表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】戦国時代の忍者に転生させられちゃいました  作者: ゲンタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/229

147話 景虎を操る

これまでも、“くの一お姉さん”たちの暗示術には何度も助けられている。

いやもう、感謝しかないよ。本当に。


で、その“くの一お姉さん”曰く──

「坊主もチョロいが、憲政はチョロチョロです♡」だそう……ほんと、良かったよ……チョロくて。


憲政はもう、お色気攻撃で完全に陥落。目がとろ〜んとしてる。

「夜を楽しむための強壮薬でございます♡」なんて囁かれて、鼻の下が地面に届きそう。


しかも、伊賀特製の“暗示香”をこれでもかと嗅がされて、脳みそトロトロ。

色気に満ちた妖艶な女性の力に、勝てる男などこの世にいないのだ。


ところで憲政、家臣たちからの信用がゼロなのだ。いや、マイナスかもしれない。

「俺は長尾家を味方につけるぞ――」

そんなことを、急に言い出し始めても、説得力はゼロだろう。


……それでは作戦が上手くいかない。

そこで必要になるのが──「そうだそうだ! 殿はすごい!」って評議を盛り上げてくれる、単純で声だけは大きい家臣たちだ。


そんなわけで、彼らにも“くの一お姉さん”を派遣している。

ただね、暗示をかける対象者の人数は、ちょっと多めに見積もった。


なぜなら──

頭が悪すぎて、暗示が通じない、覚えられないという可能性が高いからだよ!

念には念を、ってやつね。


***


暗示の受け入れ体制100%になった上杉憲政……。

くの一お姉さんが、夜な夜な耳元でささやく……妖艶に、しかし神々しく。


「……我は関東の守り神じゃ……憲政よ……。尊き上杉の血を引くお主に、関東の地すべてを授けよう……」


「これから申す通りに動くのじゃぞ」


「越後に、長尾景虎という(いくさ)の天才がいる……天下無双の武将じゃ……。その者をそなたの配下とするのじゃ。これほど頼れる男は他におらぬ……」


憲政はうっとりと聞き入っている――

もう完全に“夢と現実の区別”が曖昧になっているのだ。


「……されど……景虎には兄・長尾晴景がおっての……いまはそやつが家督を継いでおる。だが家中の者たちは皆、景虎こそふさわしいと願っておる」


「そなたが越後守護の上杉定実(うえすぎ さだざね)殿と晴景を説き伏せて、景虎に家督を譲らせるのじゃ……!」


「景虎は、恩を重んじる男じゃ……。関東に仇なす北条を打てと命ずれば、越後の全軍を率いて参戦しようぞ」


「すべては、関東制覇のため……上杉家の未来のため……これは一世一代の大仕事じゃ……!」


「……励むのじゃぞ……憲政よ……♡」


……この暗示が、毎晩、繰り返される……。

さすがに毎日言われれば、憲政の心の中では“神託”としか思えなくなってくる。

だが、なかなか行動にうつれない。ダメなおっさんなのである。


しかも、憲政が少し何かを言えば……


側近の「声だけ大きい家臣団」が実にいいタイミングで――

「そうだそうだ! それしかない!」

「さすが我らが殿じゃ!」

「我らは殿にどこまでも付いていきますぞ」

――と景気よく賛同してくれる。


このようなやり取りにより、憲政の低かったテンションが、天井知らずに跳ね上がっていくのである。

そうなると、他の家臣たちも驚くやら、喜ぶやら。


「何をやってもダメな当主・憲政様が……やる気を……?」


その“奇跡”に感動した家臣たちは、口々に言い始める。

「奇跡じゃ〜。奇跡が起こったのじゃ〜!」

「今こそ! 我ら家臣が一丸となって殿を支えねば!」


まるで長年冬眠していた組織に、春が来たかのようだ。

泣いている者もいる。

謎の団結力が生まれ、謎のモチベーションが高まり、家中が盛り上がっていく。


(そりゃ嬉しいよね。おめでとう)


──もちろん、全部、くの一お姉さんの暗示と色仕掛けだが……

そんな事実を知る者など、誰一人いない。


憲政はというと、関東を手に入れ、酒と美女に囲まれた“優雅な未来”を何度も妄想し、思わず頬が緩みっぱなし。


「わしが関東の主じゃ……ふふふ……ふおおおおお!」


──もはや、鼻息だけで壁が割れそうだ。

そして、それまで愚鈍でいつも決断の鈍かった憲政が、ついにキビキビと動き始める。


何度も使者を立てる。さらには、越後守護の上杉定実、そして長尾晴景に直談判だ。

「景虎を養子にして、家督を継がせよ!」と食い下がるように訴え続けた。

『主は生まれ変わられた』と確信し、張り切る家臣たち。


使者となった家臣たちも「今が見せ場!」と大張り切りで動きまくる。

連日、関東から越後へと馬が飛び、説得が繰り返される。


***


家中一丸となっての“大熱演”の末──

ついに、長尾景虎は晴景の養子となり、長尾家の当主に就任する。

……ここに、後の軍神・上杉謙信が誕生した。


が、その裏でニヤリと笑う俺たち──

(よし……軍神は、アホの上司のもとで“凡人と成り果てる”のだよ)


すべては計画通りに進む。


景虎は義を重んじる人間だ。

長尾家の当主になれたのは憲政のおかげと深く感謝。

大急ぎで供を連れ、大恩ある憲政の元に伺う。


家中に渦巻く熱気のおかげで威厳を纏った憲政。


下座に手をつき感謝を述べる景虎に熱く語りかける。

「義のために共に関東に仇なす北条家を打倒しようではないか!」

……まるで別人である。


景虎は憲政に大きな恩義を感じているため、二つ返事で了承する。


「越後の大名たちにも、越後周辺の大名たちにも、関東管領の命で『義のための戦いに協力すべし』と使者を送るつもりだぞ」


「それで後顧の憂いはなくなるであろう。此度の戦いには、越後の“全兵力”を率いて参戦してほしい。この通りだ。頼むぞ!」と頭を下げる。


「頭をお上げください! 必ずやご希望の通り、越後の“全兵力”を率いて参戦いたします!」


「見事北条家を討ち取った暁には、報奨として上野の東半分を与えようではないか」


「ありがたき幸せ!」


憲政様に長尾家の当主にしていただいたかと思えば、上野の東半分まで頂けることになるとは……


何という僥倖よ! 景虎の頬が緩む。

……このようなやり取りを終えて、帰国したのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ