154話 今川館、壊滅
天文15年(1546年秋)――15歳
今川は俺が片付ける。
今から、日本丸52隻を率いて尾張の港から出航し、海沿いの城を次々とぶっ壊しながら東へ進軍することになる。
義元もさぞかし頭にくること間違いなし。
最初の標的は、引間城。
後に浜松城の一部となる城である。
馬込川の流れが見える沖合に、日本丸を停泊させ──夜を待つ。
月光が海面を照らす中、短艇を10隻下ろす。
引間城チームは5隻編成。
各艇には迫撃砲2門と、特殊部隊1名、海兵10名が乗船している。
迫撃砲は計10門だ。
掛川城チームも短艇5隻編成だ。
こちらは各艇に、特殊部隊10名と海兵10名を乗せる。
特殊部隊1人につきグレネードランチャー1丁を携帯しており、総数は50丁となる。
引間城チームは、短艇で馬込川を遡上。
引間城から約2kmの地点で停船し、静かに上陸する。
特殊部隊5名が偵察に出発。
その間に、残る海兵50名が迫撃砲を地面に設置し、夜明けを待つ。
空が白み始めた頃──
測距儀で城との距離を正確に測定し、砲撃準備を整える。
合図と同時に、迫撃砲が火を噴く。
トゥーンッ! トゥーンッ! トゥーンッ!
ドゴォンッ! ドゴォンッ! ドゴォンッ!
砲弾が次々と引間城に着弾し、建物を粉砕していく。
敵の反応はない。すでに動ける者はいないのだろう。
砲弾を撃ち尽くすと、全員がその場で待機。
やがて、偵察に出ていた特殊部隊が戻る。
任務成功の報告。
引間城はすでに廃墟と化したという。
迫撃砲を迅速に分解・収納し、全員で短艇に乗り込み、再び日本丸へと帰還する。
***
一方、掛川城チーム。
上陸した特殊部隊50名は、すばやく装備を再確認。
静かに掛川城へ向けて駆け出す。
残された海兵50名は、手際よく短艇を回収し、すぐに沖合の日本丸へ戻っていく。
特殊部隊は、掛川城近くの山間部へ移動し、そこで夜まで待機だ。
夜になると、月明かりを頼りに、ゆっくりと掛川城へ接近する。
今回は、いつもの爆弾クロスボウではなく、グレネードランチャーを使用した破壊作戦を実行する予定だ。
掛川城は、小高い山の上に築かれた小規模な城だ。
グレネード弾の射程は最大で400mあるため、本丸のすぐ近くまで接近する必要はない。50名は斜面の中腹まで登り、そこから一斉に本丸を狙って攻撃を開始する。
──グレネード弾、50発。
炸裂音とともに、夜の闇に火花が舞い、本丸へと襲いかかる。
ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!
ボンッ! ボンッ! ボンッ!
任務は“完全な破壊”ではなく“威圧と撹乱”だ。
少しでも本丸に損害を与えられれば十分と、あらかじめ伝えてある。
攻撃直後、特殊部隊は迷うことなくその場を離脱。
すぐに斜面を駆け下り、大井川の東岸──島田の町を目指して全力で走る。
***
日本丸は短艇を回収後、東へ向けて航行を開始。
大井川を過ぎたあたりで、海岸に近づいて停泊する。
日本丸から短艇を往復させて、大井川東岸に兵9,000人近くを上陸させる。時間はかかるが慎重に進める。
伊賀特殊部隊600人を乗せた日本丸数隻は、駿河・今川館に近い沖合まで静かに航行。その後、短艇を海へ降ろし、伊賀特殊部隊が夜陰に紛れて上陸する。
上陸後、部隊600人は今川館に向けて素早く移動。
日没までは周囲の地形を利用して完全に身を隠し、夜の帳が下りるのを待って、クロスボウから発射する榴弾による攻撃で館への制圧作戦を開始した。
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
ズドーン! ズドーン! ズドーン!
館の要所にいた警備の兵や武将たちは、榴弾による爆裂と、拳銃により次々と撃破。
戦慄する暇も与えず、伊賀特殊部隊はそのまま館内へ突入──今川一族の隠れ場所を次々と制圧し、全ての者を始末していく。
ただし、寿桂尼だけは例外である。
彼女の命は、瑞渓院の強い願いを受けて、救うことがあらかじめ決められていた。
寿桂尼自身が「我が命と引き換えでも、氏真の命を助けてほしい」と必死に懇願したため、嫡男・今川氏真とともに、小田原城への護送されることになる。
──それにしても、特殊部隊の攻撃力は、もはや別次元に達している。
忍者の中から選抜された精鋭が、近代兵装を身につけ、過酷な訓練を重ねてきた成果が、ここにある。
彼らは戦闘のたびに経験値を積み、さらに動きに磨きがかかってきた。
その戦闘行動には、一切の無駄も、隙もない。
正直に言って、この“とんでもない部隊”を防ぐには──
今川館に、完全武装の兵を3,000人以上配備していなければならなかっただろう。
それでも防げるかどうか……?
本当に……恐ろしい軍隊に育ってきた。




