120話 どんな王都に
天文14年(1545年春)――14歳
城の建設に取りかかる前に、まずはその城にどのような機能が必要かを整理しなければならない。それに基づいて、どのような城にするかを決めることにする。
機能その1は、“ここに王がいる”と示す――つまり“権力の象徴”としての役割だ。
「これほどの城だ。力を持つ王が統治しているに違いない」と誰もが思うような威厳が求められる。
機能その2は、防衛機能だ――
まず、アイヌの民が敵に回ることは考えにくい。そして、日本丸に対抗できる船など、今の日本には一隻たりとも存在しない。
南蛮と手を組み、連合軍を率いて襲ってくるような事態になれば話は別だが――その可能性は、限りなく低いだろう。
想定される敵は南部家や津軽家といった近隣の大名たちだ。小早船を大量に準備し、命懸けで日本丸の攻撃をかいくぐり夜襲を仕掛けてきたとしても、上陸できる敵兵はせいぜい300人がいいところだろう。
もちろん、こちらも“忍者調査隊”を派遣しているので、その可能性は限りなく0%に近い。仮にその兆候があれば、こちらが先手を打って港や船、そして城まで根こそぎ破壊するからだ。
――そう考えれば、大がかりな防衛機能は不要だ。
王都の広さは、1辺が1kmほどあれば十分だろう。
そして周囲には、熊よけも兼ねた土手を築く。高さは3m程度でいい。敵兵が300人いたとしても、その土手を目にした時点で攻撃を躊躇するはずだ。
王都の区画については、住居エリア・商業エリア・農地エリア・牧畜エリア・職人エリア・兵舎エリアなどに分けて整備する。
特に農地については、開拓初期は耕作の目処も立ちにくいため、安全を考慮して王都内部に確保しておくことにしよう。
街の中央には、城というより宮殿を配置しよう。上水・下水の水路や公園造成も検討対象だ。交易エリアは港の管理事務所の近くが良さそうだ。
その他にも、建物の寒さ対策など、検討事項は山ほどある。正直、頭がパンクしそうだ。
(こういうときは、コツコツと1つ1つの仕事を終わらせていくのが大事だ。前世でもそうだった。焦らないことが肝要だ)
ちょうど良いことに、今は至高の匠スキルのパワー補充期間。5日間は都市計画に集中する。こういう仕事には、前世の実績からして藤吉郎が向いている。幸隆と3人で案を練ることにしよう。
3日が経ち、机上の計画がまとまったので、現地での縄張りを開始する。俺・幸隆・藤吉郎の3人に、護衛の冨田勢源と藤林保正を加えた5人で、黒鍬衆数十名とともに現地へ向かう。
まず宮殿の位置を決め、続けて各種エリアの配置を順に決定。それが終わったら、上水・下水の水路、公園、道路の位置を決めていく。
3人で「あーでもない、こーでもない」と悩みながら縄張りを調整し、目印の杭を打たせていく。……(この作業、案外楽しい)
縄張りが終われば、まず建設予定地の整地作業だ。宮殿の建設予定地の整地が終わる頃、5人だけでその地に赴く。“至高の匠スキル”で、前世に見学した“迎賓館・赤坂離宮”を参考に宮殿を建設する。
大規模建築には1回で建設できる容量制限があるため、スキルを複数回に分けて使用する。パワーが尽きれば数日間休み、その間に黒鍬衆に整地や内装工事を進めてもらう。
パワーが戻ったら、またスキルで建設を継続する。この繰り返しだ。2ヶ月もあれば、見事な宮殿が完成するだろう。宮殿が終われば、重臣たちの屋敷も建設する。
そのほかの建物は黒鍬衆に任せる。宮殿の周囲は迎賓館風に、頑丈な鋼鉄製フェンスで囲む予定だ。ゲートも立派なものを2か所設置するつもりだ。
河川から水路を引いて、城ゾーン内の上水道・下水道も整備していかねばならないが、これは黒鍬衆に任せる。
農地については、信濃衆100人に整地と水路づくりを進めてもらっている。準備が整い次第、米・麦・蕎麦を植える予定だ。畑の形状は道路を挟み、綺麗な長方形にさせるつもりだ。
この農地は将来的に農業試験場とし、蝦夷地に適した寒冷地作物の開発を進める予定だ。南蛮から入手でき次第、ジャガイモやビーツの栽培も行う。
港の交易エリアでは大きな市場も建設中。もちろん雪対策として屋根付きだ。雪への備えは信濃衆の知恵を借りることにする。市場では、アイヌの方々にも店を持ってもらう予定。商売ができるよう、学校で計算を学んでもらうつもりだ。
宮殿の内装は、俺が少しずつ進めていくが、それ以外の部分は藤吉郎と黒鍬衆に一任する。




