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序、 ぷろろーぐ ~ メタ発言ばっかりだヨ! ~

「いやいや、2作目でいきなり番外編かよ!」

 突如、1行目からきょーこのツッコミで始まった。しかもツッコミがメタ発言じゃねーか!

「いやまあ、時系列的にここだし、本編にするには短すぎるからなあ」

 困ったように呟くのは、前作同様主人公であり筆者でもある、くらうでぃーれん(長いので以下くらう)だ。

 初っ端からツッコミで開始したのは、くらうと同じ部屋に住まう1人の少女、きょーこである。きょーこは机の上にあぐらをかいて座り、呆れたような視線をくらうに向けていた。

 机の上で、というのは決して、きょーこがとても行儀が悪いという意味ではない。まあ、普段良いわけではないが。

 きょーこが机の上にいなければならない理由は簡単、そうしなければくらうと普通に会話ができないから、である。

 と、いうのもこのきょーこ、男女が同じ部屋で生活しているなどといえば何か甘酸っぱい展開でも待ち受けていそうなものだが、残念なことにくらうときょーこの間にはそのような空気は全くない。理由はきょーこの見てくれである。

 腰を大幅に超えるほどに長く伸ばされた、燃えるように赤い髪は黒いリボンでざっくりとポニーテールにまとめられており、いつも同じ淡い黄緑色のパーカーにデニムのホットパンツ。鋭い目つきに口の端からのぞく犬歯は、彼女の好戦的な性格をわかりやすく示してくれているかのようだ。

 ――そして頭の上には銀色の輪っかと、そこから伸びる、ぶら下げるのに便利そうな1本の黒い紐。

 身長約3センチメートルの彼女は、どこからどう見てもストラップだった。だがしかし、きょーこはしゃべって動く。理由は不明。くらうは当然、きょーこ自身よくわかっていなさそうである。以前なぜかと尋ねたところ、「当たり前だろうが!」となぜか怒鳴られてしまった。非常に理不尽だ。

 そしてこの謎怪な物体が、前作に引き続きくらうの旅のお供の1人である。なぜくらうが旅のお供にきょーこを選んだかというと、「きょーこは知的で優しく、ナイスバディでエレガントなのでくらうはきょーこが大好きだからである」

「こらこら、何気に地の文に割り込むなよ」

 お察しのいい皆さんならもうお分かりのこと、きょーこはアホな会話の盛り上げ要員である。ちょっとといわず頭の中身は残念だが、大事な役割である。

「‥‥なんか、今どこかでバカにされたような気がするんだけど」

「気のせいだ。キニスンナ」

 きょーこは小さいくせにやたら迫力のある目でくらうを睨み、すぐにため息をついた。

「‥‥で、今回はどこに行くんだ?」

 そう、この話は旅行記である。つまりくらうたちはこれからどこか目的地に向かうわけだが。

 くらうはきょーこの質問に答えず、すっと両腕を頭の上にあげ、指先を真っすぐにのばしわずかにつま先立ちになると、突如くねくねと怪しげなステップを踏み始めた。

「う、うおお、なんだよ気持ち悪りいな。そんな躍りであたしのレベルを下げようったってそうはいかねえぞ。このパーカーはステータス低下を無効化する効果があるんだからな」

「ちげえよ。ほら、この踊り知ってるだろ」

「知ってるわけねえだろ、そんな気味の悪りい踊り」

 しかしくらうはめげることなくその踊りを続行し、有名なフレーズを口ずさみ始めた。

「踊る阿呆に見る阿呆♪」

 それを聞いてようやくきょーこも奇怪な動きの正体を悟ったらしく、ぱっと表情を輝かせた。

「あ、それならあたしも知ってるぞ!」

「同じ阿保なら踊らにゃ?」「ポン! カン!」

「あーっ! 惜しいけどだいぶ違うな!」

「ロン!」

「振り込んじゃったー! ‥‥じゃねえよ!」

 ビシィ! と踊りの手のままにくらうの鋭いツッコミが入る。

 そして、くらうときょーこは満足そうにニッ、と笑い合った。お互い、満足のいくボケツッコミの掛け合いができたからだ。

 ツッコミが入ったにも関わらず、この場にはツッコミが不在の恐怖がまちうけている。

「で、正しくは踊らにゃ孫々(そんそん)だよな」

「うーん、音はあってるけどなんか三国志みたいになったな」

 詳しくないからホントにそんなのいるのかはしらないけど。

「で、それはあれだな、阿波踊りだ」

 きょーこはすぐに軌道修正。物語としてありがたい存在である。

「その通り! 今回は阿波踊りに行こうと思う!」

 くらうは謎の怪しい踊りを再開しながら答えた。

「で、阿波踊りが始まるのは夕方からだから、どうしても1泊することになるんだよ。で、またモゲん家に泊めてもらうつもりなんだけど、日をまたぐし距離も往復150kmくらいになるから、まあ番外編程度かなー、って思って今作」

「なるほどなー。じゃあかなりの短編になるわけだ」

「そういうこと。でまあ、前回のがやたら長かったし、見かけたところでなかなか読みだしづらい人も多いだろうから、今回のは短めで区切って出来るだけ読みやすくして、くらうが書いてるのがどんな感じのお話かってのを、雰囲気だけでもわかってもらえたら嬉しいな、って魂胆」

「なるほど。今流行りのステマってやつだな」

「え、いや、けっこうダイレクトだと思うんだけど‥‥まあ、というわけで、四国一周編を読んでなくても、これから読み始めてもわかるような内容で進めていく感じだからな」

「わかった。いやー、しかし前回は夜は寒くて大変だったよなー」

「お前今わかったって言ったよな。前作ネタはNGって言ってんだろ!」

「おいおい、今のはお約束だろ?」

「そ、そうだな。そこは納得せざるを得ない」

 そういう返しを求めていたのは否定できず、くらうは言葉に詰まる。

「でも、なんでいきなり阿波踊りなんだよ」

 きょーこの質問に、くらうはふふふ、と薄気味悪い笑い声をあげた。

 ばっ、と片腕を突き出し手の平を正面へ向ける、漢と書いておとこ、みたいな勇ましいポーズ(適当)をとると、途端にくらうの服装が黒いはっぴ姿へと変貌した。アニメなどではありがちな演出だが、今ここが二次元だからこそできる芸当である。くらうは小説の主人公となることで、ついに三次元を抜けだし二次元に到達したのだ!

「ばばん! オレは祭り男だからな!」

「おお‥‥服装チェンジは一瞬なのに効果音は自分で言うんだな。で、なんだよその祭り男って。どういう性癖なんだ?」

「ちがーう! 確かにオレは幼女が大好きだが、それとこれとは全く関係ない!」

 くらうが再びババっと勇ましげなポーズをとると、はっぴがめくれたくましい肉体に巻かれたさらしの端から乳首がチラリズム。

「お祭りの時、真ん中のやぐらの上で太鼓叩いてるおっさんいるだろ」

「は? ああ、いるな。ふんどし締めて半裸で叩いてる奴な」

 急な話題転換にきょーこは一瞬戸惑うが、どうにかすぐに反応を示す。

「なんかすげえ偏見混じってるけど、まあ大体そんな感じだ。で、オレもあれやってるんだよ」

「ふんどしか!?」

「太鼓だよ!」

 くらうは再び瞬時に元の服装に戻ると、ベッドの上に腰を落ち着けた。

「地元のお祭り太鼓のグループに入っててな、毎年夏は色んな町内の盆踊りに駆り出されるんだよ。もちろん好きでやってるわけだから、それだけにとどまらず各地の色んなお祭りに行ってみたいわけですよ。実は今の時期(7月末から8月)はほぼ毎週どこかしらの祭りに行かなきゃならなくてけっこー忙しいんだけど、いい感じに阿波踊りには日程合わせられたから、頑張って行ってみようと思って」

 実のところつい先日までは祭りのため地元岡山におり、こちら香川に戻ってきたばかりである。そして阿波踊り翌日の夜には再び岡山で祭りがあるので、何気にかなりのハードスケジュールだったりする。普通ならそんななか自転車で徳島まで行ったりしないが、くらうは普通ではないので(主に頭が)自転車で行く。

「はあー、ホントに好きなんだな」

 きょーこが感心とも呆れともつかない呟きを漏らして、ひょいっと立ち上がった。

「ま、なんでもいいや。とりあえずとっとと準備しよーよ」

「そうだな。まあとりあえず、今回は1泊だけだし、道も知ってる道で険しい山道はなし。寝床も確保できてて、かなり難易度は低めだからな。そんなに気を張る必要もないさ」

「おっ、さっそくフラグを建ててきやがったな」

「まあ、普通の物語だったらこんなセリフ、間違いなくフラグなんだけど。残念ながら三次元じゃあ、ちょっと旅行したくらいじゃそうそう事件なんて起こらないんだよなー。実際今回だって道中何もなかったわけだし」

「うおお、メタ発言に加えてネタバレとか、すげえ重ね技使うじゃねえか」

「要するに、この話はたいして物語的な盛り上がりもないゆるーいお話ですよってことだよ。トイレでうんこでもしながら斜めに読み流す感じで読んでもらうのが一番ですよっていうね、読者への配慮じゃないか」

「まあな、そもそもこれ書いてるくらうが適当だもんな」

「こらこら、バラすなよ」

 文章中にもくらうの性格が顕著に表れているのは内緒。


 とまあ、そんなゆるい感じで出発の準備を始めたくらう。

 ――この旅行中にあんなことが起こるなんて、この時のくらうは予想できるはずもなかったのです。


 とか言う展開はやっぱりないです。

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