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【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


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152/248

152話 誘い込まれる連合軍

天文15年(1546年秋)――15歳


北条軍が、小田原城に向けて──“わざと”負けながら撤退してきた。


勝たせてやりながら引く。

敵に「いける」と思わせ、油断を誘う。

それは、ただの撤退ではない。”命を懸けた誘導戦“だ。


槍で身体を支え、血と汗にまみれながら後退する兵たち。

その姿は、遠目にも痛々しいほどに疲弊していた。

息を切らせ、時に転び、それでも立ち上がって、敵を引きつけ続けている。


敵は、ただの連合軍ではない。

“軍神”と称される長尾景虎を中心とした、錚々たる5万の大軍。


この撤退戦を指揮している武将の胸中は、想像を絶するはずだ。

一手誤れば、全軍が飲み込まれる。


小田原城は、もうすぐそこだ。

どうか、あと少し……あと少し、持ちこたえてくれ──!


特に、これまで目立った武功を立てられなかった、上野や武蔵の中小大名たちは色めき立つ――


「今こそ手柄を立てる絶好の機会!」

「この流れに乗らねば損だ!」

「ぜび攻め手に加えてくだされ!」


――憲政に競うように懇願し始める。


憲政は「景虎と相談し、どこかに入れてもらえ」と適当に返答する。

当然、攻め手の勢いは増し、連合軍の規模も士気もさらに膨れ上がっていく。


──これこそが、我らの狙い通りの展開だ。

敵の奢りを誘い、油断を深く植えつけるのが目的だからだ。


しかしそれと引き換えに、北条軍の消耗は限界に達しつつある。

盾となって矢を受け、囮となって走り続ける。

傷を負ったまま足を引きずる兵も少なくない。


もはや仲間の肩を借りねば歩けない者も多い。倒れ込む者も出始めている。

それでも彼らは、小田原城に向かって必死に歩を進める。


(あと少し。あとほんのわずか! 奴らを死地に引きずり込んでやる)


小田原城の城壁から、彼らの姿を見守る武将たちの目には、熱いものがにじんでいた。握りしめた手のひらから血が滲む。


「頑張れ……もうすぐだ……」

心の中で叫ぶその想いが、痛む足を引きずる北条軍の背を力強く押していた。


(連合軍のやつら……いい気になりやがって。絶対、ここから生かしては帰さん)


城内の全員の思いが、怒りと誓いに染まり、ひとつにまとまっていく。

──そしてついに、限界寸前の北条兵たちが、小田原城へと帰還してきた。


よろよろとたどり着いた兵たちが、崩れるようにして城門の外側へ倒れ込む。

「開けろ! 早く開けるんだ! 早く中に入れてやれ!」


門兵の叫びとともに、城門が半開となる。

囮になって傷だらけになった兵たちが城中へ倒れ込む。

耐えてきた全身の痛みと疲労が一気に噴き出す。


すぐさま城内の兵たちが駆け寄る。

重傷者は戸板に乗せて運ばれ、動けぬ者には肩が貸される。


「しっかりしろ! もう安全だ!」

「今すぐ救護所へ! 急げ!」


誰もが、命懸けの撤退戦を成し遂げた兵たちを労い、誇りに思っていた。


「よくやったぞ! よく頑張ったな……!」

氏康さんが、声を振り絞って、ひとりひとりに声をかけて回る。


「殿……おれたち、ちゃんと……奴らを逃さず……連れてきましたぞ……」

倒れ込みながら、泣き笑いでそう告げる兵の顔には、血と汗と、そして何よりも安堵が滲んでいた。


──任務は果たされた。北条軍の退却は完了した。


今、敵は目前に迫ってきた。

いよいよ逆襲の時が迫っているのだ。


北条軍が命からがら小田原城へ逃げ込む――

そのみじめな姿を目にした連合軍の大名たちは、ますます油断しきっていた。


そして、誰もがこう思ったのだ。


『なんだ、北条とはこの程度か。拍子抜けだな』

『これで難攻不落? 笑わせるな。ひと押しすれば陥ちるぞ、小田原城なんて!』

『城内の宝は早い者勝ちだ。先に突っ込んだ者が得をするぞ!』


そんな思惑が渦を巻き、欲の臭いが戦場を支配する。

連合軍の兵たちは、少しでも良い場所を確保しようと、我先にと小田原城を取り囲みはじめた――


連合軍の大名たちは、もはや(いくさ)ではなく、その後の恩賞のことばかりを考えていた。


本丸には莫大な宝が眠っている――

そう信じて疑わぬ将も兵も、目をギラつかせていた。

まるで勝利が約束されたかのように、誰もが浮き足立っている。


合図ひとつあれば、我先にと城壁に殺到するだろう。

すでに全軍の意識は、小田原城一点に集中していた。


……そんな中、ただ一人、長尾景虎だけが異変を感じ取っていた。


『妙だ……こんな時こそ、何かある』


心の奥底に、ひやりとした違和感が走る――

それは、経験でも理屈でもない。

まさに“軍神”と呼ばれる男だけが持つ、第六感だった。


だが、上杉憲政に何度も進言するものの、景虎自身もなぜ危険なのかを具体的に説明できず、憲政にはまったく受け入れられなかった。


ついには、「そんなに怖いなら、長尾家だけが尻尾を巻いて越後に帰ればよいではないか」とまでバカにされる始末。連合軍内でも「(いくさ)の天才が呆れるわ。ただの臆病者じゃないか」と景虎を侮る声が出始めていた。


今まで景虎のカリスマ性でまとまっていた連合軍が、ここにきてバラバラになり始めている。


長尾軍の中でさえ……

「景虎殿はどうしたのだ? 小田原まで来て臆病になるとは」と侮る声が増えていく。景虎の持つカリスマが、長尾軍内部でさえ低下していく。


(いろいろ情報を引っ掻き回しているのは、“忍者撹乱隊”だけどね)


その鎖の先を握っているのは、真田幸隆という策士だ。


──もし、長尾軍が単独行動できる立場にあれば、景虎はとっくにこの戦場からの離脱を決断していたはずだ。


自らの直感を信じ、全軍を再編成し直して、反撃の好機を伺ったことだろう。

しかし、今の景虎には、それができない。


連合軍の一角という立場、無能な盟主・憲政、欲と功名心しかない凡人(諸大名)たち――無能なリーダーと凡人部下が、天才・景虎の才能と自由を縛りつける。


もはや彼に残された選択肢はただ1つ。

小田原城の攻略に、全力を注ぐことだけだった。


──それこそが、策士・幸隆の狙いなのだ。


(よっしゃ、ここが勝負どころだ!)


状況を見極めた幸隆が、ついに九鬼定隆に攻撃命令を下す。

定隆は、まだ夜が明けきらぬうちに、沖合に停泊させていた日本丸を、海岸線近くまで移動させる。


(これで準備は整った)


幸隆は光によるモールス信号を日本丸に送った。

『夜明けとともに殲滅を開始せよ!』


さあ──攻撃を始めよう。派手にいこう。


******************************************************************************

※戦闘シーンなどのイメージ画像を、YouTubeで作成してみました。

物語の戦闘シーンを、映像と画像で楽しみください。


戦国NINJAストーリーズ 公式チャンネル

https://www.youtube.com/watch?v=DxXVoBCfWGI&t=5s

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