39話 防衛戦 霧山城急襲作戦
天文9年(1540年夏)――9歳
霧山城は、農民兵600人と武将200人で守られている。それに対してオヤジたちに率いられる特殊部隊は400人。
城攻めでは通常、攻め手は3倍の兵が必要とされる。加えて霧山城は難攻不落と名高い山城だ。
本丸は急峻な山の頂部にあり、まともに攻めるなら、頂部に至る狭い山道を登りながら、途中の郭を順番に撃破する必要がある。
つまり、兵400人での攻略は常識的に不可能に近いのだ。
北畠晴具は大事な一族を守るため、霧山城に十分な兵を配置し、万全を期して出陣していたわけだ。
日没が近づく頃、オヤジたちに率いられた特殊部隊400人が林から現れる。
キビキビした動作で急峻な斜面の麓に集合していく。
昼間は林に隠れていたが、その間、隊員には目隠しをさせていたため、今は月夜の明るさが際立つ。
全員が迷彩服と迷彩色のヘルメットを着用し、顔には迷彩ペイント。少し離れれば、森の風景に溶け込み姿が見えない。
斜面を見上げると、山頂部に霧山城の本丸が見える。
「準備しろ」とオヤジたちが指示を飛ばす。
隊員たちはバックパックからピッケル2本とアイゼン2個を取り出し、ブーツに装着。滑り止めだ。
霧山城攻略を想定した訓練を山間部で何度も繰り返しているため、動きは実にスムーズ。
俺はこの作戦のため、至高の匠スキルで作成したピッケルとアイゼンを特殊部隊全員に配布しておいた。
「斜面の麓に整列せよ」との号令で、400人が整列を完了。
ピッケルを両手に持った40人が横一列に並ぶ。
先頭はオヤジたちだ。
「訓練通りだ。一気に登るぞ。登り切ったら、まず見張りを始末する。音は出すなよ」
特殊部隊が音もなく斜面をスルスルと登っていく。
霧山城本丸に至る山道の郭を順に撃破する正攻法は、死傷率が高くなると判断し、急斜面を山頂まで一気に登る奇襲作戦を採用したのだ。
特殊部隊は疲労も見せずに山頂部に到達する。厳しい訓練の賜物だ。
既に見張りはオヤジたちによって手裏剣やナイフで始末されている。
特殊部隊に集合をかける。
「伊賀の誇り高き兵たちよ! 我と藤林は200人の精鋭を率い、このまま本丸へ突入する! 北畠の一族を一人残らず討ち果たせ! 情けは無用だ!」
「服部率いる200人は、本丸への登り口を死守せよ! 一兵たりとも通すな! ここを破られれば、負ける。伊賀の未来が潰えるぞ!」
「今こそ覚悟を示せ! 我らに伊賀の命運が託されている! 北畠に再興の目を残すな! この地に、真の勝利を刻むのだ!」
百道と藤林が率いる200人が、本丸を囲う塀の側まで静かに移動した。
「塀の内側には剣術の達人たちが要所を守っている。伊賀流体術を試したい気持ちはわかるが、榴弾と拳銃で確実に始末しろ。時間を掛けるな。我々の仕事はこれだけではないのだ」
200人が塀を乗り越えていく。
本丸内の建物の要所ごとに、10名単位で武将たちが警戒を続けていた。太刀を構えるその姿はまさに強者。
だが、特殊部隊は接近戦を避け、遠くから榴弾と拳銃で一掃していく。
半刻も経たぬうちに、建物の外を守っていた武将の姿は消えていた。
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