕は花火の後ろをいつもいつもついてまわっていた。花火は人として強いからと後ろに隠れていれば安心だった。
花火を守るなんて一丁前なことを言っていたのに。そう思うと自分の不甲斐なさに少し呆れる。
「花火!」
僕に呼ばれ花火は僕の方を振り向いてくれた。
「浅い関係かもしれないとも思うけど、僕は君とずっと一緒にいたい。もっと深い関係になって君のすべてを知りたい」
僕の真剣さとは裏腹に花火は少し笑い「なんじゃいそれ」と言っていた。
僕にとっては告白のつもりだったが、花火からはそう聞こえなかったのだろうか。
「もしかしてそれ告白?」
(いや、案外伝わってるのか)
「そうだよ」
相変わらず花火は察しがいいというか、僕の考えそうなことをわかっているような。とにかく僕には敵わないと思った。
「何年経ってると思ってるの?」
花火がなんのことを言ってるのか僕には良くわからなかった。
「何年って?」
僕の質問に花火は顔を赤らめ恥ずかしがっていた。
「初めて、キスした日から…だよ」
あの日からならもう三年が経つ。
そう言えば、僕と花火には未だに分からないことがある。花火の両親はテントに自ら火をつけたとしてその場にいた大学生はいったいどう言うことだったのか。
カモフラージュが人並外れて優れすぎているということも疑問だ。
あの事件の真相を暴こうとしたこともあったが花火自身があの事件は曖昧な方が言い出し、僕らは何も知ろうとはしなくなった。
世の中には知らなくてもいいことがたくさんあり、あの事件もその一つなのだから。
これの決断をしたのが約二年ほど前だ。
今思うとあの日から僕らは常に行動を共にし付き合っているようなものなのに、僕は花火を彼女とはしなかった。
司と高嶺も一年程付き合ったと言うのに、僕らはずっと足踏み状態だ。
欲しがってしまえば失くなってしまうような、そんな言い訳を脳裏に浮かべた。が、本当は綺麗な理由なんて無く僕自身が弱虫なだけだ。
「三年もたって、ごめん」
「ほんっと意気地無しだよね」
花火の言葉が胸に刺さり心がいたいと感じる。でも、そのあとの花火の笑顔に僕は癒された。
「まあ、三年遅れの告白してくる春夫も、らしくていいかな」
そう言って花火はまたあるきだした。
僕は今にやけてしまっているだろうなら、と思うと花火のとなりにいくのは恥ずかしかった。でも、隣にいたいと思う気持ちの方が数段強かった。
「なんじゃいそれ」
と花火の真似をしてごまかした。
「あー、真似しないで~」
そう言って笑い合う僕らはきっとこれからもずっと一緒なんだろう。
僕のまぬけさに花火はあきれながらそれでも、フォローしてくれる。
きっと、僕らには明るい明日がある。
花火と僕のように愛する者の幸せを願い、尊重し優先する。それこそが名前も容姿も性格も違う僕ら人間の唯一の共通点であり、最も初歩的な生きる理由なのかもしれない、な。




