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【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


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77話 皇女降嫁で平井家は?

天文12年(1543年秋)――12歳


要するに――


「おめでとうございます! あなたは栄えある“朝廷専属ATM”に当選しましたよ! 良かった。良かった。お互いに!」


――って話か!?


まあ、その程度なら問題ないんだけど。

俺、銭を持ってるしな。でかい蔵が傾くほどね。

六角家との関係も考えると、案外悪くない話かもしれない。


ただ――


一度返事をしたら、もう後戻りできないってのが怖いのよ!

いや、まず事前に文とかで知らせてこいよ、このホホホおやじ!


――これは、断れない案件ってやつね。


俺は覚悟を決めて、静かに言った。

「謹んでこの話、お受けいたします」


言っちまった……

もう逃げられない。


「普光女王は7歳であらせられる。降嫁は、12歳になってからとなるであろう」


(なるほど、今すぐじゃないのか)

てことは、あと5年で“俺に公家マナー”を身につけとけってことか!?


「降嫁のためのご準備もあろうかと存じます。銭1万貫、納めいたします」

言ってやったぞ、ケチと呼ばれる俺にしては大盤振る舞い!


「渋いお主にしては思い切ったの。ホホホ……ホホホ……ホホホ……。主上も、さぞお喜びであろう。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


うわっ、今日はやけに“ホホホ”が多いな!?

なにか後ろめたいことでもあるに違いない。

“ATMに仕立てました感”、ちょっと滲んでますよ〜!?


「主上に――“降嫁の件、大変光栄でございます”とお伝えください。できましたら、姫様にはぜひ“和算”をお習いくだされば幸いです。我が嫁たちは皆、計算が得意でして、きっと楽しく交流できるかと存じます」


「面白いことをいうの! そのようにお伝えしておくぞ。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


なんか今の“ホホホ”、響きが重い……


まるで――

「ATM業、今後とも末永くよろしくね♥」

っていう念押しに聞こえるんだけど!?


……ええい、もうこうなったら、公家界最強のATMになってやろうじゃないか!

そんなの大したことないからな!


俺としては降嫁の時に、和算の大家みたいな公家が一緒に来てくれたらありがたい。

そっちの方に興味が湧く。


普光女王を“正室”とし、百合は六角家ではなく、その重臣・平井家から“側室”として迎える。良い展開!


それならば――

六角家との婚姻関係は“ほどよく薄まる”。

そして、将軍や管領との距離感も、絶妙に保てる。


そう判断して、“即答”してしまったわけだが。

間違っていないよな……?

家臣たちは、どう思っているのかな。


周囲をそっと見渡すと……

皆、頭の中に「???」が飛び交っている顔をしている。


そりゃそうだ。

さっきまで「六角との同盟どうする?」なんて話をしてたら、

急に「皇女様が正室です☆」って話が降ってきたんだからな。


今ここで無理に意見を求めても、混乱するだけだろう。

……よし、意見を聞くのは、明日にしよう。


***


この騒ぎから、数日が過ぎた。


平井のもとに、俺からの文が届く。

文を読んだ平井は、目を見開き、思わずもう一度見返した。


「……なんと……皇女様が正室に……。では、百合は側室に……」

思いもよらぬ展開に、ただただ驚くばかりだ。

だが、驚いてばかりもいられない。百合に伝えねばならない。


娘の未来を思えば、強いることはできない。

百合を部屋に呼び、夫婦で向き合って座らせた。


「百合。北畠様からの申し出だが……今度の婚姻だが、おまえは“側室”として迎えられることになりそうだ」


百合は、少し驚いたように目を瞬かせた。


「……皇女様が正室として降嫁されるゆえ、とのことだ。嫌ならば、この話は他家の娘に譲る。無理にとは言わぬ。どうする?」


一瞬、うつむいて考える百合。

だが、すぐに顔を上げて、静かに、はっきりと答えた。


「恐れ多くも皇女様が降嫁されるという神童様に、側室であろうともお仕えできるなど、女としてこの上ない誉れにございます。平井家の名を辱めぬよう、精一杯努めます」


凜としたまなざしで言い切る百合を、母がそっと抱きしめた。


「……なんと頼もしい娘になったことか。百合や、嫁ぎ先では色々と気を遣うこともあろう。だからこそ、礼儀作法や公家のしきたり、今のうちから身につけておきなさい」


「はい。母上、公家の作法をぜひ学ばせてくださいませ」


「おお、そうじゃな」

平井が頷く。


「北畠家の正室方は、皆、忍びの家の娘たちと聞く。服部、藤林、望月……いずれも武家とも公家とも縁が薄い。おまえには、屋敷の中の礼や格式を整えるという大きな役目があるぞ。誇りを持つがよい」


「……ただしな。側室として嫁ぐのだから、殿の“養女”という話はなくなる。覚悟はよいか?」


百合は小さく微笑んで、しっかりと頷いた。

「はい、父上。百合は迷ってなどいません」


――娘の背中が、少し大きく見えた。

平井と妻は、胸の奥にある寂しさをそっと飲み込み、黙って頷き合った。


(定頼様なら、先を見越して養女とするだろうが、義賢は許すまいな)

と平井は考える。


(そもそも六角家の問題はそこなのだ!)


定頼様の実力は大いに認めるが、義賢では政治的に難しい位置にある近江の国をまとめるのは難しいだろう。


(舵取りを誤れば六角家は危うくなる。それを考えると、娘を嫁入りさせて北畠家……いや、神童殿と縁ができることは、平井家にとって幸運なのではないか)と思い始めるのであった。


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