ヒロインにスカウトされました
「ヒロインはノーマルエンドを目指す」を少しだけ書き直しました。
それは長い闘病の末の短い生涯を終えた時だった。
「乙女ゲームの世界でヒロインになってみない?」
さっき迄身体中を苛んでいた苦痛から スッと解放されたと思ったら、そんな声が聞こえた。
「はあ?」
と 間の抜けた返事をした私は 悪く無いと思う。
ホント、何のこっちゃ?
「乙女ゲームは、もちろんわかるよね?君も楽しくやってたし」
確かにやったことはある。
ほとんど入院生活で、病室から出られることも少なかった私に出来ることは、読書とゲーム。
だが、ひと言 言わせて欲しい。
「私、乙女ゲームは それほどハマってない。楽しくはなかった。苦手だったし」
何せ選択の答えでは『何で そっちを選ぶかなぁ』と入院仲間で、乙女ゲーム好きのアイちゃんを嘆かせ
『乙女ゲームのセンス皆無だね』とのお墨付きを戴いた。
「ま 其処は置いておいて、乙女ゲームがどんなモノかは知ってるよね。
それで最初の質問になるんだけど、君 乙女ゲームのヒロインやってくれないかな?」
「何で私が?て言うか どういうこと?」
意味がわから無い。説明求む。
「あー 最近ヒロインの成り手が減ってきちゃって…。
以前はね『やる〜、逆ハーするんだ〜』というやる気溢れる肉食系女子がけっこう居たんだけどね。
このところ、逆ハー失敗からのざまぁ系が増えてきてね。旨味が無いって、ヒロイン役敬遠されちゃって。
でもヒロインがいないと世界が動かなくなっちゃうんだよ」
「世界が動かない?」
「僕が管理を任されている世界の中では、幾つか外せない重要な場面があるんだ。その世界の今後を左右する場面がね」
「そんな、世界を左右するような重大な事が乙女ゲームに関係あるの?!」
「あるよ。その時造られた関係とか、起きた事件とか 直接的には子孫とかね。
後の事柄に影響を与えるんだ。
つまり、乙女ゲームはその世界の一場面であるけれど今後の世界の進む方向性を決める重要な場面でもあるってこと」
「それかなり責任重大じゃない。しっかり人選すべきでは?」
「いや、それはどうでもいいんだよ。世界がどうなって行くかは一つの事柄だけで決定されるわけではないしね。幾つかの出来事が合わされ決まって行くから。乙女ゲームは、その幾つかのなかの一つなんだ。
だから無くすわけにはいかない。でもヒロインがいないと始まらないんだよ。
攻略対象者が一人二人欠けても、悪役令嬢やライバル令嬢がいなくても物語に支障は無いけど、ヒロインだけは欠かせないんだ」
いや、悪役令嬢とかライバル令嬢のいない乙女ゲームは、つまんないと思うよ。
「腐ってもヒロイン、何でもいいからとにかく居てくれればそれで…。もう、ホント誰でもイイから……」
ヒロインスカウトマンは追い詰められてかなりキテいる様だが、やっと私のジト目に気づいたようだ。
「…ゲフンゲフン…というわけで、困ってるんだよ。そこでやってくれそうな子をスカウトしてるんだ。
どうだい?乙女ゲームに転生して ヒロインに成ってくれないかなぁ?」
乙女ゲームに転生か…。
ずっと寝たきり生活で ろくに学校にも通えなかった身としては 学園で青春を謳歌!も悪くないけど…。
でも、私としては 転生するなら乙女ゲームより、剣と魔法のファンタジー世界のほうが好きなのだが…。チートな能力で無双!とか。
「いいよ。ヒロインやってくれたら、ファンタジー世界に転生で無双させてあげるよ」
「えっ ホント?じゃあ、やる!!」
それから私たちは 色々条件をすり合わせて 契約を結んだのだった。
1 . 乙女ゲーム10世界でヒロインになる。
2 . R15 迄の乙女ゲームとする。
(R18になると色々ハード過ぎる。それに私17歳だしね)
3 . シナリオ通りに進めなくてもOK。エンドもどれでも可。
4 . 特別サポートキャラが付くこと。
(今説明してるスカウトマン(?)が付いてくれるとのこと)
5 . すべての乙女ゲームが終了したら、私の望む世界に転生出来ること。
6 . 転生時の設定は、チートありは当然、容姿 能力 環境も考慮。
うん。やる気出た!!
こうして、私のヒロイン稼業の日々が始まった。
読んでいただきありがとうございます。