110話 悪徳寺社に鉄槌を!
天文14年(1545年冬)――14歳
今年の作物の収穫が増加している。
豊穣神に感謝の祈りを捧げれば、神の加護で収穫が増える――その話が本当に実現しているのだ。人って現金なもので、結果が目に見えると行動が加速するんだよ。
今年は作物の収穫が大豊作だ。
どうやら、豊穣神に感謝の祈りを捧げると──本当に神の加護で収穫が増えるらしい。マジで。
結果が出ると……
「ガチでご利益くれるらしいぞ!」
お寺の信者たちがやってきて、一斉に、豊穣神像を祈るわ、祈るわ。
もう、欲と感謝の大フィーバー。
そりゃそうだ。
“来世で極楽浄土”より、“今すぐ米俵&銭袋”のほうが、ありがたいに決まってる。
その結果、寺社のほうは信者がガラガラになってきた。
まあ……自然の流れってやつだ。
で、焦った寺社がどう出るかというと──
「宗旨替えすれば祟られるぞ!」
「孫子の代まで不幸になるぞ!」
お決まりの脅し文句を連発だ。
……おいおい。
「祟るぞ」とか言い出した時点で、君たちが信仰している神様も仏様も恥ずかしくて、どこか行っちゃったぞ。説法じゃないぞ、脅し営業は止めろ。
つまるところ、信者を「知識のないカモ」としか見てないのだ。
続けて、こんなセリフが飛び出す。
「生活に困っても、寺は知らぬ」
「また戻ってきても遅いのだぞ」
「銭? そんなの絶対貸さぬ!」
そんなので今までよく信者が離れなかったな。
でもまあ、もう騙しと脅しの説法は終わりにしとけ。
俺の領内には、大小さまざまな宗派の寺がある。
中には、一向宗みたいに信者を煽って戦を起こそうとする厄介な連中もいるが、そういう危険な宗教は粛々と排除している。
宗教ってのは、本来、人の心の拠り所だ。
少々グレーな寺であっても、信者を食い物にしてるわけでもなく、問題を起こさないなら、俺は見て見ぬふりをしている。
基本的に、俺は“信教の自由”ってやつは尊重してるつもりだ。
実際、教義に忠実で、ちゃんと信者の悩みや苦しみに寄り添っているような寺には、今でも信者が残ってる。人というのは、ちゃんと見てるんだぞ。
逆に、『信者は財布』とでも思ってる“ボッタクリ寺社”は、目に見えて信者を失っている。まあ、当然の流れだ。
この機会に、領内の寺社が“まともな寺社”だけになってくれれば助かる。
そこで俺は、忍者たちに「ボッタクリ寺社の悪行の日々」と題したマンガを描き、それを悪徳寺社の近所にベタベタ貼りまくってもらっている。
学校で文字を覚えた子どもたちが、そのマンガを面白がって、あちこちで解説を始めているらしい。親たちは面白がったり、怒り出したり。
(相変わらずマンガの威力は効果抜群)
とにかくこの際、悪徳寺社には静かにフェードアウトしていただこう。
まともな寺社は、余計な副業をしなくても食っていけるよう、こちらでちゃんと保護しよう。
今後、寺社の金貸し業は禁止にする。
金貸しは登録制、許可制……うん、免許制がいいな。
許可を出すのは“正直屋金融”だけ。
また儲かりの種だな……これはもう、商人業界の天下統一も時間の問題かもしれない。
ボッタクリ寺社が文句を言いに来ても、無視、無視。
「営業妨害だ」とか「このままでは祟りがあるぞ」――そんな的外れなセリフが通じると思うなよ?
ここで登場、“忍者警備隊”。
はい、即・国外追放である。
さて、どこに送ってやろうか……やっぱりマムシのところか?
いらない奴は、皆なマムシに食わせろだ。腹壊すなよ!
それとも今川義元か、甲斐の虎・信玄か?(ムフフ……それもいいかもな)
悪徳寺社を掃除するのに、戦なんて必要ない。
情報戦と経済戦――このふたつだけで、すっきり片付く。
現世でご利益を与える――これ、もしかして豊穣神様が確信犯で仕組んだことか?
……意外と、やればできる神だったりしてね。
「神は人の世界に直接関与してはいけない」とか言われてたけど、
このあたりは“グレーゾーン”ってことで、うまく抜け道を使ったのかもしれない。
……まあ、実際のところは分からないけどね。
あの神様、深く考えるタイプじゃないし、単なる思いつきって可能性もある。
でも、俺としてはノーコメントだ。あえて聞かない。
このまま神界の上司にバレずに済むよう、静かに見守るしかない。
信者が増えれば豊穣神様の力も増す。
で、豊穣神様の力が増せば、俺の力も連動して増える。
――それなら、言うことないじゃないか。
さて、そろそろ内政のお仕事タイムは終わりだな。
次の課題は……また明日考えることにしよう。




