表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/165

95話 信者の幸福、道三の苦悩

天文13年(1544年夏)――13歳


逃げ出した信者たちはパニック状態のまま、“一向宗の聖地”にたどり着いた。

そこでは、聖人気取りの領主が喜々として炊き出しを振る舞っている。

家臣たちも総出で、なぜか……皆どこか楽しげだ。


(信者を救い、御仏のお告げに応えた。やった。これで極楽行きは間違いなし!)

領主も家臣も、まるで祭りの後のようにウキウキ気分である。


信者たちも徐々に落ち着きはじめ、表情は明るさを取り戻していた。

なにせ“御仏のお告げ”に従って行動したのだから、その満足感もひとしおなのだ。


『自分たちはいつ死んでも構わない。極楽行きは確定済みだからな』――

そんな幸福な思い込みが、彼らをすっかり包み込んでいる。


“一向宗の聖地”は、信じた者すべてをハッピーにしてくれるワンダーランドとなったのだ。


ちなみに、くの一お姉さんたちはというと、任務完了と同時に華麗にドロンだ。

立つ鳥跡を濁さず。今回も見事なお仕事ぶり。おみそれしました!


さて――「家臣の領地に一向宗が集結している」との急報を受け、

マムシは稲葉山城を飛び出した。信頼できる家臣たちを引き連れ、馬を駆って一路、南へ。


(まさか……長島の連中が動いたか?)

(いや、それにしては妙だ)

(あの本願寺が後ろにいるとなれば、迂闊な対応はできん)


そんな思考が頭の中をぐるぐる回る中、道沿いの寺や村の様子にも警戒を向ける。


ようやく問題の領地にたどり着いたとき――


(……ん?)


マムシは馬上から、やけに人の集まった丘の上を見つけた。

煙が立ち上り、炊き出しが行われているらしい。

穏やかな祈りの声、喜びに満ちた表情。血の気の一つもない。


(……これは、どういう状況だ?)


馬を降り、家臣とともに慎重に近づくと――


その中心には、 “天啓を受けし聖人”のごとく悦に浸る小領主の姿があった。

(……おい……なんだ、あのキモいの……)

(……ここを任せていた奴だよな……!)


「殿! 見てください! こんなにも多くの信者を救うことができました! 我が領地は“真の一向宗の聖地”となりましたぞ!」

小領主は得意満面で、同じセリフを何度も繰り返している。


(なんで同じことを何回も……?)

(こっちに来るな……変な病気じゃないだろうな……)


道三は、後ろに一歩後退。


(ちくしょ〜。戦場で、後ろに下がったことがないのが自慢だったのに)


「……いい、もういい。こいつの城に移動する。誰か、こいつを引っ張って来い。城で事情を聞く」と顔をしかめながら命じた。


評定の間で、こいつに何度も事情を確認しているが、話がさっぱり要領を得ない。

「こいつ正気なのか? 目がおかしい。笑うな。不気味。そばに来んな!」


さっさと成敗してスッキリしたいところだが、一向宗との交渉が残っている以上、証人であるこいつは絶対殺せない。


「こいつも、こいつの家臣たちも……牢だ、牢にぶち込んでおけ」と命じる。


領主と家臣は牢に叩き込まれた。

だが、牢の中でも「御仏のために大きな仕事を成した」と満足げにしているらしい。


(とにかく、これからどうする?)


評定の間では、稲葉山城から連れてこられた家臣たちが、道三の不機嫌さに押し黙り、誰1人として顔を上げることができない。


「こんなにも多くの一向宗門徒を招き入れやがって……ふざけやがって……何が“聖地”だ!」


「いいか、信者に手を出せば本願寺と(いくさ)になる! 何もするな、絶対に手を出すなよ!」

道三の怒声が響き渡る。もはや完全な八つ当たりだった。


その後も、斎藤家と一向宗の坊主たちの間では「早く長島に帰れ」交渉が延々と続いているという。


マムシの家臣たちが「お前らな〜、もう長島に帰れ! ここに住み着くの、止めてくんないかな〜。俺たち迷惑してるんだけど……」と交渉しても、


「御仏のお告げです。お告げは絶対! 聖地! サイコー! 聖地! サイコー!」――と、信者たちはニコニコ顔で返答するだけ。


何回も交渉しているうちに「あなたは……仏を信じませんか……? 入信すれば、きっと幸せになれますよ! 極楽にいけますよ!」と笑顔で勧誘攻撃。うっかり入信してしまった家臣まで出てくる始末。


斎藤家は石山本願寺に「ゴラー、斎藤家舐めんなよ〜。お前のとこの信者が、不法占拠してんだよ! さっさとどっかに行かせろや〜」と申し入れるものの、返事なし、反応なし。


(ハァ! 無視……!? 天下の斎藤道三なめとんのか! ゴラー)と、道三はますます不機嫌モードに突入。


一方、石山本願寺は「これは道三得意の謀略だ……? 騙されるな。無視しろ、無視だ。変なのに関わるんじゃない」と関係各所に通達。


まあ、マムシさんは謀略好きで有名だからね。被害者も多いし。

信じてもらえないのも――自業自得だよ!


そんなこんなで、ただただ時間だけが過ぎていく。

いいぞ、グッドジョブ!


“聖地”になった領主の原動は、いまだに意味不明。

逃げてきた坊主たちは「御仏のお告げだ。これで極楽に行ける」と得意満面だ。


ついにはマムシを、一向宗に勧誘するツワモノまで現れる!


(ナメんなよ。このクソ坊主! 天下の斎藤道三なんだぞ! クソ)


マムシの怒りは、いよいよ爆発寸前。


***


マムシが怒りまくっている間、俺は信者がいなくなった長島砦で、大急ぎで補強工事を進めていた。


複数の河川に守られた難攻不落の砦に、さらに高い壁を築き、有刺鉄線をぐるりと巡らせた。ここにライフル隊を配置すれば、たとえ数万の軍勢に囲まれても落ちる気がしない。完璧だ!


はい、とんでもない要塞が完成。

もはや誰にも手出しはできない。


寺は――騒動の最中に燃えたということにして、スッキリと更地にしといた。


マムシさん、“一向宗の聖地”をどうするのかな?

近隣の信者さんも、聖地を目指して大挙して移動しているみたいだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ