攻略対象者が多すぎる
この攻略対象者は、某乙女ゲームからパクりました。
すみません。
さて、次の乙女ゲーム世界に向かう前に相棒に尋ねる。
「で、今度はどういう世界?ヒロインの役割は?」
《世界の調和を保つ星神子という存在が有るんだけど、現在の星神子が代替わりするので、新しい星神子候補が二人選出されて次代の星神子を目指しながら修行と恋愛をする、という物語なんだけど》
世界の調和を保つなんて重職を担う星神子が恋愛にうつつを抜かしてていいものか?
《うん、乙女ゲームだからね》
………うん、乙女ゲームだもんね…。
《期間は二年間。攻略対象者は、調和の力を教えてくれる星守人達。と商人、占術師で、計18人》
18人とは…。多すぎない?
《イケメン18人、よりどりみどりだよ。きっと君の好みのヒーローがいるよ。あとね、このゲームには逆ハーエンドもあるよ》
18人の逆ハーって…どんな猛者だよ…… 。
いや全然ワクワクしない…。きらきらイケメン18人とか、目に優しくなさそう。
ま、とにかくその世界に馴染むためにも準備期間がいるワケで。
「ゲームが始まる一年前から転生できる?」
《できるよ》
「じゃ、お願い」
では、二つ目の乙女ゲームを始めよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
この世界は地球で例えるなら、十九世紀くらいの文明にファンタジー色が混じった感じと言えばいいか。
クラシカルな車と馬車が石畳っぽい路上を一緒に走っているとか、テレビはないけど映画館で映画は見られるとか。
動力は調和の力と調和石という謎のファンタジー臭のする設定。
星神子と星守人によって美しく穏やかに維持されている世界だが、数百年毎に星神子の代替わりがおこなわれる。
世界中から次代の星神子の候補者を探し 選ばれたのがヒロインとライバル令嬢。
いよいよゲーム開始。
今日は皆様と初顔合わせである。
「ごきげんよう。アイリス・バートレットですわ」
ちょっと気が強そうな いかにも良家の令嬢といった美少女が優雅に挨拶をした。
「メグ・アイルーンです。よろしくお願いします」
続いて私も挨拶。
そして、攻略対象者である麗しい星守人の方々も挨拶してくれた。
「光の星守、樹里杏だ。」
金髪碧眼の少し厳しさを感じさせる。
「闇の星守、黒憂堂」
黒髪黒眼のちょっと取っ付きにくそうな美丈夫だ。
「炎の星守、彪一都だ。よろしく、お嬢ちゃん達」
炎のような髪と眼を持ったナンパなお兄さん。
「水の星守、櫂流です」
薄い青い髪と紺色の眼の優しげなお兄さん。
「識の星守、景都です。よろしくお願いしますね」
茶色の髪に翠眼のおだやかな雰囲気のお兄さん。
「ハーイ。美の星守瑠羽衣よ。ヨロシクね」
金髪に赤と緑のメッシュを入れた頭に紫色の眼をした派手なお兄さん。
「風の星守、嵐史。よろしく」
こげ茶の髪に茶眼の爽やか少年。
「鉱の星守、翔矢」
ぶっきらぼうに話す、銀髪銀眼の少年。
「こんにちわ。緑の星守、聖夜。よろしくね」
蜂蜜色の髪に新緑の眼の少年。
続いて一般教養、礼儀作法の講師が自己紹介をする。
「「「こんにちわ。僕達は、語学と歴史と地理を担当している
亜凛、亜蘭、亜蓮だよ。よろしく」」」
三つ子だった。ショタ枠かな。
「気象学担当の孟理洲だ」
いかにも学者風のメガネが似合う青年。
「戦術担当の奏磨」
右頬にうっすらと傷痕がある、渋いおじ様。
「礼儀作法担当の紫苑です。よろしくね」
隙なくスーツを着こなしている品のいい青年。
これで15人。
《あとは休日に街に出かけてお店訪問すれば出会えるよ。雑貨屋の|斗織留(トオル、道具屋の零児と占術師の眞亞空》
18人はやっぱり多すぎるよ。
顔と名前を憶えるのが大変だよ。
そして声を大にして言いたい!!
何故にわざわざ漢字名?キラキラネームか?やたら画数多いし。
も、カタカナ表記でいいじゃない。
《乙女ゲームだからねぇ》
そっかぁ…って乙女ゲーム関係なくない?
ついに始まった修行と恋愛の日々。
星守人から九つの調和の力の使い方を教わり、教養の座学の授業に追われる毎日。
凄く忙しい。
街になんか行く暇ありませんよ。
《でも、攻略対象者には一度面通ししとかないと》
という相棒の言に何とか時間を作り一度だけ会って挨拶した。
後はもうひたすら修行。
休日も寮で自主学習しないと追いつけないよ。
《コレ、乙女ゲームなんだけど……》
わかってる、わかってるよ!でもそんな事してる余裕が無いんだよ。
とにかく必死に修行した。
あっという間の二年だった。
今日はいよいよ、次代の星神子の選定の日。
星守人が一人一人自身が星神子と認めた方へ、忠誠と助力を誓う。
9人の星守人全員が私を次代の星神子と認めてくれた。
「貴女は、歴代最高の星神子となられるでしょう。
我ら星守人は、貴女に限りない尊敬と忠誠を誓います。
そしてこの星の一層の発展と安寧のため我らの力をささげます」
筆頭星守人の樹里杏が、星守人の総意として忠誠を誓ってくれた。
私は、先代星神子から役目を受け継ぎ新星神子に就任した。
星神子としての仕事のため星守人の執務室を訪れると時々不在の事があった。
何処へ行っていたか尋ねたら、なんと、
「アイリス嬢とデートをしていました」
と頰をほのかに染めて言うではないですか。
「私の忠誠は、星神子へ。愛情はアイリス嬢へささげます」
と、言われた。
どうやら私が修行に明け暮れていた頃、ライバルのアイリス・バートレット嬢は着々とデートや、プレゼントで攻略対象者の好感度を上げていたらしい。
そして18人の逆ハーレムを達成していたらしい。
猛者がいた……。
その後私が調和を担った世界は、外敵からの攻撃も難なく退け、更なる発展を遂げたのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーーー反省と考察ーーー
「つ…疲れた……」
結局、私は300年間星神子を務めた。
《何やってんの…》
相棒が呆れたようにため息をついた。
《これは乙女ゲームだよ》
「みなまで言うてくれるな。わかってます」
《星を治めるシュミレーションゲームじゃないんだよ》
「はい、仰せのとおりでございます」
《星神子にはなれたけど、恋愛は一つも成就していないとか……》
「試合に勝って勝負に負けたみたいな?」
《惨敗だよ。ライバルに逆ハーエンドされちゃうなんて》
「だから、乙女ゲームは 苦手だって言ったじゃない…」
いじける私に相棒は容赦のない追撃を喰らわしてくれた。
《あっ、この乙女ゲーム世界で恋愛レベルが、下がった!もともと低かったのに》
「恋愛レベル?前回はヒロインレベルだったけど?」
《ヒロインレベルは、ストーリーへの干渉力がアップする。恋愛レベルは、恋愛エンドの成功率のアップに関わってくるんだ》
「つまり?」
《ますます、恋愛から縁遠くなるってこと!どうすんの?乙女ゲームなのに恋愛無しなんて事態になったら》
まずい。滅多に怒らない相棒がたいそうお怒りだ。
「すみません、次は真面目に恋愛にとりくみます。ホントです。がんばります。私はやれば出来る子です。たぶん……」
《………》
相棒の沈黙と眼差しが痛い。
だから、乙女ゲームは苦手なんだってば…。
「さあ、過去にいつまでもこだわっててもしょうがないし。次のゲームにいこうか?」
私は少しでも雰囲気を変えたくて明るく言ってみた。
しかし相棒からは、氷のような声で返された。
《そうだね。今回は300年もかかったしね。次のゲームに行こうか》
本当に反省してるって。
名前を考えるの苦手です。
読んでいただきありがとうございました。