俺に対してのクレームは現在受付けておりません。
俺は全速力で走り、さっきのカフェにようやく着いた。
しかしさっきの女生徒はもういなくなっていた。
だとするとすでにあの学校の大賢者とかいうやつの所へ行ってしまっているのかもしれない。
資料で見た催眠系危険ドラッグが頭を離れない。
違反内容を見ても大賢者とかいうやつはまともじゃない。
最悪なことにならなきゃいいが......。
俺はそんな心配を胸に高校を目指し、走り出した。
俺は資料にある大賢者の居場所までようやくたどり着いた。
額からは焦りからくる汗が滴り落ちた。
そして俺は扉を開けた。
そこには服がはだけ、涙目の女生徒と大賢者と思しき男が立っていた。
「おい、あんた。何をしている。」
「何って授業ですけど。あなたこそこの学校の生徒ではないようだが。」
「授業でなぜ生徒が涙目になる。」
「いやこの子が悪さするものですから少しお説教をと思いましてね?」
「じゃあなぜその生徒は言葉を発しない。」
女生徒はただ黙って目だけで訴えきた。
俺はさっきの資料にあった重力を操れるという能力のことが頭をよぎった。
こいつ、能力をかけてやがるな。
くそ、 無垢な女の子にこの男は。
「いやそれは、今は落ち込んでるからであって....。」
そう言うと男は不意ににやつき、周りの物がいきなり燃え始めた。
恐らく指定した範囲内の温度を極端に上げたのだろうが俺にはこの時計がある限り能力は通らない。
「な、なぜ平気な顔をしていられる。とっくに温度は200度を超えてるはず。」
「あんた、恥ずかしくないのか?こんな純真無垢なな女の子を騙して。」
「知ったことか。俺が何のためにその女に優しくしてきたか。それをお前は台無しにするつもりか!」
クズが。怒りが俺の心を焼いた。耳が暑くなった。
本当はこのまま時計で能力を差し押さえれば済むのだが、それでは俺の怒りが治まらない。
俺はさっき差し押さえた錬金術を使い、ゴーレムを作り出した。
使い方は分からないが恐らく頭で命令すればいいのだろう。
その男の意識が無くなるまで殴り続けろ。
俺はそう命令した。
するとゴーレムは勢いよく、その男に向かっていき胸ぐらを掴み岩でできた拳を振るい顔を殴り始めた。
俺はその間に硬直した彼女を椅子から剥がして教室の外へと連れ出した。
その時教室から何かが砕ける音がした。
中を見るとゴーレムが跡形もなく粉々になっていた。
「こんなもので私を止められるとでも?」
さすがに強いな。伊達に10年も転生生活をしていないわけだ。
俺は時計のダイヤルを回した。
するといつもの嫌な音が耳を刺したが今は何故か平気だった。
「な、何をした。貴様」
「あなたには能力の不正使用により能力権の差し押さえ状が出ています。これにより錬金術と空間操作を差し押さえさせて頂きました。」
そこで俺はもうひとつの仕事を忘れていたことに気づいた。
「今の生活はどうですか?満足いただけてます?」
「ふざけるなァァ、小僧。私の能力を返せ!!」
そう叫び、男が向かってきた。
無回答か。後でまとめて英梨のパソコンに送っと置かねば。
俺はもう1度をゴーレムを作り出し、同じ命令をした後男にここの20倍程度の重力をかけた。
後は大丈夫だろう。
さっきまで硬直して動けなかった彼女はだいぶ動けるようになったようだがまだ涙目だ。
「すいません、遅くなってしまって。」
俺はそういい終えたのと同時に体が動かなくなった。どうやら魔力切れらしい。
時計で使った能力はそのまま同じように能力を使用する際の条件が課せられる。ゴーレムを作った場合、莫大な量の魔力がかかる。
それを体が動かなくなるまで忘れていた。
俺はそのまま床に倒れ込んだ。
やばい。今日記憶を書き換えた以外の警備員がきたら捕まって留置所行きだ。それは非常にめんどくさい.......な。
「ねえ、ちょっと!嫌よ!まだお礼を言えてないのに。このまま逝っちゃうなんて。許さないから!絶対許さないんだから!!」
彼女の涙が俺の頬を這って落ちていく。
「大丈夫.....です....よ。死ぬわけじゃ..........ないです........し。」
「そんなの嘘よ!!だって魔力がなくなったら.....、人は死んでしまうもの。」
「そう......でした.......か。」
それは初耳だな。死んだら労災いくらおりるかな。
俺はそのまま薄れゆく意識の中目を閉じた。
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