150話 軍神迫る、嵐の前の評定
天文15年(1546年 秋)――15歳
臨時の船便で、武田・今川・長尾・斎藤・上杉による“五ヶ国同盟”との戦が近いとの報が届いた。
俺は蝦夷国から兵を率いて、急ぎ大島へと向かう。
大島に集結している陣容は、日本丸50隻に兵が5,000人。
その内訳は、ライフル隊が2,000人、槍隊が2,500人、爆弾クロスボウ隊が500人。
そしてオヤジたち3人が指揮する伊賀特殊部隊が600人だ。
地方の忍者から選抜・訓練された新兵も200名が加わり、伊賀特殊部隊の戦力は着実に増している。
さらに今回の大戦には、伊勢・霧山城で猛訓練を終えた甲賀特殊部隊400人と、風魔特殊部隊400人も参戦予定だ。
特殊部隊の層もだいぶ厚くなってきたな。
霧山城での訓練統括は道順に任せている。
道順はライフワークにしたいようだ。
軍の布陣は以下のとおりだ。
参謀は真田幸隆、大将は森可成、侍大将に工藤祐長。
そして小姓として、嶋清興・木下秀長・真田信綱の三人を同行させる。彼らには今回の戦で、実戦経験を体験させるのが目的だ。
俺の護衛は、冨田勢源と藤林正保。
実力においても信頼においても申し分ない。
一方、蝦夷国の守備は平井定武親子と、藤吉郎から改名した木下秀吉に任せている。
兵は2,000人、新たに創造した日本丸10隻も加わっており、防衛力としては十分だろう。
また、六角家への対応として、藤堂虎高と工藤昌祐には先行して伊賀へ向かってもらっている。
なお、大島には、すでに至高の匠スキルで兵舎を建ててある。
日本丸が接岸できるように桟橋も整備済みだ。
港にも沖合にも、日本丸がずらりと並ぶ様子は、なかなか壮観である。
***
俺はいま真田幸隆とともに、小田原城の評定の間にいる。
忍者調査隊の報告によれば──
秋の収穫が終わり次第、上杉憲政を盟主とする上杉家と長尾家、そして反北条の諸大名たちが率いる、総勢5万の大連合軍が動き出すのは間違いないという。
氏康さんと長綱さんは、この5万の連合軍が、“俺の仕掛けた策”によるものだと知っている。だが、家臣たちにはそのことを伏せてある。
というのも──
この策が連合軍側に露見した場合、“軍神”がとんでもない奇策を仕掛け返してくる可能性があるからだ。
そうなれば、状況は一気にひっくり返る。危険極まりない。
俺としては、軍神の能力を発揮されるような展開は、絶対に避けたい。
なお、家臣の中では唯一、氏親とともに別行動をする予定の“地黄八幡”こと北条綱成だけには、策の全貌を知らせてある。
北条家の武将たちは、「難攻不落の小田原城があれば、連合軍5万など何ということもない!」と意気軒昂ではあるものの──
「5万も相手にして、本当に勝てるのか……?」という不安が、確実に見え隠れしている。
その不安の最大の要因は、越後を統一した戦上手、長尾景虎の存在だ。
あの男が“ヤバい奴”であることを、誰もが本能的に察しているのだ。
風魔の報告によれば、景虎の放つカリスマ性によって、寄せ集めだった連合軍は今や、一つの“軍”としてまとまり始めているという。
なにをやってるんだ凡人たち、早く天才を潰してくれ――
未来の謙信さんも……早く潰されてください。
さらに武将たちの胸中にあるもう一つの懸念──
それは、「我々の5,000人足らずの軍勢で、本当に戦の流れを変えられるのか?」という点だった。
俺の参戦に感謝の意は示してくれているが、俺たちの実力を“本当に”知っているのは、里見海賊との海戦を見ていた長綱さんだけ。
だからこそ、不安になるのも無理はない。
そこで俺は、評定の場でまずこう断言した。
「長尾景虎は、間違いなく戦の天才だ」
北条家の武将たちは、真剣な表情で頷く。
続けて俺は、はっきりと宣言する。
「だからこそ、景虎が経験を積んで“北条の大敵”となる前に……どうしても今、始末しておかなければならない!」
その言葉を聞いた武将たちの表情は、さらに一段、険しさを増した──
士気を下げるわけにはいかない──そこで、俺ははっきりと言い切った。
「小田原城に敵軍を誘い込んでさえくれれば、我らの日本丸──50隻近い艦船による一斉砲撃で、敵兵は必ず潰走させる。そこは……我が命をもって保証する」
そう言葉に力を込めて宣言すると、沈黙を破って長綱さんが頷いてくれた。
「──よろしくお願いいたします」
その一言が持つ重みは計り知れない。
それを合図にしたかのように、武将たちの表情が明るさを取り戻し、目に再び光が宿っていく。
やはり、北条家における長綱さんの存在は大きいな。
その一声が、どれほどの信頼と安心感を家臣たちに与えるか……身に沁みてわかる。




