38話 防衛戦 銃と爆弾、反撃の嵐
天文9年(1540年夏)――9歳
「ウオー! ウオー! ウオー!」
北畠軍3,000人が手柄を競うように、伊賀軍の柵の手前300mあたりまで、一斉に突進してくる。冷静に距離を確認し、勘助の合図でライフル隊800人が射撃を開始した。
ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン!
火縄銃と違いレバー操作で次弾を装填できるため、ものすごい弾幕が出現する。
バタバタと北畠の農民兵が倒れていく。
しかし、後ろから武将に刀で脅され、必死の形相でさらに敵陣200m手前まで農民兵が前進する。
ここからはライフルによる一発必中の殺しの間となる。
銃弾は北畠軍の鎧を貫き、100m以内に近づける兵は皆無なのだ。
(いよいよ始まったな)
これほどの兵を儂が指揮する日が来ようとは……まさに武士冥利に尽きるわ。
森可成は武者震いを押さえきれず、満面の気迫で郎党に檄を飛ばす。
「良いか! 無様な戦をすれば、森家の名折れぞ!」
一方の工藤家も、気迫では一歩も引かない。
「森家になど負けられるか! 今こそ工藤の底力を見せてやれ!」
昌祐が大音声で兵を鼓舞し、軍の士気を一気に高める。
工藤祐長もまた、鋭い眼差しで叫ぶ。
「命を賭ける時は――まさに今ぞ!」
ライフル隊の後方で、森家と工藤家がそれぞれ、出番は今かと、槍隊を率いて待機しているのだ。
森可成と工藤昌祐は、次々と北畠軍がライフル射撃で倒れていく様子を見つめる。
そして、敵兵の士気が低下した瞬間を見極める。
2人とも、ここが勝機だと判断する。
それぞれの槍隊に対して「今だ! 回り込むぞ!」と命じる。
右翼方面には森家、左翼方面からは工藤家が前進する。
爆弾クロスボウ隊も、北畠兵を左右から挟み込むように斜面の茂みを密かに前進を開始する。
ライフル隊の手前150mあたりまで、必死に突撃してきた北畠の農民兵。死の恐怖を感じて足が止まってしまう。
指揮する武将たちは兵を怒鳴り散らす。
それでも動かぬ農民兵に業を煮やし、前進を断念するのだった。
体制を立て直すべく後退を開始していく。
しかし、どこまで下がっても弾が届いてしまう。
農民兵たちは怯えて身を寄せ合うように固まる。
敵が密集したせいで、距離が離れても命中率は上がる。
農民兵は盾を何枚も重ね、その後ろに隠れるものの、盾は弾け飛び、すでにやる気など完全に喪失している。
それでも、武将から突撃命令が下されれば――前に出るしかない。
出なければ、味方に斬り捨てられるのだ。
農民兵たちは、盾の陰でひたすら身を縮め、震えることしかできない。
そんな中――
斜面を静かに、慎重に進んでいた爆弾クロスボウ隊が、ついに敵本陣を射程に捉える位置まで前進を完了した。
直ちに、鏃部分に榴弾を装着した200本の矢が、北畠晴具を狙って一斉に放たれた。
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
いきなり本陣が爆撃され、驚いた北畠軍本体は潰走を始めるのだ。
勘助はその状況を確認し、伊賀軍全軍に向けて追撃の太鼓を鳴らす。
ドーン! ドーン! ドーン!
ドーン! ドーン! ドーン!
さぁ、総掛かりの合図だ!
森可成は「総攻撃だ! 逃げる敵の首を狩れ!」と大声で命じる。
工藤軍も総攻撃を開始。どちらも手柄を競い合っている。
本陣が崩れれば、戦は勝敗は決する。
潰走する北畠軍を追いかける伊賀軍の槍部隊!
森部隊と工藤部隊は、既にそれぞれ3人の武将の首を上げていた。
だが、無情にも日が暮れ始める。
南伊勢の敵領地まで追撃してきたが、暗中で兵を動かすのは危険だ。
参謀・勘助は、森部隊と工藤部隊に、兵を一旦まとめ野営の準備をせよとの伝令を送る。
追撃再開は明朝未明だ。
報告によれば、北畠晴具は爆発でバラバラになっていたという。
ボロボロの首が、大将・森可行のもとへ届けられたのだった。




