〜所定定位置〜(スタートライン)第2話
本文が1度全て消える事故があり、更新が遅れました。
投稿スピードが早い人が羨ましい.......。
「ん.....。んぁ?...ふぁ〜。」
傷の治療をするからゆっくり身体を休めてくれと少女に言われ、やっと一息つけるとなると今までの疲れがドッと出てきてしまい、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
傷の具合を確かめようと身体を起き上がらせる。
(妙に体が軽い.....。痛みもないし.....。)
傷の度合いが1番酷かった、肋辺りを確認する。
「か、完治してる.....。骨数本逝ってたのにっ!?そうだっ!あ、あの女の子はっ!?」
傷は何事もなかったかのように、傷跡すら残さず綺麗さっぱり消えていた。
まだあの少女へお礼のひとつも出来ていないのだ。
顔を合わせて一言お礼を言いたかった。
.....言えるかは分からないが。
それに繋はもう一度顔を合わせて確認してみたい事もあった。
「呼んだかいっ!?目が覚めたんだねっ!災難だったねぇ。君には聞きたいことがたくさんあるなぁ。あ、何か飲む?水持ってこようか!?それとも何か食べる!?」
思った事を全て口に出すタイプなのか怒涛の勢いで口が動いて、ただでさえ会話に慣れていない繋は圧倒されていた。
それに気が付いたのか、少女はイタズラを見付かった時に見せるようなバツの悪そうな顔をした。
「いきなりごめんね、ここに人が訪れるのは随分久しぶりでね、つい興奮しちゃった。自己紹介がまだだったね、ボクはシトリー。君は?」
普段ならここで言葉に詰まり、とてつもなく小さな声で返答するか、返答できずに俯いてしまうかのどっちかであったが、今の繋はいつもは張り詰めすぎてピリピリしている緊張感がまるでなくリラックスして話を聞けていた。
それに、顔を合わせて繋は自分の心の中にあった懐かしさが少女から感じたものだと確信した。
なぜだかは分からなかったが。
そんなこんなで返す言葉もスルスルと出てくる。
「俺は門脇 繋。ここに数時間前に飛ばされてきたのでここの事は何もわからないんだ。だから色々と教えてくれると助かるのだけど.....。」
(ふおぉぉぉぉぉっ!はっ、話せてる!!初めて琢磨以外の人ときちんと話したぞ!!!!すげぇ何か感動する!!)
と、1人で心の中で興奮しているとシトリーと名乗った少女はポカンと口を開け、固まっていた。
「あ、あのどうかした......?」
「い、今門脇.....門脇と申したのですか?」
「そ、そうだけど?俺の名字は門脇で間違いないよ?」
なぜそんなに名字にこだわるのかイマイチ意図が読み取れない繋。
突然大粒の涙を流し始めるシトリー。
「どっ、どうしたっ!?お、俺なんかしたかっ!?」
女性の泣いている所に遭遇した事がない繋は当然狼狽える。
少女は首を横に振り、泣き顔に無理矢理笑みを浮かべ繋へ確かにこう告げた。
「おかえりなさい、主人」
「______________はい?」
今度は繋の表情が固まった。
「えっと、急にどうしたんだっ!?急展開過ぎて頭が追いついてないんだけど......。」
「そ、そうでした。主人は何も知らずにこちらへいらしたと申しておりましたね。困りました.....。どこから説明致しましょうか.....?」
「待った待った!なんでさっきから急に言葉遣いが恭しくなってるんだ!?会ったばかりの時の言葉遣いに戻してくれ!!なんかしっくりこねぇ!」
「し、しかし、主人......。」
なお食い下がろうとするシトリーへ繋は問答無用とばかりにシトリーの両肩を掴みガクガクと揺すった。
「いや、ほんと頼むから戻してくれ。なんで俺のことを主人なんて呼ぶのかは知らねぇけど、口調までは変える必要ないだろ!?俺にとってお前は初めてまともに話せる奴なんだ。」
「わ、わかったから!!ま....ますたぁ、かっ....顔が近いっ!!」
「あ、あぁすまない。でもわかってくれたんだな!ありがとう!!」
言葉に力が入りすぎていたらしく、鼻と鼻が接触する寸前まで接近していた。
「俺はお前に聞きたい事が多すぎるんだが....。答えてくれるか?」
「もちろんっ!ボクに答えられる範囲の質問であればなんでも答えるよ!」
「うん、やっぱお前はそっちの口調の方が可愛いし似合ってると思う。」
「なっ、何を言い出すんだ急にっ!!」
(お、思った事を言っただけなのに、なぜか怒られた!?琢磨との会話ではこんな事なかったのに.....。女の子との会話は難しいものだな.....。)
長い話ななるだろうから場所を変えようというシトリーの提案に乗り、普段からこの森に住んでいると言うシトリーに自宅へ案内してもらった。
案内してもらったまでは良かった。
「...........ここ?」
「そうだよ!!良いところでしょー!?」
「そ、そうだな.......。」
満面の笑みで返されて、なおかつ良いところと言われたが繋には怪しげな宗教が建てた如何わしい建物にしか見えなかった。
もちろん口には出せる訳がなかったが。
外見は西洋風の神殿に近い。
門の両端に2体設置されている、石像が気になって仕方がない。
問題は外見だ。
鬼に近く、角があるのだが背中からは翼がはえ人間にも近い筋肉の付き方をしていた。
「シトリー、この薄気味悪い石像はなんだ?」
「薄気味悪いとは失礼だね!!我が家の門番だよ!!ガーゴイルって言うんだ。可愛いでしょっ!!♪」
「か、可愛いのかコイツが......。」
シトリーの趣味が本当にわからなくなる繋だった。
「それに強いんだよ、この子達!さっきのドラゴンよりかは確実に強いよ!」
「おっかねぇ......。ってか、こいつ石像なのに動くのかよっ!!?」
ガーゴイルを触ろうとしていた手を慌てて引っ込める繋。
それを見たシトリーは我慢出来ずに吹き出した。
「ぶはっ!!アハハハハッ!大丈夫だよっ!その子達、賢いから!噛んだりしないよ!ほら、そんな事よりとりあえず中に入ろうよ!」
中へ入ることを促され入ってみたものの、外と大して変わりはなかった。
一体いつのものなのか、錆びきった拷問道具が壁に飾ってあったり、何かさっぱりわからない気持ち悪い魔物の首がかかっていたりと、繋はことある事に視線を逸らしていた。
互いに向かい合わせに座り、シトリーは繋の質問にひとつひとつ答えていく。
繋は一息付き、今までに得た情報を整理し始める。
(ここは地球とは違う世界でアルドレアと言う世界らしい。地球では幻想とされている生物や魔法が存在する世界で地球の伝説などはほとんどここから来たって話らしい。俺の傷を治したのは治癒魔法ってわけか。俺の家の下にあったのはこの世界へ転移させるためのもの。俺のは特別版みたいな事を言ってたけど、そのへんは俺にはまだ理解出来ねぇな。)
長い整理を終え、シトリーへと向き直るとニコリと微笑み小首を傾げる姿が妙に可愛く見えた。
「大方理解してくれた?」
「あぁ、でも本題がまだだ。お前は何者でどうして俺のことを主人と呼ぶんだ?」
「それは.......。」
口をつぐみ、言うべきかどうか悩んでいる様子だった。
しばらくの間、両者を静寂が支配する。
繋は黙って彼女の言葉を待ち続けた。
「______っ!」
言う決心がついたのか、口を開き言葉を発しようとした瞬間、外で起こった爆発音のせいで2人の意識はそちらに集中した。
「なんだっ!!?」
「わからない!!ここにたどり着けるって事は敵さんって所かな!!?外に出よう!!恐らくここはもう長く持たない!」
2人は走り、外に転がり出た。
「ギャァァァァァッ!!!」
灰が舞い散り、影しか見えないが、恐らくガーゴイルの影が2つと人型の影が1つ。
石像だったはずのガーゴイルは、今や黒光りする肉体へと変貌し襲撃者を迎撃していた。
「あの子達がそう簡単に破られることは無いはず。今のうちに遠くへ行くよ!!悪いけどボクは転移系の魔術はてんで苦手なんだ!」
「気にしないでくれ!走ろう!」
2人が背中を向けた瞬間に一際大きな爆発音がなり、2人は無意識に振り返ってしまった。
ガーゴイル2体は灰燼と化していた。
「そんな!!ボクが今使役できる最高クラスの魔獣2体だぞ!?いとも簡単に......。」
シトリーは信じられないものを見るような目で舞い散る灰を呆然として見ていた。
コツコツと灰の中から靴音が聞こえ、姿を現したのは岬 琢磨であった________。
とにかく頑張って書いて早く更新します(´°ω°)チーン