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ランタナとワイングラス

作者: 咳友華

ずっとずっと欲しかったを手にした瞬間は、なんでこんなにも悲しいのかしら。

新作が発売された後の旧ラインのコスメ

忘れかけていた、もう好きではない雑貨屋の改装オープンのしらせ

買い物帰りに思い出す買い忘れ、もそれに入るかしら


「お前ってほんといいやつだよな。

俺、ずっと昔からお前のこと好きなんだよ。」


そして、ずっと昔、狂おしいほど愛しかった彼の赤い頬


赤い頬の上の黒目がちの瞳がじっと私を見つめていることに、気づいていた。

誤魔化すように握ったワイングラスには少しルージュが移っていて、


「私も、ずっと好きだったわ。」


私の声は思っていたよりずっと小さくて震えていた。

そういえばこのルージュも昔欲しいと言っていたのを最近になって知り合いに頂いたのだった。


あんなにも待ち焦がれていたのに


「知ってた。お前のこと、ずっと見てた。昔からずっと今も。」


彼は含みをもたせてそう言うと困らせるつもりはないと笑ってみせた。


こんなにも悲しくなるなんて


ずっと昔の私だったなら。

彼の目をまっすぐ見つめて、新作のルージュで綺麗に微笑んでいたのかもしれない。

あの雑貨屋さん、改装オープンするんだよ。また、一緒に行こうね。そう言っていたかもしれない。


「そうね。ごめんなさい。」


年甲斐もない淡い色の唇を歪めて、彼の方を見ることもできずにそのまま席を立ってしまった。

あの雑貨屋に私も彼もきっと行かないのでしょうね。

買い忘れていた入浴剤だけは、買って帰ろう

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