私を救ってくれた人へのクレーム
私はあの男と別れた後すぐに学校に向かった。
むしゃくしゃしていたのだ。
錬金術を失ったらこれから私はどうしていいか分からないからだ。
確かに魔法系能力値を最大まで上げられるのは素晴らしい能力だ。でも私の地頭が悪いんじゃどうにもならない。
だから錬金術が必要なのだ。錬金術で強く、そして有名になって大賢者様に認めてもらわなければ。
転生する前私は少しグレたぐらいの普通の女子高生だった。
でもある時私はベビーカーを押した妊婦さんを庇って車に轢かれて死んでしまった。
きっと家族は悲しんだだろう。でも後悔はしていない。だって異世界転生という選択肢が死んだ後もあったらから。
あの死があったからこそ、大賢者様に出会えたのだ。だから私は死を悔いてはいけない。
私はそんな追憶をしながら学校の校門を抜け、校内にに入り大賢者様の研究室へと向かった。
大賢者様は私がこの世界に来てから色んなことを教えてくた。ピンチの時には私を救ってくれたし、悩んだ時は手を差し伸べてくれた。
彼に認めて貰いたい。
私はそんな思いを胸に扉を開けた。
部屋に入ると大賢者様がノートに向かってペンを走らせていた
「大賢者様、今日も授業よろしくお願いします!」
すると彼はこちらに気づき、笑顔向けてきた。
「やあ。よく来たね。今魔法式を書いているんだ。これが終わったらすぐに授業を始めるからそれまでそこで本でも読んでいてくれ。」
大賢者様は歳より若く見える。目鼻立ちも整っているし、何より優しかった。
「はい、先生。」
私はそう返事をし、席について本に目を向けた。
しばらく本を眺めていたが、ある異変に私は気づいた。
全身が全く動かないのだ。まるで全身を上から押さえつけられているようだ。
私は彼に助けを求めようと心見たが口も同様に動かなかった。
指だけが辛うじて動くが本を離すことぐらいしかできない。
やがて大賢者様は立ち上がり、ゆっくりと振り返った。
その顔には笑があった。
今までのとは違う、少し含みのある笑だ。
私はそこで初めて彼に恐怖を抱いた。
私は今すぐこの場から逃げたいと思ったが、体が全く動かない。
そうしている間にも彼はこちらへとにじり寄ってくる。そして私の胸元のボタンに手をかけた。
怖い。助けを呼びたい。誰でもいいから。
ゆっくりとボタンが開いていく。
私は涙を流す以外に体の反応を起こせなかった。
その時、私は再確認した。
私、やっぱり馬鹿だ。
簡単に人を信じて、簡単に裏切られる。
転生して久しく忘れていた。人の醜さを。男の意地汚さを。
ああ、私はこの男の玩具にされる。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
絶望の足跡が聞こえる。
涙は私の頬を優しく撫で、やがて太腿に落ち、その温度を体に伝えた。
誰でもいいから、助けてよ。でも震えることすら出来ない。私は心の中で神にさえすがった。
その瞬間、扉が勢いよく開いた。
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