97話 マムシの使者は踊り上手
天文13年(1544年夏)――13歳
伊勢の視察周りの最中、長島一向宗の顛末を聞いた信長!
「殿は本当に13歳なのでござるか!? 自分にはとても無理でござる!」と目を丸くしていたそうだ。
まあ実際、史実でも信長も大苦労したからね。
たしか織田一族の武将が次々と討たれるという、壮絶な戦になったはず。
きっと仲良くなった保正あたりが、ドヤ顔でこう言ってるはずだ。
「我が殿は、格が違いますゆえ」とかなんとか、鼻高々にね。
長島では軍官衆が要塞の強化。文官衆と黒鍬衆は桑名港と港町の建設を進めている。
俺はというと、彼らにバレないよう、至高の匠スキルを発動し、こっそり建設用の木材を山のように積み上げている。
だってね、普通にやったらムリゲーなんだよ。
山で木を切って、川や海で運んで、乾燥させて――ってやってたら、街ひとつ完成するまでに何年かかるかわかったもんじゃない。
神様、スキルありがとう!
おかげさまでニュータウン建設が爆速です。感謝してます(ホントに)。
そして今、主上へのゴマ擦り作戦を画策中。
長島から尾張方面、美濃方面にかけて、薄皮みたいな形の領地を献上する予定。
もちろん管理は北畠家がやって、税収は主上に献上するって寸法だ。
朝廷の領地ですって旗を、パタパタさせる予定だからね。
これで主上はご満悦。
顕如さんは文句をつけづらいと……。
だって、主上に向かって「そこは一向宗の土地だぞ! 返せやコ゚ラー」なんて言えるわけないからね?
フフフ、計画通り!
あれから、マムシの使者が何度もやって来る。
本当に迷惑だ。
「おいコ゚ラ! 一向宗の奴ら、何とかしろや! あいつら長島にいた奴だろ!? とっとと連れて帰れ! ボケが!」
「こっちはな、家臣が次々と勧誘されて困ってんだよ! どうしてくれるんだ? お前の仕込みだろ? ネタはバレてんだよ、このクソが!」――と、門前で大声大会。
下品だし、うるさいので、全員華麗にスルー。
しつこい奴には、門番からひと言――「この狐憑きが!」と強めのツッコミをお見舞い。
それでもなお居座るようなら、足元に向かって弾丸を一発、パスッと警告射撃。
鈍いやつには数発を連続でお見舞いする。
するとまあ、どの使者も反応が見事にテンプレ。
ぴょんっと跳ねて、「後悔するぞーっ! 覚えてろよーっ!」と叫びながら、またぴょんっと跳ねる。
見事な“ぴょんぴょん踊り”を披露して退散していく。
しかもその逃げ足たるや、まさに“脱兎のごとし”。
言葉通り、ホコリの残像しか見えない。
マムシさん、美濃から攻めて来てもいいんだけど。
主上に献上した“あの土地”を、ズカズカ踏み荒らして突っ込むだけの度胸――ありますかね?
ほら、ちゃんと朝廷の“直轄地”ですよって印の旗が、風にパタパタしてる。
いや〜、これはさすがに無理っしょ。来るなら来てもいいけど?
歓迎はするよ、もちろん全力で。
歓迎の仕方は……まあ、火薬の香り付きでね。
それにしても今回、みんな気づいたと思うんだよね。
一向宗の信者さんを動かすのに必要なのは――“御仏のお告げ”。
べつに宗主じゃなくてもいいわけ。俺でもいけちゃった。
マムシさんが本気でお困りなら、いっそ稲葉山城を“新・一向宗の聖地”にしてあげようか? ありがた〜い御仏パワー、全開でね!
信者がホイホイ集まっちゃうよ。ホイホイね。
忍びの報告によれば、大垣を信秀さんが狙っているらしい。
……って、信秀さん、本気? そんな場所に攻め込むって、正気の沙汰じゃないよ?
だって、すぐ近くには“あの”一向宗の聖地があるんだよ?
しかも最近さ〜、なぜか桑名にいた一向宗の商人たちが、ぞろぞろ大垣にお引越しをしてるらしいよ……。
(行かせたのは俺だけど……)
今じゃ信者がどんどん集まりだして、勢力も右肩上がり。
そのうち大垣も“第二の一向宗の聖地”に昇格間違いなしらしい。
そんなタイミングで戦なんて仕掛けたら、銭は減るわ、家臣たちの支持率はガタ落ちだわ、いいこと何一つないと思うけど……大丈夫? 頭……?
俺にしてみれば、斎藤家と織田家と一向宗で、延々と戦でもしてくれてたら、ありがたいことこの上なしだけどね。
信長もいただいたし、信秀さんにはいろいろとお世話になってばかり。
いやあ、本当に助かる。
さて、とうとう尾張と領地が接してしまったな。
うーん、尾張、どう料理してやろうか?
忍び調査隊の報告によれば、織田家はなんと信長を正式に廃嫡して、信行君を嫡男に据えたらしい。
……アホなのか? 信行君じゃダメだってば。絶対、後悔するからね?
でもまあ、こっちとしてはラッキー。
これで堂々と信長を正式にゲットできる。
軍師に昇格しよう。即決定〜!
もう返さんぞ。
信行なんかとトレードとか、ぜっっったいしないからな!




