×月の日々
×月○日
何かに振り起されて起きるとあの時のメスがいた。
ボーっとしていると逃げるように言われた。
周囲を見回すとそこには何かがいた。
それはデカかった。
サソリのようで『弱きもの』のようで、
何か全く別のようなものだった。
そいつの鋏か爪か何かわからない5本の刃を持っていた。
メスが逃げようというので逃げることにした。
起きたばかりでだるい。
そう思っていたがそいつが前脚を振るうと洞窟の壁が綺麗に切断されていたのですぐに目が覚めた。
奴は一体何なのだろう。
そういえばサソリの奴が『弱きもの』と交尾していたことを思い出した。
多分あれと関係があったのかもしれない。
見るからに強いので『強きもの(仮)』と呼ぶことにした。
取り敢えず逃げ出そうとした。
その時『強きもの(仮)』の尾が閃いたのが見えた。
ヤバいと感じたが一向に痛みを感じない。
振り返るとメスが僕を庇うように代わりに斬撃を受けていた。
その甲殻が大きく裂けていた。
新たにウルツァイトヴィネガロンに進化したこの身は何も護れない。
咄嗟にメスを引っ張って逃げたが奴は追ってこなかった。
逃げた先でこの日メスは動きもしなかった。
×月◎日
メスがようやく意識を取り戻した。
洞窟が気になったが今はメスを看ることにした。
一匹にして他の生き物に襲わせたのでは恩知らずもいいところだ。
×月□日
メスのエサを探しに行くついでに洞窟を見に行った。
奴はまだそこにいた。居座るつもりだろう。
『強きもの(仮)』、いや、奴は実際に強者だろう。
少なくとも僕よりかは。僕は『弱きもの』を笑えそうにない。
今のメスに庇われて奴に脅えている僕こそが『弱きもの』だ。
×月◇日
また未練がましく洞窟を見に行った。
奴が動いた。もしかすると僕達を探しているのかもしれない。
眼があった気がした。
僕はメスを連れ出して遠くへ逃げた。
×月△日
今日は逃げた。
×月▽日
今日も逃げた。だるい。
×月×日
だるい。
逃げるのもだるい。
いつまでこんなだるいことをすればいいんだろう。
…解かってる。本当は解かっている。
強ければ、強くなればそんな思いをしなくても済む。
強くなりたい、だるい思いをしなくていいよう、
世界で一番強くなりたい。
かつてのように、
かーさんに護られて、
このメスに護られて、
そうじゃない。そうじゃなく護りたい。
口先だけだるいと言っていればいいだるくもない僕の世界を。
弱い僕にはさよならだ。
×月☆日
今日は逃げなかった。
奴が追いかけてきた。
追いつかれた。
いや、
追いつかせた。
探した強さは僕の中に既にあった。
あの日一匹立ちしない僕にかーさんがくれた『力』。
七つの大罪 『怠惰』
これがまだかーさんの中にあればきっとかーさんは負けなかった。
だけど時は過去には巻き戻らない。
だからせめてかーさんの想いだけでも僕の中に巻き戻す。
護るべきものがあるから。託すものがあるから。
きっとその選択に後悔はなかった。
世界を我が手に
供物を我に
アポイタカラヴィネガロン
『ケリセラータ・ペオール』
それが、僕の名と力だ。
世界よ我にひれ伏し、自らその首を刎ねよ。
さあ、地の裂け目にその身を投げ込むがいい。
尾を高く天に振り上げて、
地の底まで割る様に叩きつけた。
大地が割れた。
裂けた大地はその口に今か今かと獲物を待ち構えている。
『強きもの(仮)』はその脚で割れ目の淵に懸け必死でしがみ付いている。
その眼には『強きもの(真)』が映っている。
僕は淵に捕まっている10本の刃の脚を一本ずつ鋏で叩き割っていった。
やはり新素材はいいものだ。
力を軽く込めれば簡単に奴の刃如きは破壊できた。
奴は残り一本の刃になった時命乞いをした。
何を言っているのかはわからなかったが何を言いたいのかは分かった。
残り一本となった刃だけは流石に残してやろうと思った。
僕はメスを呼んだ。
メスはこっちへ来るとにっこり笑ってその尾を振り下ろした。
―――――奴の刃が食い込んだ地面に。
奴は最後の刃を失うことは無かったがその命を失った。
シャイニングスコーピオンキング
色々と危ない。ハムナ●トラでレッツゴー。
神性を持ったモンスターと人のあいの子。
モンスターの頑強さと人の成長力と互いの利点だけが組み合わさっている。
温度によって色が変わる超高強度の夢の素材でできている。




