人間ではない者
気がつくと俺は保健室のベッドの上に寝かされていた。横を見るとそこには錬磨もいた。
「君たちに来客だ……」
そう言われて入ってきたのは星条さんだった。
「あなたたち……何してるの!? 」
「とりあえず現われた魔物を……」
「ふざけないで!! 」
俺が言っている途中で遮られた。
「死人が出たらどうするの? 相手は危険レベル三の強者、負けることだって有り得たわ」
「…………星条……さん……」
錬磨が意識を取り戻したみたいだ。良かった生きてて。
「あいつはギアウルフ、スピードが……速すぎて逃げても追いつかれると思ったんです…………だからせめて足だけでも封じて…………ぐっ!! 」
「錬磨!! 」
やはり今は喋らない方がいい。傷が開いてしまう。
「ギアウルフ……そうだったの、でもなぜ単体で……」
「え? 単体で動かないんですか? 」
「ギアウルフは普段七、八匹の群れで動いているの」
そうなるとあいつははぐれてここに来たのか…………
なんか可哀想なやつだな……
「………はい、分かりました」
考えてた間に星条さんは誰かと話していたようだった。
「それじゃあ私はもう行くわね」
「ああ、ありがとうございます」
と言って星条さんは行ってしまった。しかし何も関わりが無いのになんで見舞いに来てくれたんだろう。
「また来客だ……今日はやたら来るな……」
保健室の先生がそう言って通してきたのは…………
「お兄ぢゃゃゃぁぁぁん!! 」
でた、危険な俺の妹。
「か……海莉……来たんだ……」
「当たり前でしょっ、それより大丈夫なの?」
半泣きでこちらの具合を聞いてくる。そういえば俺はどうして倒れたんだ?
「……どうやら魔法の使い過ぎね」
一瞬で海莉は冷静になった。切り替えのスイッチが早い。
魔法の使い過ぎか、そういえば火柱を二回放ったけど後は……
「もしかしてお兄ちゃん、中級魔法で武器を出した?」
「やっぱりあれは中級魔法だったのか」
「出したんだ、でもまだ完璧ではないんだね」
確かに、あれくらいで倒れるとは聞いてない。
でもどうしていきなり中級魔法を使えたんだ。
「まあいいや、お兄ちゃんゆっくりしててね」
そう言って海莉は保健室から出ていった。
「なぁ時雨……」
「錬磨、まだ喋らない方がいいぞ」
「お前がすごく羨ましいよ……なんでそんな女が来るんだ」
錬磨……頭でも打ったのか?
その日の夜、俺は家に帰ってもいいと言われたが錬磨は傷が酷すぎて一日治療するらしい。
「ただいまぁ」
「おかえりお兄ちゃん。もう大丈夫なの? 」
「あぁ、なんとかな」
「よかった。そうそう、今日はお兄ちゃんの大好きな肉じゃがにしておいたよ」
「!! 」
「ごめん……今日は食欲無いから寝るわ……」
俺はすぐに二階に上がった。
あんな食べ物二日連続で食わされたなら……考えただけでも寒気がする…………
そのまま俺はベッドで寝てしまった……
ーー翌日ーー
「お兄ちゃん、今日は学校が休みだって。昨日の事で会議とか壊れた部分を直すとかで」
「そっか」
そうだよな、魔物との戦闘でその時は気がつかなかったけど俺結構ぶっ壊してた気がする。
「ちょっと出掛けてくる」
「行ってらっしゃーい」
とは言って出掛けたものの……暇すぎるな……
錬磨は治療中だし、他にやる事は…………
「やぁ、時雨君。久しぶりだね」
「あっ、錬磨のお兄さん」
俺に声をかけてきたのは錬磨の兄の 炎崎 龍黒さんだった。
髪は錬磨と同じ赤色で錬磨と違うのはアホ毛がない事と黒縁メガネをかけている事だ。
「龍黒でいいよ、弟が世話になってるね」
「いえいえ、ところで龍黒さんは魔法学校には通わなかったんですか? 」
「ああ、その必要は無かったからね」
そう言って龍黒さんは手を前にかざすと
「黒炎銃、ブラックレクイエム」
手に漆黒の銃が現われた。長さは普通の拳銃より全然長い。
「こんな感じでもう出せたからね、まだ理由はあるが……」
「すごい!! 錬磨は出せないのに」
「錬磨か……あいつには少々教えることがあるな」
こんなお兄さんがいるの……錬磨はなんでお兄さんの話をしたがらないんだろう。
「すまない時雨君用事があったんだ。また今度会おう」
「はい、さよなら」
龍黒さんは昔からしっかりしてるな。また会えるかな……
「…………やつを知っているのか? 」
「え? 」
知らない人に話しかけられた。黒いコートを着ていてフードを深く被っていたから顔はよく見えない。
「…………まだか……」
そう言い残して立ち去っていった。一体なんだったんだろう。
その後適当にブラブラして時間を潰して家に帰った。
「結局暇だったなー」
「おかえりお兄ちゃん」
「よっす時雨」
「!! 」
あれ? 今錬磨の声が聞こえたような……
「おいおい、驚きすぎだろ」
「錬磨!? なんでここに? 俺家間違えたか? 」
いやちゃんと玄関には夜多乃という文字があった。
「落ち着けや、やっと治してもらい終わったから一応時雨に報告しとこうと寄ったんだよ」
「そうなのか……もう大丈夫なのか? 」
「んーまぁな」
「あ、そうそう、今日お前のお兄さんに会ったぞ」
そう言った途端、錬磨の顔が一気に青ざめた。
「…………あいつに何かされたか? 」
「え? いや何も……」
どうしたんだ……何かあったのかな…………
「おっ……俺もう帰るわ。じゃあな時雨」
「おう……また明日な」
なんか錬磨お兄さんの事言ったらそわそわしてたな……
あれ、そういえば海莉は何処に…………
「大変だよーーお兄ちゃん!! 」
玄関から海莉が急いで入って来た。外に居たらしい。
「どうした? 」
「すぐそこの公園に次元渦が発生したって!! 」
「次元渦………誰か帰ってきたか? 」
「いや……誰も帰って来てないみたい」
次元渦はこことは違う別の次元、つまり別の世界へワープすることができる。沢山の人がこの世界から旅立ったが帰ってきた者はいない。俺の親父も…………
「でも大変なの、次元渦から多くの魔物が発生したって」
「!! 」
魔物が次元渦から…………
「今軍隊が応戦してるんだけど数が多すぎて被害が広がるかもしれないんだって」
「そんなこと………させない!! 」
「おっ……お兄ちゃん!? 」
すぐに俺はその公園に向かった。もう錬磨みたいに人が傷ついて欲しくない。
公園に着くと見る影もなかった。
なんだ……ここ、本当にあの公園か?
「君!! 早く逃げなさい。ここは危険だ!! 」
軍隊の人が俺に声をかけてきたが気にしなかった。
奥には小規模な爆発が起こっておりそのまた奥には………
「あれが…………次元渦……」
周囲のものを呑み込みながら回転し続け違う世界へ誘う渦。間違いない、あれだ。
「ぐぁっ!! 」
すぐ近くで唸り声が聞こえた。振り返るとさっき俺に声をかけてきた軍隊の人がその場で血を流し倒れていた。
近くには魔物の姿はない。だが一つの人影が見えた。
「軍隊の人ですか?」
「いや……違うな…………俺様は……」
「伏せて!! お兄ちゃん!! 」
後ろから海莉の声がした。言われたとおりすぐに伏せると上に槍がすごい速さで通った。
海莉の放った槍だ。その槍はさっきの人影の方向に向かって飛んでいった。
「海莉! 何やってんだ。人に槍はまずいだろ!! 」
「違うよお兄ちゃん……あれは人なんかじゃない」
「そう、俺様は人間などではない」
「!! 」
月明かりに照らされていつのす姿をはっきり見れた。
人にはない長い尻尾と角が生えてそれ以外は普通の人そっくりだった。
「俺様は…………偉大なる魔族だ!! 」
To be continued…
どうも紅影 流我です。今回書いてる時……あれ? 今回、長くないか? とは思ったのです。しかし、そんな時もあるでしょう。だって人間だもの(殴)
本当すみません。今回錬磨のお兄さん、炎崎 龍黒が初登場しました。彼はこれからどんな行動をするか……いやー分かりません(笑)嘘です、大体決まってます。
長くなりましたが次回もよろしくお願いします。