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【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


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61話 揺れる甲賀と上忍たちの決断

天文11年(1542年夏)――11歳


甲賀の寄合は定期的に開かれている。

今日はその日だ。寄合は望月出雲守の屋敷で開催されていた。


甲賀の上忍たちが集まり――

「伊賀との関係をどうするか」

「六角家との関係をどうするか」

――その二大テーマを巡って、話し合いが続けられている。


どの者も、“今回の寄合で最終的な結論を出さねばならぬ”と、心のどこかで覚悟していた。


参加者たちの顔には、険しい表情が浮かんでいる。

誰もが無言のまま、じっと座り込んでいる。


室内に漂うのは、張りつめた沈黙。

言葉が発せられぬまま、空気だけが重く沈んでいく。


現状維持を選べば、これまで通り六角家との関係は保たれる。

だが、甲賀の民の不満はくすぶったままだ。


一方で伊賀に付けば、民の支持は得られる。

だがその代償として、六角家の怒りを買い、甲賀が攻め込まれる可能性が高い――


まさに、二者択一の岐路。

誰もが、その決断の重みに息を潜めていた。


話し合いの冒頭、望月出雲守が静かに口を開いた。


「里の民の本音については、ここに集まった上忍衆も、薄々感じておろう」


「それを踏まえたうえで――“伊賀とどう向き合うのか、六角家との関係をどうするのか”。そろそろ、明確な答えを出すべき時がきた」


出雲守の声音は静かだったが、その一言一言が、場の空気に深く染み込んでいく。


「要するに――伊賀に付くのか、付かぬのか。そこを曖昧なままにしていれば、甲賀の民は自分たちの判断で伊賀へと逃れていくぞ」


「しかも、それはひとりやふたりではない。まとまった数が一気に、だ。そうなれば、甲賀の里は空っぽになる」


言葉を選ぶように間を置いてから、出雲守は続けた。


「お主たちの里でも……すでに“抜け忍”が出始めておるのではないか? 恥ずかしながら、我が里でも同じことが起きている。だからこそ、俺は今日ここで、皆の決断を聞きたいのだ」


すでに出雲守は、何人かの上忍たちと水面下で下打ち合わせを済ませている。

そのうえで、今日の寄合を迎えているのだ。


あとは、正式に採決を取り、甲賀の意思を一つにまとめる――それが、今日の寄合の目的であった。


その言葉に場が静まり返った、まさにその次の瞬間だった。

「なにを言っておるのだッ! おまえたちは、あれほどの恩義を受けた六角家を裏切る気か? 出雲守よ……正気か!」


鋭く響いた怒声の主は――三雲賢持(みくも かたもち)

顔を紅潮させ、座を睨みつけるように立ち上がっていた。


すぐに他の上忍が冷ややかに返す。

「賢持殿……それを言うなら、お主の里の忍びはどうなのだ? すでに抜け忍が出ていると聞いているが……」


さらに別の者も口を挟む。

「それに“六角家への恩義”とやら……その恩を受けておるのは、お主だけではないのか? それにだ、民の暮らしを顧みぬまま、ただ従えというのは――それこそ正気の沙汰とは思えん?」


賢持は唇を歪め、吐き捨てるように言った。

「下忍どもの気持ちなど、考える必要はなかろう。もし勝手な真似をすれば、切り捨てれば済む話だ。我が里では、逃げようとした一家を見せしめに処分したぞ!」


その言葉に、場の空気が一層張り詰める。

「他の里でも、そうすればよいのだ。下忍の気持ちなど……どうでもよい。これまで通り、六角家の威光に従っていれば、それでいいのだ」


冷徹な言葉に、数名の上忍が目を伏せ、眉をひそめた。


「……だが、甲賀の里から人が消えていくのだぞ。そのとき、里がどうなるか――想像したことはあるか? 民がいてこその我らではないか。……わかっているのか?」


別の上忍が続ける。

「この甲賀の痩せた土地で、米もろくに採れぬというのに、配下の忍びまでいなくなれば……我ら上忍は一体、何で食っていくつもりだ?」


その問いかけに、室内の空気が変わった。

黙していた上忍たちが次々に頷き、賛同の声を上げ始める。


「……確かに」


「里がなくなっては本末転倒だ」


ただひとり――三雲賢持だけが、なおも憤りをあらわにした。

「忍びとは、“主の意のままに動き、命懸けで命を果たす”もの! “主の命を果たすため、忍びの技を磨く”、それこそが我らの使命ではないのか!」


声を張り上げ、座を見回す。

「我らは今まで、そうしてきたではないか! これからも、ただそれを続けておればよい! 我らは忍びの技をどう磨くかだけを考えていれば良いのだ!」


「……上忍衆よ、どうしてしまったのだ? いつから、そんなに村の衆の顔色を窺うようになった……?」


その言葉に、幾人かの上忍が眉をひそめ、うつむいた。

空気は重く――寄合は、いよいよ決断の時を迎えつつあった。


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