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僕がヒトの世界を捨てた日 1
ぶっちゃけ1章は飛ばしてくれてもよいかもです
生まれる前の、意識のその裏──考えたこともなかったが、今が多分そんな体感なのだろう。まどろみの中、自分の肉体と精神が一致せず、境界も蜃気楼のように深く暗い闇に沈没していく感覚。
覚醒めていた時は、こうなるのを拒否していたが、今だと別に嫌いじゃない。それに、肉体の持つ衝動に振り回されることもない。暖かく、凍りついていく意識。
嘗て第七魔海の王と謳われ、魔の血族や、ヒトの世界を見境なく喰らいつくしていった過去が頭によぎる。だから、敵を作って、私は封じられたのだ。私の"中"で奮闘してくれた友も、こうして私と同じ様に、世の時間からはみ出され停滞しているだろう。
……退屈だとは思わなかった。だが、もう一度見てみたい。私を封じたヒトの──ヒトの持つ輝きを。