34話 防衛戦の準備
天文9年(1540年春)――9歳
俺の屋敷に伊賀軍オールメンバーが集結している。これから戦評定を行うのだ。
百道丹波守三太夫、服部石見守保長、藤林長門守正保に、軍師・山本勘助、侍大将の森可行と藤堂虎高、島清国、さらに文官の村井貞勝と木下弥右衛門といった顔ぶれ。
(まだ武将も文官も少ないよな……)
優秀な武将たちには、優秀な郎党が付いている。武将と郎党で何とか軍を回していってくれ。
「勘助! 戦評定の進行役を頼むぞ」
「は! では、話を進めさせていただきます」
勘助の説明が始まった――
「まず、北畠の戦力にございます。北畠は20万石領地を有し、石高より推し量るに、最大動員可能な兵数は5,000人程度と見込まれまする」
「兵の大半は農民兵にて構成されておりますが、武将らの剣・槍の練度が高きこと――これこそが北畠軍の特徴と申せましょう。いざ乱戦となれば、その剣槍の腕前が、戦局を左右するやもしれませぬ」
「当主は北畠晴具、嫡男は北畠具教。本拠地は霧山城。主な武将としては、田丸直政、鳥屋尾満栄、吉田兼房、家城之清、波瀬具祐。一門衆は木造具康、大河内教通、岩内光安、坂内具義」
「さらに、長野家ならびに関家は、伊賀攻めの利にあずかろうと目論んでおりましょう。必ずや参陣してくるものと見て間違いありませぬ」
「北畠の推定される侵攻兵力は、最大動員兵力の六割、すなわち3,000人と見ております。また、長野家および関家の兵は、おおよそ1,000人ほどと推測されまする。合わせて4,000人といったところにございましょう」
「これに対し、伊賀方の戦力は、常備兵5,000人のうち、防衛のため1,000人を伊賀国内に残す必要がございますゆえ、出撃可能な兵力は4,000人となりまする」
「これに加え、“忍者調査隊”、“忍者速達便”が100人、そして特殊部隊400人が加勢いたしますれば、総勢4,500人の軍勢となりまする」
「細かな内訳は――
●対北畠:計3,000人
大将:森可行
副将:工藤昌祐、工藤祐長
参謀:山本勘助
兵構成:槍隊2000人、爆弾クロスボウ隊200人、ライフル隊800人
●対長野・関家:計1,000人
大将:藤堂虎高
副将:島清国
兵構成:槍隊700人、爆弾クロスボウ隊100人、ライフル隊200人
●特殊部隊:400人
隊長:百道丹波守、服部石見守、藤林長門守
装備:リボルバー拳銃300丁、爆弾クロスボウ100個
●忍び衆:100人
“忍者調査隊”
“忍者速達便”
――以上となります」
(日の本の戦で、最初に銃を活用したのは俺になるな!)
それにしても――
オヤジたちが張り切りすぎて仕上げた“精鋭忍者特殊部隊”、あれはもうバケモン級。
武器も装備もド派手で隙なし。あんなのに攻められたら、どんな名城でも秒で陥落コースかな。
ライフルに拳銃、榴弾――その使い方は、侍大将たちが、ガチで兵を鍛え抜いた。
中でもライフルはかなりの仕上がりで、150m以内なら外さない。百発百中らしい。もはやスナイパーレベルだ。
とはいえ、集団戦で重要なのは精密な狙撃ではなく、“圧”としての弾幕射撃だ。
敵の姿がクリアに見え始める200〜300m――その間合いで一斉射撃を叩き込めば、威力も威圧感も段違い。
この距離は敵にとっても引き際を失わせる、絶妙な圧力ゾーンだ。
俺はオヤジに「忍者は優秀だから、これからもどんどん養成して増やしてほしい」と伝えている。
するとオヤジは「誰でも忍者になれるわけじゃないのだぞ!」と自慢げに言っていた。(まさに……そうなのだよ……)
忍者は適性のある者でないとダメ。
養成にも時間がかかる。それが唯一の欠点なのだ。




