84話 新兵器の威力
天文13年(1544年夏)――13歳
しかし――
たとえ“近距離攻撃にはライフル”、“中距離攻撃にはグレネードランチャー”、“長距離攻撃には迫撃砲”という、攻撃距離に合わせて武器ラインナップを揃えていたとしても、万全とは言い切れない。
たとえば、小型で高速な小早船が多数、ばらけて展開し、波間を縫うようにジグザグに機動しながら一斉に接舷を仕掛けてきたとしよう。
小早船から火矢や、焙烙玉を、雨のように浴びせながら、数で押し切る――そんな機敏で手強い戦術を取られた場合だ。
残念ながら、グレネードランチャーの放物線射撃では、こうした機敏な動きには追いつけない。命中精度の面でも、時間的猶予の面でも分が悪い。
そこで――
こうした高速接近戦に対抗する手段として、新たに“対戦車ライフル”の導入を決めたのだ。
この武器は、ボルトアクション式の大型ライフルである。既に通常のライフルを創造した実績もあり、構造自体は把握済み。至高の匠スキルを用いれば、製造はたやすいのだ。
この対戦車ライフルなら、当時の木造船など、まるで紙のように貫通できるはずだ。
重量はおよそ12kgとそれなりに重いが、船上での運用であれば特段の問題にはならないはず。
その性能は突出している。射程は実に3.5km――
この時代の海戦が、せいぜい500m前後の間合いで行われることを考えれば、まさに“圧倒的”というほかない。
1隻あたり20丁を配備し、名称はわかりやすく“大型ライフル”とする。戦車の説明をいちいちするのが面倒だしね。
ややオーバースペック気味ではあるが――備えあれば憂いなし、である。
……いかん。つい装備のことばかり考えてしまった。今日は志摩衆の晴れ舞台だ。今は、演習の観戦に集中せねば。
大型ライフルとグレネードランチャーの発砲音が響き渡る。
ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ!
ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!
ターゲットとなった小型のボロ船が、次々と餌食となっていく。交互に撃ち込まれた砲弾により、船体は粉々に吹き飛び、やがて泡を立てて沈んでいく。
続いて、迫撃砲が海岸の岩場を狙って発射される。
トゥーンッ! トゥーンッ! トゥーンッ!
数秒後――
ドゴォンッ! ドゴォンッ! ドゴォンッ!
岩場が激しく砕け散る。
だが、この状況でも家臣たちは誰ひとり驚かない。
爆弾クロスボウの訓練で、すっかり“爆発”には慣れてしまっているのだろう。
恐ろしいものだ、慣れというのは……。
勘助と幸隆は、「海岸沿いの城なんて、これで一撃ですな」と楽しげに話し合っている。これも慣れかな。
となると、自然と浮かんでくるのは――
榴弾を飛ばすための爆弾クロスボウを、グレネードランチャーへ全面的に切り替えるべきかどうか、という判断だ。
そもそも爆弾クロスボウは、“時代への違和感を抑える”という配慮から導入した兵器だ。だが、家臣たちがグレネードランチャーをすんなり受け入れているのなら、もはや無用かもしれない。
とはいえ、クロスボウには“矢を飛ばす”という本来の用途がある。
物音を立てずに敵兵を仕留めるには、むしろ必要な武器だ。
そう考えると、特殊部隊のような静音が求められる任務では、クロスボウの方が適しているかもしれない。
いずれにせよ、今は結論を急がず、半々で配備して実戦で評価してもらうことにする。今後の検討事項として、きちんと記録しておこう。
造船技術の進捗について、志摩衆に確認してみた。
どうやら、ヨットの改良型程度なら製造可能だが、日本丸クラスの大型船となると、まだ難しいらしい。とはいえ、日本丸のメンテナンスであれば問題なく対応できるとのことだ。
やがて演習が終わり、志摩衆が戻ってきた。
「よくぞここまで日本丸を乗りこなした。武器の扱いも見事だった。さすがは志摩の海賊衆だ。優秀だな!」
そう称えたうえで、「日本丸をさらに3隻追加する。それに合わせて、船員も増やすように」と命じた。
「ありがとうございます。若い者たちは、もう操船に夢中です。その話を聞けば、大喜び間違いなしです」
「日本丸の数はこれからも増やしていく予定だ。いずれ、他の海賊衆との海戦もあるかもしれない、海戦の陣形や戦法の考案。それに合わせた艦隊運動もしっかり訓練しておけ。弾薬の補給はいくらでもしてやる」
「操船を楽しんでいる若い者たちだが、ちゃんと俸禄は渡しているか? まさかとは思うが、いまだに海賊稼業に手を出してはいまいな?」
「とんでもございません。彼らは俸禄に満足しておりますし、その妻たちも大変喜んでおります」
「そうか……ところで、熊野の堀内はどうなった? 『臣従するか、敵になるか』の通告はしてくれたか」
「もちろんしました。熊野の連中ですが……年寄りたちは『由緒ある熊野水軍に、志摩の海賊風情が……』と、強く反発しております」
「ですが、熊野の若い連中は違います。南蛮船に乗って海外に出たいという熱意に溢れています。頑固な年寄り連中の声には耳を貸さないようです」
「間違いなく、彼らは臣従することになるでしょう。……もし、それでも逆らうのなら、ありがたく我らの“訓練用の標的”として役に立ってもらいます」
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※戦闘シーンなどのイメージ画像を、YouTubeで作成してみました。
物語の戦闘シーンを、映像と画像で楽しみください。
戦国NINJAストーリーズ 公式チャンネル
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