16話 鍛冶屋チーム
天文6年(1537年 初夏)――6歳
“伊賀の神童”とか“神の加護を持つ子供”とか……。
最近、俺にまつわる妙な噂が独り歩きしている。
秘密にしておくはずだったのに、どうやら親バカなオヤジが、宴会の席で自慢しまくっているらしい。
そういうの、やめてほしいんだけどな……。俺が目立つじゃないか。
ここは戦国時代なんだよ?
現代と違って、“法律”なんてないんだよ。
力さえあれば、理不尽と無法が堂々とまかり通る時代なのだ!
だから、変に目立つのは危険すぎる。
「なんか面白い小僧がいるそうだな!」
なんて目をつけられたら――
もうアウトだ。
目をつけた大名あたりは、平然とこう言ってくる――
「お前の子供だけどな……ちょっと貸せや。いいって言うまで、こっちで働いてもらうぞ? 飯は食わせる。安心しろ。死ぬまで生きてるからな」
……いや、冗談じゃなくて、マジでこれが通るのが戦国時代!
人権? そんなもんあるかい!
力こそが正義! 強い者の言うことには、誰も逆らえない!
ほんと、戦国時代って――
怖すぎるんだよ……!
最近のオヤジは、銭儲けがうまくいって舞い上がってる。
何でもできる気でいる。
頼むから、俺が「いいよ」って言うまでは大人しくしてくれ!
こういう、悪い時期を脱してちょっと余裕が出てきたタイミングってね……一番危ないんだよ。油断大敵ってやつ。
たしか言葉があったよな――緊褌一番。
ふんどしの紐を締め直せ、って意味だぞ。
さて、そんな中――
オヤジが集めてくれた鍛冶職人たちが、ついに伊賀へやって来てくれた!
彼らは、俺のことを「神の加護を持つ神童」っていう噂を、どうやら本気で信じているらしい。
「“神の加護を持つ神童様”はどちらに?」とか聞いてくるんだけど……俺、そういうの困るんだよ……危険なんだよ!
とは言うものの、職人たちは一族郎党ごっそり来てくれた。総勢30人だ。
嬉しいような、怖いような……でもありがたい。
さっそく鍛冶場と住居の建設に取りかからせた。
この鍛冶屋チームには、まず火縄銃の模造品製作で腕を磨いてもらう予定だ。
複雑な部品に関しては、俺の“至高の匠スキル”で創造して手渡せる。
銃が製作できるまで、そんな時間はかからないはずだ。
火縄銃の量産体制が整ったら、いずれは他国にも売る予定。
ただし、ちょっとした“工夫”は施しておくつもり。
――たとえば、「100発撃てばガタが来る」仕様にするとかね。
買った大名に文句を言われても、こう言えばいい。
「それは手入れが悪いせいですなあ」
敵になるかもしれない連中に、わざわざ本気の武器を渡すなんて――そんな義理なんか、どこかに捨てちまえ。
(あれ? 俺もヤクザがうつってる?)
とにかく欠陥品を高値で売りつけて、銭をしっかり巻き上げておけばいいのだよ。
これが戦国流のビジネスってやつさ!
銭を儲けて、銃の評判を下げる。一石二鳥だ。
ちなみにこの時代、戦での主力武器といえば、まだ槍と刀――とくに槍がメインらしい。
そこで、「槍や刀を作れる腕のいい職人はいないか」と聞いてみたところ、伊勢に凄腕の鍛冶一族がいるという話を聞いた。
その名も――なんと村正一族。来た〜! 村正〜っ!
気分が良くなった俺は、さっそくこう伝えてくれと頼んだ。
「家も用意するし、給金も弾む! ぜひ伊賀に来てほしい!」
「そんなこと言ったら、一族総出で来るかもしれませんよ。大丈夫ですか?」
「全部伊賀で面倒見る。心配ご無用!」と答えておいた。
槍と刀は、やっぱり品質が命。村正ブランドなら文句なしだ。
「明日にも話をしに行ってきます」
「期待しているぞ」と返した。
……村正一族が来てくれたら、いずれ“蜻蛉切”みたいな名槍も作ってもらえるかもしれないな。
忠勝の愛槍――俺も欲しいなあ、蜻蛉切!




