4.
「エミル様は……、」
「なんですか?」
「可愛らしいですね」
「えっ……」
私は、彼女の過去を掘り起こしてしまいそうになった。なんとか誤魔化したが、きっと気付いていると思う。
最悪の事態は回避したと思うが、このままではよけいな事を話かねない、仕事に戻ろう。
「ではエミル様、その写真を私に貸して頂けますか?」
「……」
「エミル様?」
「はっ、はい。すいません写真ですね、どうぞ」彼女は、そっと私に写真を手渡した。
「ありがとうございます」
写真には彼女の姿があったが、やはり今の彼女とは明らかに違った。写真の中の彼女は異様な恐さがあった。
「不思議ですか?」
「えっ……、はい」
彼女は笑みを一つ零し
「正直な方なんですね、そういう人嫌いじゃないです。皆そんな人達なら、生きやすいんですけどね……」
「生きるのがお辛かったんですか?」
「えっ……、私そんな風に言いましたか?」彼女は少し考える素振りを見せ、話を続けた。
「言ったんでしょうね、今日は少し楽しいんです。だから本音が口に出てしまったんだと思います」
やはり彼女にも背負っているものがあり、なんとかここまで生きて来たのだろう。
私は彼女に何ができるのか考えた。脳内の全ての機関をフル活動させ、彼女の安息だけを優先させた。
喜ばしい事に、一つの答えを見つけだした。
「できればでいいんですが、少しばかり、私の話に付き合って頂けませんか?」
彼女は霞みがかった微笑みで
「いいですよ、寧ろ聞いてみたいです」と返答した。