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「てめぇら!!馬鹿なのか!?前々から感じてたが馬鹿なのか!?なんで全国放送のテレビで全国のサッカー選手に下剋上しなくちゃいけないんだよ!ただでさえ、研究されてて総なめもきつかったのによ!!なんで思ってることをホイホイ言うかな!あとうるせぇぞ馬鹿丸!!」
この統一感がないホテルの大広間。
選手たちが騒いでいる中、一人説教する男はこの龍国明源学園サッカー部監督の亀戸 賢也。
サッカー部創部5年で優勝させ、10年目の今年、タイトル総なめをはたさせた敏腕監督なのだ。
日本サッカー協会指導者ライセンスのA級の他に、大学時代にドイツに留学し代表監督にもなれるという何故教師になった?という人物なのだ。
「いいかお前ら!!お前たちが優勝できたのは、お前たちが幼稚園のときから俺が教え続け、10年間以上サッカーをやってこれたからであって、自分の力だけだと思うなよ!だから、俺をもっと敬え!そして、尊敬してくれ・・・」
最後の方は、若干泣きかけていたが監督の訴えに反応する。
「いやだな〜尊敬してますよ。してますけど俺たちは、俺たちの才能が1番の力だったのが証明されただけですよ。だから、結局監督は、サポートしただけですよ。」
「ねぇ何で褒めた後、否定した〜。」
熊田の発言にガチで泣きそうになる三十代前半のおっさん。
「大田原〜酒持ってこい!!」
亀戸が自棄酒だ〜とか言いながら酒を持ってこさせる。
言われた通りにすぐに持ってきた男は、大田原 虎之介。
大田原 虎之介
12歳。身長182cm 体重69.5kg
一卵性双生児で兄。
優しい性格から頼られることが多い。
ポジションCF
「監督!ダメですよ、一気飲みは!」
「うるせぇ!」
「そうですよ、監督!明日からまた予選始まるんだから。」
全く同じ声だが彼は、虎之介の弟。
大田原 猿之助
12歳。身長182cm 体重69.5kg
虎之介の双子の弟。
スポーツが大好きでバスケ部とバレー部、陸上部を兼任し、どれもエース級。
ポジションST
「予選っていっても市大会だからね。」
「うん。でも関東大会まで繋がってるしね。」
「シードからだから大丈夫だよ。」
「そんなこと言うとると足元すくわれるで。」
虎之介、猿之助の会話に割り込んできたのは、関西弁を話す馬場 透
馬場 透
13歳 身長188cm 体重72kg
幼稚園から学園付属の幼稚園に入りサッカーを始めた。
オールバックの厳つい見た目から不良と勘違いされやすいが料理が得意。
ポジションLi
「いかんで油断は。敵が格下でも全力を尽くさないかんで。それが礼儀ってもんや。」
「でも礼儀っても皆、2度とサッカーしないって顔してるじゃん。」
「確かにな。全力が必ずしも良いとは限らない。」
「関係ないじゃん。」
透、隼人、剛の話に華丸が割り込む。
「俺たちは、サッカーを楽しんだものが勝利する。監督のその言葉を信じてここまでやってこれたんだから、これからも俺たちの『パーフェクト・フリー・フットボール』をやってこうよ!」
「・・・・」
華丸の言葉に全員が黙って聞いた。
「馬鹿丸の癖に生意気なことを・・・・」
「でも言えてるね。1番楽しんだものが勝つのは、俺らだったんだ。」
皆、口元がにやける。
そして嬉しそうにしながらホールの中央に集る。
手に持つグラスを構えた。
「俺たちは、全部に勝ったんだ。ガキの頃から負けて悔しい思いもした。プロの動きを研究もした。朝早くに起きて学校にも行かずに夜遅くまでサッカーもした。それら全て、心からサッカーが好きだったからできたんだ。まだ俺たちの野望は、終わってない。だけど、今だけはサッカー人生の一歩目を歩めた喜びとして乾杯だ!!」
剛の言葉を合図にジュースがはいったグラスをぶつけ合う。
「っふ。監督の仕事を取られちまったよ。」
大人な笑い方をした賢也だか、今回は本気で泣いていた。