104話 忍者はモテるのだよ
天文13年(1544年秋)――13歳
異世界ものの小説と同じく、村の美しき娘たちは勇ましき忍者さんにメロメロだよ。まさかのモテ期到来、忍者さんたちが引く手あまた。
お〜い、お前ら! 娘に手を出すんじゃないぞ。
「愛に言葉はいらない……」とか、それフラグだからな。刺さるぞ、首に毒矢が。
言葉が通じないんだから、いろいろ誤解も起きるだろうし……わかってるよな?
(頼むから自重してくれ)
……ところがどっこい、すでに可愛いアイヌの娘さんと“できちゃった”奴がいたらしい。手を出したらダメだろ!
まあ、できちゃったもんは仕方がない。居残りを志願してくれたわけだし、ある意味ありがたい。
問題はその数――まさかの5名!
これが多いのか少ないのか、判断が難しいところ。
忍者だって人間だし、やるときはやる。
熱い心があるのも分かる。
まあ全員独身だし、責任とって夫婦になってくれるなら……OK、かな?
彼らは「この地で、可愛いお嫁さんと永住したい」と言っている。
うん、幸せになってくれ。
……ただし、来年また来るから、それまでにちゃんと言葉を覚えておくこと。
言葉を覚える以外に、居残り組にもう一つ頼んだことがある。
それは「燃える石」、つまり石炭があるかどうかの確認だ。
もし見つかるようなら、大量に集めてもらって、希望する品と物々交換できると長老に伝えてくれ――とお願いしておいた。
……まあ、アイヌの言葉もまだおぼつかない状態で、これを伝えるのは難易度SSランクだと思うけど。
でも、忍者だからね。
忍びの者なら現地に溶け込み、なんとか情報を聞き出すのは得意――のはず!
きっと、忍者なら何とかしてくれる……と信じてるよ。
俺たちはアイヌさんに、見たことも聞いたこともないような珍味を振る舞ってもらったり、前世では写真でしか見たことのなかった苫小牧の絶景スポットに案内してもらったりしながら、数日間を思いっきり堪能した。
焼いた魚の身に、何かの実をすり潰したソースをかけた料理とか、燻製にした肉を干してさらに発酵させたっぽいものとか……とにかく独特。
クセになる味だった。
志摩衆改め海軍衆は、そんな俺たちを横目に、地図や水深マップの作成でフル稼働だ。なんか悪い気もするんだけど……まあ、それも観光の一環ね。
納得してくれると助かるのだが。
いやあ、いい旅でした。
……とはいえ、このまま居心地よくなって、全員永住なんて事態になっても困る。
実際、例の“できちゃいましたカップル”がこれ以上増えたら、戦力が削れて大損害だ。
特殊部隊はね、貴重な精鋭部隊なのだよ。
ということで、名残惜しいけど、ここらで伊勢に帰るとしよう。
留守番をしてもらっていた護衛の兵300人と特殊部隊100人も、可哀想なので、アイヌさんの村を見学したり、近場の日帰り観光をチャチャッとやってもらいました。
クマは出てこなかったみたいだけど。
もうクマはいらない。勇者になって、モテてもらうと困るからね。
念の為、“できちゃいましたカップルは絶対禁止令”を厳命しておいた。
俺は沖に泊めてある日本丸に向けて、せっせと蝦夷の産品が運び込まれていく様子を眺めていた。
昆布、鮭、毛皮、燻製肉……これでもかと山のように積まれていく。
持ってきたお土産との物々交換、どうやらご満足いただけたようで何よりだ。
護衛の兵300人が、汗だくで運搬と船内整理に追われている。
ご苦労さま! でも頑張って! 大儲けのチャンスなんだから!
そう、大儲け! “昆布で一攫千金”だ。
北条家にも、ちょびっとだけお土産を分けてあげよう。
これが信頼という名の投資になってくれれば。
……にしても、取引の交渉って、誰がやったんだ?
言葉が通じないのに成立してるってことは、身振り手振りか、忍者のジェスチャー語が炸裂か。
さすが忍者、戦いだけじゃなくて交易交渉にも強いとは。万能だ。
ちなみにこちらが持ってきた交易品、村正製の刀や槍、ナイフなんかが特に大人気だったみたいだ。
結構多めに持ってきたけど、まさかこんなに喜ばれるとは。
この調子じゃ、アイヌVS蠣崎家の勢力バランスに影響しちゃうかもね。
(別にバランスに影響していいわ。蠣崎なんか知らん。どうとでもなれ!)




