23話 領地と嫁と城を任される
天文7年(1538年冬)――7歳
細川のバカ管領があっちこっちで戦を始めるもんだから、こちらはありがたく、風説を流して米を買い占め、タイミングよく転売して――はい、伊賀、またも大儲け!
しかし、無駄な戦の繰り返しで、京の都とその周辺の人たちは傷つき、焼け出されるのだ。
焼け出された人たちが、着のみ着のままボロボロとなり、伊賀を目指してとぼとぼ歩いて来る。
なぜ皆、伊賀を目指してやって来るのかというと――
「なんだか最近、伊賀って国がいけてるらしい! 飯が食えて、しかも学校まであるんだと!」
という、ありがた迷惑な噂が流れているからだ。
噂の発信源は、行商のおっちゃんたち。
物を売るついでに、口まで滑らせやがって……無責任にもほどがあるぜ!
だが、焼け出された人たちは、その噂にすがってボロボロの姿で伊賀を目指してくる。顔はすすけ、服は破れ、だけど目だけは真っ直ぐ前を見てる。
……困る。本当に困る……。
今はまだ、ヤクザ大名たちに目をつけられたくないんだよ。
しかし――
「おっ、なんか伊賀って儲かってだってな? 余ってんなら、少し恵んでくんねえ?いや面倒だ、全部よこせや!」
みたいなノリでこられたら、マジで詰むぞ。
だからお願いだから――
もうちょっとだけ、伊賀を“地味な貧乏国”だと思っててくれ。頼むから!
しかし伊賀に救いの光を求めてボロボロになって歩く人たちに、「来んな!」とは言えないんだよな。
というわけで、伊賀は人口激増中。
人は増えるし、商売は忙しいし、人が増えれば揉め事や利害調整が増える。
伊賀は内政が、クッソ忙しくなってきたわけ。
オヤジ、保長、正保のオジサンズは、内政なんか全く理解してないし、興味もない。
でもやってもらっているよ。伊賀はこの人たちが治めてきたんだしね。責任あるでしょ!
3人とも「毎日、毎日! なんでこんなに忙しい! 疲れた! 草臥れた!」と溜息混じりで愚痴りあっている。
やっぱ3人は仲が良いな。
その後は決まって「地獄から解放されたのは中忍と下忍だけだぞ。上忍の俺たちは地獄から解放されてない〜」と叫んでいるらしい。
ある日、いきなり俺は3人に呼び出される。
何事かと思っていたら、「後は三蔵に全部任せたわ。頼むぞ!」とか言ってきやがった。何が「任せた」だよ。
責任放棄だぞ、オジサンズ!
まあ、この3人が領地経営なんかに興味がないことは、薄々わかっていたけどな。
「その代わりだな。俺たちの娘を嫁にしろ。わかったな! 頼んだぞ!」
何が「その代わり」だよ! 7歳児に領地経営を丸投げする気か! しかも嫁も持てと!?
(責任放棄だぞ!)
……結局、押しに負けた。
服部家からは桔梗ちゃん(4歳)、藤林家からは桜ちゃん(4歳)――
はい、ふたりそろって、俺の嫁になることになりました。
……いや、嫁って言っても、まだほとんど赤ちゃんみたいなもんですよ?
まあ俺も似たようなもんだけどさ。
とりあえず「ご挨拶」ってことで、会いに行ってみたんだけど――
頭を撫でたら「きゃは〜」と笑ってくれた。かわいい。
よだれ出てなかったのは、ちょっと感心。
(ん〜……俺の嫁? まだ早すぎじゃね)
(結婚って、もっとこう……なんか……ドキドキ感とか、あるんじゃないの?)
彼女たちは実家で花嫁修行するらしい。
まだいいから遊んでいてください。今度オモチャも作ってあげるからね。
ところで……
お金もあるし、そろそろ城作ろうかな?
戦国時代は力の象徴、城が必要なのだよ。
城をどこにしようかとオヤジたちと話し合ったところ、伊賀街道と大和街道が交差する上野地方に作ることになった。
城の周りには商業地区とか作ろっと!
しかし俺1人で領地経営と城建設と街作りは、いくらなんでも無理だよな。
優秀な人材のリクルートが必要! しかも大至急だ……
起業がうまくいった若手社長なんか、同じこと考えるのだろうな。
とにかく、前世の知識を活かしたピンポイントリクルートだな。
それにね。そろそろ近隣のヤクザ大名から攻め込まれそうなのだよ。
「いったいどうなった伊賀の国! 飯が食えるし、学校もあるってよ!」とか、行商人がいらない噂を流しやがったせいだぞ!
今やその噂にいろいろな尾ひれがついて、“金持ち”が“大金持ち”に変わっているらしい。まあ伊賀は大金持ちで間違いはない。間違えてはいないよ。
俺を支えてくれそうな優秀な人!
思い出せ俺! 前世の記憶!
この時代の優秀な人材は誰だ?
思い出した端からスカウトしてやる!
でも少し不安もあるのだよ。
だって俺は、信長とは違って英雄でもないし、いわば普通の人なわけよ。
前世で社長をやっていた経験もなし!
もちろん管理職もないよ!
(この時代のスーパー優秀人材が、俺なんかの言うことを聞いてくれるだろうか?)悩むよな。でも一流人材がほしい。




