2.
脳内に投影した紙は先程の写真である。本来、力を使える私にとって紙を創作するなんてことは造作ないことなのだが、聴覚に力を使いすぎたので、少しばかり想像能力が低下したからである。
粒子から紙を創造するのと写真から紙を創造するのでは、月とスッポンだろう。
両掌を握り、引き伸ばすように手を動かす。指からは白い稲妻が放出され、第一関節を薄く囲み込んだ。そして、その稲妻は右手と左手の空間の中心に向かって進み、絡み合っていった。
その光景はまさに操り人形の白い糸が絡んでしまったといったところだろう。
10本の絡み合った稲妻は、段々と薄白い球体を造りだし空中に漂うように安定した。
球体内に引力でも働いているかのように、表面の粒子が中心に向かい、写真へと変化していった。
その光景を目の当たりにした彼女は眼を見開いていた。
「すごい」と一言だけ葉を呈した。私は興味深々のその視線になんとなく気分が良くなった。
「本来なら禁止されているのですが……、この写真をお取り下さい」
「いいんですか?」
「もちろん」
二人の関係が徐々に変化する様を店主が見たら、何を言われるだろうか、考えるだけで恐ろしい。しかし……。
彼女は手を球体に伸ばした。恐る恐ると言った具合に震えるその手は、球体まで届くまで幾分の時間が掛かった。しかし、彼女の眼は恐れなど知らない子供のように真っ直ぐに球体を見つめ、今にも触れようとする決意で溢れていた。
空間には張り詰めた沈黙が流れている。段々と近付く指の先の緊張が空間を服従させているような違和感が私にも伝わった。