表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/163

60話 甲賀忍びの不満

天文11年(1542年夏)――11歳


俺は甲賀の下忍。

この頃は、色々と悩むことばかりだ。

甲賀の里は、いつも生活が厳しい。腹はいつもペコペコ!


だけど、昔は伊賀の奴らも同じだったんだぞ。だから甲賀の民も、忍びの里の生活というのは、どこもそういうものだと諦めていたわけよ。


しかし、ある時から伊賀が急激に豊かになりやがった。


そう、伊賀に神童が現れてからだ。どうやったのか知らないが、すぐに伊賀守になりやがった。あろうことか今では伊賀と伊勢の2カ国の国主だぞ。しかも官位持ち!


なんだよ、それ!! 甲賀と伊賀……差がつきすぎじゃね!

これは俺だけの悩みじゃないぞ。甲賀の里では、皆が同じことを思っているぞ。


あ〜、興奮すると腹が減る。印を結んでも、食い物は出てこないしな。

まあ、そういうことに使うものじゃないのはわかってるよ。

だけど、ほしい、何か食べ物が出てくるような忍術……。


伊賀の忍びの顔を見ると、いつも幸せそうでな……。イキイキしているというかな。きっと食べ物も良いのだろう。顔色がすこぶる良い。

少なくとも雑草は食ってなさそうだ。


たまに知り合いの伊賀忍びと話すことがある。

聞けば聞くほど、伊賀の生活は羨ましいばかりなんだよ!


(必死で表情には出さなかったけどな)

はっきり言うけど、無茶苦茶悔しい。雑草汁なんか食えたもんじゃないだよ!


聞いた話では、こともあろうか、村の子供たちが通う学校まであるという。

しかも学校では、無料で読み書きと算術を教えてくれるというじゃないか……


おまけにだ……京を焼き出された流民たちですら、伊賀で普通に仕事にありつけ、飯にも困っていないという話だ。俺も流民になるかな。


流民だって、俺たちより良いものを食っているに違いない。それに、奴らの子供たちも学校に通っているみたいなんだよ。


どうなってるんだ……腹減った。


こんなふうに思っているのは、俺だけじゃないぞ。里の皆も、同じような話を聞いているのだよ……


これは! 紛れもなく事実なのだよ!


興奮したら腹が減った……もう話にならんわ。甲賀はどうなっているのだ。

伊賀とあまりにも差がつきすぎじゃないのか!


それにだ、六角家からの仕事は、相も変わらずクソ依頼ばかりだぞ。

命を懸けさせるくせに、はした金しか貰えない。


(くそー! くそー! くそー! やっていられるかよ)


……あれ、涙が出てきた……


神童が現れた時、俺たちは伊賀の変わり様を眺めていた。その時は羨ましいなんて思ってもいないぞ。


伊賀なんか、どうせすぐに元に戻る。貧乏に逆戻りするに決まっていると思っていたからな。

変に良い目を見た分、後が余計に地獄に感じるだけだからな。


むしろ「大丈夫か伊賀! 可哀想に!」なんてね。心配してたんだぜ。

だってな……世の中とはそういうものだろ。


(でも伊賀は地獄に堕ちない……なんでだ。おい……)


堕ちろよ! 堕ちろよ! 元の伊賀に戻ろうよ!

俺たちと同じ境遇に戻ってくれよ。

念仏のように念じ続ける。我ながら情けない。


そのうち、伊賀は北畠に目をつけられるようになる。

ああ、これで伊賀は終わりだと思った……


(は〜、勝った? 北畠を打ち破っただと?)


あれよ、あれよという間に、何がどうなったか知らんが。

当主が従五位上北畠伊勢守だと。

しかも……北畠って名門一族だって。


(ふざけるなよ! 俺はなんで伊賀に生まれなかったのだ!)

(もう考えるのも辛い……涙が止まらんぞ……)


俺たち下忍同士が集まると、いつもこの話題なんだよ。

何回も、何回も、同じことを話してる。

皆は、最後に、静かになって泣き始めるんだよ。


甲賀の民は羨ましいのだよ……


そんな時だ。

『甲賀は北畠に付かないかという誘いの使者が来ているらしい』という噂を耳にした。


(やったぜ! ついに来てくれたか! 待ってたぞ。イエ~イ!)

もちろん俺たちは喜んだ。里の民すべてが大喜びだった。


(雑草汁はもう食べなくていいんだ!)


「やった、やった」と皆でお祭り騒ぎ……。

これで甲賀も幸せになれる。幸せになれる! みんなが期待した……。


しかし、誘われた甲賀53家の上忍たちは……悔しいからか、頭がおかしいのか、何だか知らんが……。

「殺されたくなければ帰れ」と使者を追い返したという!


(この大バカタレが! バカ、バカ! 大バカ野郎! 死ねよ、お前ら!)


その話を耳にした時、力が抜けて座り込んだわ。

村の娘たちも、皆泣いとった。

何やってくれているのだよ!


甲賀の民は、六角家なんかやめて、北畠家についてほしいんだよ!

(わかるだろ! そんなこと!)


もう皆で伊賀に逃げたい。

仲の良い下忍同士が集まると、いつも同じ愚痴りが始まる。

甲賀の村では、タメ息ばかり聞こえてくる。


『今度はどこそこの里から、複数の家族が一緒になって伊賀に逃げ出した』という話が、いくつも俺の耳に入ってくるようになった。


追手を掛けるといっても、追いかけてる自分たちが逃げ出したいぐらいだ、もう適当な感じらしい……。

追い駆けるふりをして、自分も伊賀に逃げ出した家族いるんだと……。


ちなみに、伊賀に逃げ込んだ者たちは、人手不足の伊賀でさっさと仕事を見つけて、幸せに暮らしているという。


三雲のバカタレは、逃げ出した家族全員を見せしめに殺したらしい。

しかも、里の衆を全員集め、その眼の前で無惨に殺したというのだ。


俺は三雲の里に生まれなくて良かった。心底そう思う。

あいつ、おかしい。三雲家は頭がパーだ。


でもな、このままじゃ甲賀は終わるぞ!

頭の良くない俺でもわかるさ。


……甲賀の民の気持ちは、もうすでに決まっていたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ