5話 もらったのは地味なスキル×2
『しかたないわね。あなたにも治癒スキルを与えましょうかね』
『神様。“治癒スキル”と“多少の歴史知識”があっても、戦乱だらけの時代を生き抜くなんて絶対に無理ですよ』
『そもそも「未来はこうなる! 俺を信じてくれ」なんて言っても、ここは弱肉強食の戦国時代なんですよ。力なき者の言葉なんて、誰も聞きません。「この狐憑きめ!」って言われて、その場で斬られて終わりですよ』
『ではどうすれば良いのじゃ? 私はこの戦乱の世を早く終わらせたいの。そうしないと民の幸福度が下がるわね。幸福度が下がると、私の評価が下がるじゃない。それは困るわよ! 私にもいろいろ都合というものがあるわけ!』
……神様でも評価を気にするのか。やっぱりこの神様、やっぱりちょっとズレてる。いや、かなり変だ。
『それなら、火とか水とか風とか、魔法を使えるようにしてもらえませんか?』
『あいにく、この世界には魔法の概念が存在しないの。だからあなたにも使わせてあげられないわ』
『……“治癒スキル”は魔法じゃないんですか?』
『この世界には、病気回復を祈願する祈祷師がいるから問題ないわ』
(……なんだその設定処理)
でも、何か別の手があるはずだ。そう、たとえば――
『クラフトスキルみたいな、“何かを創造できるスキル”ってどうでしょう? 木材と金属を組み合わせて、とんでもないモノを作る系のやつです!』
神様が“考えてます”感を全力で放出している。顔は見えないけど、たぶん今、顎に手を当ててうーんってやってる。
『“何かを創造できるスキル”……ね。たしかにこの世に、なんでも作り出せる天才職人がいたって不思議じゃないわね。“クラフトスキル”というよりは、和のテイストで“至高の匠スキル”として与えてあげてもいいわね』
おおっ、なんかそれ……ネーミングからして格好いいぞ。
『でも、そのかわりに――あなたにはスキルを2つも授けるのだから、“戦をなくし、民を幸せにする”って約束してくれる? 絶対に約束してね。守れないならナシよ?』
うわぁ、急にきた。まさかの“強制イベント発生”。
『……神様、“戦をなくし、民を幸せにする”ことを約束します』
(ああ、言っちゃった)
でも、言うしかないだろ! こっちはスキルなしで戦国時代に放り出されでもしたら、裸でサバンナに放り出されるようなもんだ!
「神様、ひとつ確認させてください。もし歴史を変えた場合、前世の世界に影響は出ないですか?」
『ないわ。それぞれの世界は独立したパラレルワールド。だから、心配しなくて大丈夫』
『……それじゃ、がんばってね』
……って、消えるの早すぎない!?
これ以上話すと都合悪いことでもあるのか……。
本当はさ……
火や風の魔法をドーン!とぶちかまして英雄になって、“戦をなくして民を幸せにする”――
そんな派手でカッコいいサクセスストーリーがいいんだけどなあ。
でも、現実は“地味スキル” 2つだけ。
まあ、ないよりマシか。
ならもう、スキルをどう活かすか知恵を絞るしかない。
やれる方法はきっとある。
それにさ、過去の歴史知識なんて、どこまで役立つのか……それは正直、疑問だ。
「記憶している歴史の転換点に、自分の命を賭けられますか?」
そう聞かれたら、俺はたぶん「無理です」って答えると思う。
正直、“歴史の知識”もあてになるとは思ってない。
記憶してる出来事に、命を賭けられるか? そう聞かれたら――俺は「無理」って答えるだろう。
歴史ってのは偶然の積み重ねだ。
一陣の風、一言の違い、一歩の遅れ――それだけで流れは変わる。
ひとつでも動かせば、もう俺の知ってる“歴史”なんて、意味をなさなくなる。
そう思うと、気持ちはどんどん沈んでいく。
……ほんと、戦国時代転生とか、これ完全に罰ゲームじゃん!
「楓様。若様が難しいお顔をされています……ご気分でも悪いのでは?」
……まずい。母さんに心配かけるのはダメだ。
とりあえず、寝よう。赤ん坊だし、寝るのが仕事。
それにしても楓母さん、声が優しいな。なんだろう、すごく落ち着く。
……赤ちゃんになってるからかもしれないけど。




