96話 信者商人を一掃します
天文13年(1544年夏)――13歳
俺はいま、桑名の商人たちとガチンコ面談中。
……とはいえ、こっちは子ども。そりゃナメられるに決まってる。表に立つのは幸隆だ。俺は後ろで腕組みしながら“賢そうな顔”をキープ中。
で、目の前に並んでるのは――見事に全員、一向宗の熱心な信者さんたち。
正直めちゃくちゃ迷惑な人たちだ。
俺は桑名のど真ん中にドーンと立てたわけですよ。
「一向宗、お断り!」って超デカ看板をね。
するとどうなったかって?
「ふざけるな! こんな看板、さっさと取り外せ!」
「我々は桑名に税も払ってきた。まじめに信仰に励んできたんだぞ!」
「御仏の天罰が下るぞ。お前ら地獄行きだ!」
喚くわ、怒るわ。大騒ぎ。
お祭りじゃないのにね。
「この野郎!」とか言いながら、信者商人たちがぞろぞろと大量来店した結果が今。
まるで“抗議のデモ行進”だったな。
でもね、こっちだって困るのよ。
一向宗の商人に長居されると、あっという間に町ごと“一向宗の桑名”になっちまう。
それだけは絶対にご勘弁願いたい。
せっかく、“聖地”にお引越いただいたのにね。
そいつらに、のこのこ戻ってこられたら――これまでの苦労が水の泡……。
聖地の管理はマムシに任せたんだからね!
ほんと……迷惑以外だよな!
「俺たち商人は全員、桑名から出ていってやる……! そしたら、この街から商人が1人残らず消えるんだぞ!」
「北畠はいいのか? それで! 商人がいなけりゃ、銭なんて一文も入ってこないだぞ! 言ってる意味わかる?」
――とまあ、これが彼らの“渾身の脅し文句”。
“これで勝負ありだろ”バリのドヤ顔だ。
(さあ……困る前に……お前らが謝る番だぞ!)という顔が並んでいる。
思い込むのは自由だよ……。
でも、幸隆の返答はあくまで涼しい顔で、こうだ。
「では、どうぞご自由に。忘れ物のないようお気をつけて。お元気で」
領主に「出てけ」と言われれば、商人たちは出ていくしかないわけだ。
さて、行き先はやっぱり“聖地”だろうね?
商売人なら大垣あたりで一旗揚げようと思うだろうか。
マムシさん、血気盛んな信者商人御一行をお送り出したよ。
受け取りよろしく!
追い出された商人たちは、口々に叫ぶ。
「商人がいなくて、お前らだけで商売できると思ってるのかよ! 困るのは北畠家だぞ! 銭が入らなくても平気なのか!? 子供だから、世の中のことがわかってないんだろ」
「世の中の仕組みってやつをだな、もうちょっと勉強したほうがいいぞ! この野郎! ヘソ噛んで死んじまえ! バカ、バカ、バ~カ」
(強気で文句言ってるのは……北畠が銭に困って、そのうち泣きついてくる展開を期待しているからだろうけどな……)
あいにく、北畠家はそんなことで困ったりしないんだよねぇ。
むしろ、君たちがいなくなってスッキリする。
「銭儲けなど武士のすることではない! 金の話をするな、聞くだけで心が穢れる!」
――なんてドヤ顔でほざきながら、見事に貧乏一直線を突き進む阿呆な大名と、
北畠家を同列に語らないでいただきたい。
うちは、そんな“思考停止型の自称・高潔な勘違い殿様”とは一線を画しているのだよ。
全国展開中の“商社正直屋”は知る人ぞ知る、北畠直営の大チェーン店。まあ、実質的には俺が経営(社長)してるけどな!
笑いが止まらないくらい儲かってるのだよ! イエーイ!
最近では「当店は、商社正直屋さんに一生ついていきます! どうかウチも系列に入れてください!」なんて店が全国で続出中。
いまや、系列入りを希望する店舗の“審査待ち行列”ができていて……。
加盟希望者の対応で、皆な、てんてこまいなんだけど……。
“大商社”からの……次なる進化形は――そう、目指すは“正直屋財閥”しかない!
桑名の商いは、“商社正直屋”とその系列店に全部任せる予定。
そもそも、これから港をきっちり整備したいのに、ゴチャゴチャと無秩序に並ぶ“見栄え最悪な信者商店街”なんて、邪魔以外の何ものでもない。
まずは更地。ぜーんぶきれいに片付けてから、道路・店舗・倉庫・旅館をビシッと計画通りに建て直す!
松坂に続いて、“スーパー正直屋”も“コンビニ正直屋”も出店予定させる予定さ。
どこに何を置くか? もちろん都市計画はバッチリ。
せっかくなら、統一感のある、おしゃれでスッキリした――“港町正直屋タウン”、目指しちゃいます!




