59話 ポンコツ火縄銃
天文11年(1542年春)――11歳
養蚕もやりたいし、お茶の栽培もしたい。
したいことだらけだ!
養蚕やお茶の農家さんに向けて、“忍者リクルーター”に持たせるプレゼン資料も作らないといけないな。
オヤジたちに頼んでおけば、この任務にぴったりの忍者リクルーターを選んでくれるはずだ。もう慣れたものだろう。
それにしても、こんな危険だらけの戦国時代に、どこへでもスイスイ行けて、交渉もできて、リクルートもこなし、さらに戦闘までこなせるなんて……
本当に忍者って、万能で最高だ。
これからも、どんどん優秀な忍者を養成していってもらいたい。
伊勢国の経済発展に向けて、これからいろいろ進めていく予定だが――
その最高責任者は、真田幸隆に任せるつもりだ。
早く、うちのやり方に慣れてもらわないとな。
頭が切れる男だから、鳥屋尾満栄と協力して、なんとかしてくれるだろう。
***
──その頃、真田幸隆は胸を高鳴らせていた。
“突如として現れる船”
“南蛮貿易の話”
“聞いたこともない作物の導入計画”
そんな突飛な話が、北畠では日常のように語られている。
(なんじゃ……この家は……型破りにもほどがあるわい!)
(来たばかりの新参者にいきなり全権を任せるなんて、普通の家じゃあり得ん)
信濃の片隅で小さくやっていた頃と比べれば、今はまさに、刺激と挑戦の連続……。
殿の治めるこの国が、果たしてどこまで発展していくのか――その行方を、この目で最後まで見届けたい。
そして何より……
あの神童様と共に過ごす日々は、驚きと発見に満ちていて……本当に、毎日が心から楽しいのじゃよ。
***
嬉しい知らせが俺に届いた。
どうやら、火縄銃の製造ができるようになったらしい!
鍛冶屋たちには、祝いとして焼酎と金一封を贈った。
そして、彼らをまとめる職人には、“黒鉄十兵衛”という名を与えることにした。
とりあえず、目標は500丁だ。火縄銃を500丁、ひたすら作らせよう。
完成したら、“南蛮からの輸入品”という体にして、正直屋に販売させるつもりだ。
“500丁 × 100貫で……5万貫!“
思わず、笑いが止まらない。これはデカいいい!
もちろん、100発も撃てばポンコツになるような火縄銃を作ってもらう予定だよ。
敵に売りつけるのは、あくまで“なんちゃって火縄銃”だ。
一方で、我が軍には本物のライフル銃を用意する。
火縄銃を購入した連中には、メンテナンス費用や操作指導料なども、しっかり請求させてもらうつもりだ。いろいろ名目をつけて、バッチリ毟り取るぞ!
そのうち「火縄銃なんて、役に立たねぇよ……」と使うのを嫌がるような世論形成ができれば、もう最高だ。
我らの武器の優位性がますます高まる。
しかも、こっちは大儲け。まさに一石二鳥ってやつだぜ!
信長はまだ9歳か。まだ火縄銃を買ってくれないよな。彼は将来の上得意さん。それにしても歴史通りの奴なのか、そろそろ“忍者調査隊”に調べてもらおうか。
そういえば、昨年から冨田勢源が北畠の剣術指南をしている。
俺は、昨年のうちに“至高の匠スキル”で、銃剣やナイフをいろいろと作成しておいた。中には“ナックルガード付きナイフ”なんていう、ちょっと面白いやつも作ってある。
それらの見本を手に、俺はチーム村正にこう伝えた。
「これはあくまで見本だ。軽くて丈夫なやつを、自分たちで工夫してみてくれ」――と、例によって丸投げだ。
でも、さすがチーム村正。
見本を参考にしながら、楽しそうにオリジナルの銃剣やナイフを試作してくれている。
日本刀みたいな片刃になるのか、それとも薙刀っぽい形になるのか……。
どんな武器が出来上がるか、想像するだけでワクワクする。
そして、冨田は銃剣術やナイフ術の創意工夫にどっぷり夢中だ。
彼が生み出す新たな武術が、どこまで発展していくのか――その未来が楽しみでならない。
オヤジたちも張り切って、伊賀流ナイフ術の工夫に取り組んでいるようだ。
冨田の才能には大いに期待している。
……それにしても、改めて思う。
俺って、やっぱりいつも丸投げだな。
でもね、俺は……“とにかく種まきをたくさんする主義”なんだよ。
開発項目が多ければ、それぞれの個別案件を開発する担当者にプレッシャーが集中しないですむだろ。
開発ってのは、本来ワクワクしながらやるものであって、追い詰められてやるものじゃないのよ。だからこそ、俺はできるだけ負担を分散させたいと思ってる。
とくにこの戦国時代じゃ、下手すると「申し訳ございません! 切腹いたします!」なんてことになりかねないからね……。
いやいや、そういうのはやめてほしいわ、ホントに。




