嫌いな理由
その後、俺は途中まで龍黒さんと一緒に帰った。
『いいかい時雨君、あの魔族はとてつもなく強いから。正直今の君には倒せない。だから君はあの学校で強くなるんだ。あいつを倒すためにも……』
そう、俺は弱い。いつまでもこのままではいられない。
俺は決めたんだ……奴を…ディスガロを倒すと。
家には無事着けた。だが当然俺一人だった。
海莉はあの後病院に緊急搬送された。意識は無かったが死んではいなかった。
「海莉……無事で居てくれ…………」
「…………こちら龍黒、氷魔は動きを見せない。だがいつか……我々の理想のために…………」
龍黒は謎の人物にそう連絡し、夜の闇に消えていった。
ーー翌日ーー
「おはよ……そうか…………俺一人か……」
慣れない一人での起床。いつもは海莉が早くから起きていてご飯を作っていてくれる。
とりあえず今日はどっかで飯を食おう。
今日も学校は休校。再び公園にでも行ってみよう。
だが、その前に飯だ。財布を持ち、コンビニに直行した。
コンビニのサンドイッチを二個食べ終わり公園に着くが予想通り。関係者以外立ち入り禁止という札が貼ってあった。
「ここに……ディスガロが来なければ…………」
あいつさえ現れなければ海莉は無事だった。いや、後悔しても仕方がない。
「おっ、時雨じゃん。一日ぶりー」
背後から声が聞こえた。聞き覚えのある声。振り返るとそこにはアホ毛が極めて目立つ男、錬磨が立っていた。
「昨日は派手にやったなー。まったく、誰だよこんなところで魔物と戦うやつは……」
「俺だ…………」
「え? 時雨が? ないない、ここまでは出来ない」
「本当だって。ていうかほぼ海莉とお前のお兄さんだけど」
「…………ちっ、あのクソ兄貴……」
錬磨は小さくそう呟いた……と思う。
「なんでそんなにお兄さんのこと嫌いなんだ? 」
「……………まぁいろいろあってな……」
それ以上は詮索しない方がいいと思った。
「あ、時雨にちょうど連絡があるんだ」
そう言って錬磨は一枚の紙を渡してきた。
そこには『魔法学校からの連絡』と書いてあった。
「その紙に予定とか書いてるだろ、それを時雨に届けてくれって、星条さんが昨日俺ん家に来た」
「へぇ、まぁありがとな」
そういえば星条さんは俺の家知らなかったっけ。
「でさでさ。明日んとこ見てみろよ」
ん? 明日の予定は…………
「じ…………実戦!? 」
思わず大きな声が出る。周りの人からの視線を感じたがすぐになくなった。
「そうだよ、面白そうじゃね? 」
「何がだ、つか俺らもうそれっぽいことしたよね!? 」
「まぁ気にしない気にしない、とにかくだ、早く中級魔法を使えるようにしよ」
まぁ俺は使えるのだが…………
「んじゃ、俺は帰って努力してみるわ」
そう言ってスタスタと走って行った。
しっかし時雨の奴随分余裕そうだったなー、何か秘策でも編み出してしまったか?
「久しぶり……錬磨」
その声を聞いた瞬間寒気がした。見るとそこには予想通りの人物が立っていた。
「……………兄貴……」
俺はこいつが嫌いだ。何でも俺の上を行く、勉強、魔術、それにゲームだって。
まぁ最後の一つ以外は本当に嫌だ。
「何でそんな渋い顔をする。お兄ちゃんだぞ」
「気持ち悪い。失せろ」
あともう一つ嫌いなところがある。それは…………
「まったく、口の聞き方も悪いな。仕方がない、魔術によるお説教が必要だな」
「ザッけんなよ。来んな、近寄んな!! 」
「はいはい、やめますよ。それで、何してきたんだ」
軽く冗談が過ぎるところだ。ホントにやめて欲しい。
「時雨に手紙渡してきただけだよ」
「そうかい」
はぁ…………この兄貴は本当に嫌いだ……
To be continued…
どうも、お久しぶりです。やっと暑い時期が終わりそうですね。今回はなんだか進展が全くなかったですね。
次回はいよいよ学校で実戦です。
次回の廻天世界と絶対者もよろしくお願いします。